サバイバルフレンド 4
「食の大切さを実感させられたってとこだな。今までまともな食生活を送れる世界ばっかりだったし」
実感のこもった京平の一言は、見事に穂波の地雷を踏み抜いた。
「私なんか日本かアメリカしか行ってないんだけど?まともどころか、ずっと普段通りの食生活なんだけど?何なら、クエストにカレーやらティラミスやらが登場してるくらいだし」
「あ、いや、そんなつもりで言ったんじゃ……」
京平が助けを求めるように聖を見るが、その聖からもクレームが入った。
「自分で収穫した野菜しか食えない生活は、果たしてまともと言えるのかどうか」
「ここよりマシだろ。農場で働いて、その成果を食するんだから、十分まともさ」
「いやいや、想像してみろよ。毎日毎食野菜だけなんだぜ?果物すら無いんだぞ」
相当辛かったのか、簡単には引き下がらない聖。
「食えてただけマシだろ。この肉は食えないんだぜ」
「……そうだな」
食べられると食べられないの間には越えられない壁がある。そこを指摘されたら納得するしかない。確かに今と比べれば、当時の野菜のみの生活も天国みたいなものだ。
「そう言えば、聖って農業生活でクエストクリアしてたじゃん。まだ、キノコ残ってるんじゃなかったっけ?」
「菌糸類ドキドキセットか」
果物や野菜のセットが結構な種類と分量だったことを考えると、菌糸類もそれなりに充実したセットになっているだろう。
「ドキドキってのが何を示しているのかが問題だな」
問題はセット名に付いている副詞の方だ。果物や野菜のルンルンやわくわくだはまだいい。ポジティブなイメージも湧く。だが、菌糸類にドキドキと付けられてしまうと、どうしても良くない想像が先に立ってしまう。
「ロシアン毒キノコとかシャレになんないって」
何があってもこの世界で十日間生き抜くと決めた穂波にとって、毒キノコで自爆するという結果は何があっても避けたい。
「何でそう悲観的かなー。野菜も果物の食えたんだろ?じゃあ、キノコも大丈夫だって」
説得力の無い聖の言葉では、二人の疑念を晴らす事など出来そうにない。
「そもそもキノコと決まった訳ですらないんだぜ?」
「へ?」
「カビだって菌糸類だもんね」
どこまでも悲観的な京平達に、聖は呆れたように頭を振った。
「俺の労働の賜物なんだぞ。それがカビじゃ、余りに俺が報われないと思わないか?」
「それもそっか」
意外にあっさりと納得してくれた穂波に気を良くしたのか、聖は上機嫌で言葉を続ける。
「せっかくだから出してみようぜ。確実に食えるのだけ食ったらいいだろ?」
「待てって。仮に食えたとしても、だ。キノコだって調味料がないとつらいのは変わらん」
京平に止められた聖は少し思案して、ポンと手を打った。
「じゃあ、出汁取ってみるってのはどうかな?」
「……出汁か」
キノコではあの肉の臭みをどうにか出来るとは思えないが、やってみるのも悪くないかもしれない。そう思った京平が同意しようとした矢先、穂波が首を横に振った。




