サバイバルフレンド 5
「今日のところは非常食にしようよ。キノコ出すか出さないかは、明日もう少しこの世界調べてからでもいいんじゃない?」
そう言って、さっさと食料を配り始める。
「……そうするか」
受け取ったパンと干し肉を包みから取り出しつつ京平が呟くと、聖も渋々と言った感じで頷いた。
「そうだな。食い物見つかるかもしれないし、街があるかもしれないしな」
「あったらいいけどね」
早速パンに齧り付いた穂波は何とも言えない微妙な表情になる。
「そっかー、ファンタジーのってこんなかー」
固くてモソモソしているが食べられない訳ではない。だが決して美味しい訳でもない。漠然と持っていたゲーム内の非常食の現実を見せられた穂波は、納得しつつも複雑な表情を見せている。
「そうなるよな」
既に同じ道を通って来た聖達は、さもありなんと頷きながらパンを口に運んでいた。
「知ってたなら教えてくれたっていいじゃない」
「何事も経験さ」
「えー」
京平に食って掛かったものの軽くかわされてしまいむくれる穂波だったが、最終的には気を取り直してパンを食べ始めた。
「今度鰻屋行ったら、アールシュにマサラ譲ってもらお」
穂波の小声ながらも断固たる思いを感じさせる決意表明に、聖達も頷く。
「あれなら何とかなるかもな」
冷やし中華を冷やしカレー中華そばにされた事のある聖の言葉には実感がこもっていた。
「味変が出来るだけでも十分よ」
そう言って今度は干し肉を口にしようとした穂波だったが、ある事に気付いて京平に笑いかけた。
「そうだ。京平もちゃんと肉焼きなよ」
「えっ?別に今更……」
反射的に文句を言いかけた京平だったが、すぐにブーメランが返ってくる事を思い出した。
「カードは持っておくに越したことはない、でしょ」
「カードは持っておくに越したことはない、か」
期せずしてハモった二人が笑い合う。
「じゃあ、まあ、やっておかないとな」
爆轟大斬斧が三本も必要になるシーンがあるとは思えないが、カード云々を言い出したのは自分である。こればかりは仕方がないと肩を竦め肉と向き合う。ここまで聖はステーキ風、穂波は焼き肉風で惨敗している。
「串焼きにでもしてみるか……」
そう決めた京平は、肉を適当な大きさに切る。そして、何故か調理器具に含まれている焼き串を手に取ると、粛々と肉を刺し、火にかけていった。
こうしてこの世界での初日の夜は過ぎていったのだった。




