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Bad Will Hunting 14

「ねえ、どうせだったら肉取って来ていいかな?」

「は?」


 穂波の思いがけない質問に、いざ出発しようとしていた聖達が首を傾げる。


「クエストで肉を焼けってあったじゃん。今なら取りに行っても大丈夫かなって」


 そう言いながら穂波が見ているのは、動かなくなった猪だ。


「えっ?あれ、食うのか?」


 京平が反射的に眉を顰める。ジビエ料理が苦手な京平にしてみれば、出来れば避けたい選択肢だ。


「見た目は完璧に猪じゃん」


 それに対し穂波はジビエ料理に抵抗がない。どちらかと言えば好きな部類に入るだろう。猪に対する意識が違うのも当然と言える。


「見た目だけかもしれないだろ」


 何とか回避する方向にもっていきたい京平だったが、敵は穂波だけではなかった。


「でもさ、見た目って大事じゃないか?だって、クプヌヌを初見で食えるとは思わないだろ?猪とクプヌヌ、どっち食うかって聞かれたら猪じゃん」


 聖に至ってはジビエ大好きっ子である。当然のように穂波に乗っかかった。


「いや、クプヌヌと比べるのは違うだろ。だいたい、あっちに戻るのは危ないかもしれないし」

「大丈夫だって。今のところ何か来る気配もないしさ。何か見えたらすぐ逃げるって」

「それに、あれは猪だぞ、あの大きさだぞ、ワイヴァーンと戦えるんだぞ。肉だって固いに決まってる。そもそも解体する道具だってない」

「解体なんて大袈裟な。そんな事しなくてもワイヴァーンがグッチャグチャにしていった奴がいるじゃん。あれから肉取ってくるくらいなら包丁でも何とかなるでしょ」


 京平の必死の抵抗も穂波には敵わない。穂波は京平の反論に応じながらも、いそいそと調理道具の中から刃物を取り出していた。


「流石ファンタジー。よく切れそうじゃない」


 何がどう流石なのか京平には分からないが、切っ先鋭いその包丁の切れ味が良さそうな事は分かる。これならば多少固くとも切れるかもしれない。状況が穂波有利に傾きつつあることを感じつつも、それでもまだ抵抗を試みる京平。


「それにクリアしたって手に入るの爆轟大斬斧だぜ。この世界の斧。そんなの使えっこないって」

「カードは持っておくに越したことはないって言ったの京平じゃん。それにプレゼントボックスから出さなければ、クソ重たい弓と違って邪魔にもならないしさ」


 綺麗に返ってきたブーメランに、京平は白旗を上げざるを得なかった。元々分の悪い勝負だったのだ。


「……分かった。気を付けて行けよ」


 そう言ってうなだれた京平の肩を、聖が慰めるかのように軽く叩く。


「お互いにね」


 上機嫌に答えた穂波の表情に、京平はこれはこれで良かったと気を取り直す。そして軽く手を上げて応えると、今度こそ意を決して聖と共に洞窟の奥へと歩み出した。

 ランタンの灯りに朧気に照らされた二人の姿がだんだんと小さくなり、やがて闇の中へ消えてしまう。二人の姿が見えなくなってもなお、心配そうに暗闇を見つめていた穂波だったが、やがて軽く頭を振って外へと目を向けた。そのまま辺りをぐるっと見回し状況を確認する。


「……今のところ怪しい影は無し、と」


 空にも大地にも、動く物の姿は見えない。


「よしっ」


 軽く気合を入れ、穂波は平原へと駆け出した。

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