表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
244/328

サバイバルフレンド 4

「食の大切さを実感させられたってとこだな。今までまともな食生活を送れる世界ばっかりだったし」


 実感のこもった京平の一言は、見事に穂波の地雷を踏み抜いた。


「私なんか日本かアメリカしか行ってないんだけど?まともどころか、ずっと普段通りの食生活なんだけど?何なら、クエストにカレーやらティラミスやらが登場してるくらいだし」

「あ、いや、そんなつもりで言ったんじゃ……」


 京平が助けを求めるように聖を見るが、その聖からもクレームが入った。


「自分で収穫した野菜しか食えない生活は、果たしてまともと言えるのかどうか」

「ここよりマシだろ。農場で働いて、その成果を食するんだから、十分まともさ」

「いやいや、想像してみろよ。毎日毎食野菜だけなんだぜ?果物すら無いんだぞ」


 相当辛かったのか、簡単には引き下がらない聖。


「食えてただけマシだろ。この肉は食えないんだぜ」

「……そうだな」


 食べられると食べられないの間には越えられない壁がある。そこを指摘されたら納得するしかない。確かに今と比べれば、当時の野菜のみの生活も天国みたいなものだ。


「そう言えば、聖って農業生活でクエストクリアしてたじゃん。まだ、キノコ残ってるんじゃなかったっけ?」

「菌糸類ドキドキセットか」


 果物や野菜のセットが結構な種類と分量だったことを考えると、菌糸類もそれなりに充実したセットになっているだろう。


「ドキドキってのが何を示しているのかが問題だな」


 問題はセット名に付いている副詞の方だ。果物や野菜のルンルンやわくわくだはまだいい。ポジティブなイメージも湧く。だが、菌糸類にドキドキと付けられてしまうと、どうしても良くない想像が先に立ってしまう。


「ロシアン毒キノコとかシャレになんないって」


 何があってもこの世界で十日間生き抜くと決めた穂波にとって、毒キノコで自爆するという結果は何があっても避けたい。


「何でそう悲観的かなー。野菜も果物の食えたんだろ?じゃあ、キノコも大丈夫だって」


 説得力の無い聖の言葉では、二人の疑念を晴らす事など出来そうにない。


「そもそもキノコと決まった訳ですらないんだぜ?」

「へ?」

「カビだって菌糸類だもんね」


 どこまでも悲観的な京平達に、聖は呆れたように頭を振った。


「俺の労働の賜物なんだぞ。それがカビじゃ、余りに俺が報われないと思わないか?」

「それもそっか」


 意外にあっさりと納得してくれた穂波に気を良くしたのか、聖は上機嫌で言葉を続ける。


「せっかくだから出してみようぜ。確実に食えるのだけ食ったらいいだろ?」

「待てって。仮に食えたとしても、だ。キノコだって調味料がないとつらいのは変わらん」


 京平に止められた聖は少し思案して、ポンと手を打った。


「じゃあ、出汁取ってみるってのはどうかな?」

「……出汁か」


 キノコではあの肉の臭みをどうにか出来るとは思えないが、やってみるのも悪くないかもしれない。そう思った京平が同意しようとした矢先、穂波が首を横に振った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ