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Bad Will Hunting 6

「ざんねーん。時間切れです。京平さんは初期装備無しでのスタートとなります。それでは、レッツ、エンジョイ、ハンティング!」

「何がレッツエンジョイよ!こんな状況でエンジョイ出来るわけないでしょ!」


 全く残念と思っていなさそうな神の声に、文句を言う事は忘れない穂波。


「どっちかというとハンティングされる側だしな」


 京平も嫌味を返すが、状況が状況だけに今一つキレがない。


「のんびりしてる場合かよ!どうすんだよ!」


 こうしている間もワイヴァーンは徐々に迫ってきている。にもかかわらず、反応の鈍い京平達に聖が焦れたように声をかけた。


「どうって……逃げるしかないよな」


 京平が辺りを見回すと、幸いにもワイヴァーンと逆方向に森が見えた。更にその先には岩肌に覆われた山もある。


「お誂え向きと言えばお誂え向きなんだろうけど……」


 まるでこっちに逃げて下さいと言わんばかりの位置関係に一抹の不安を覚える京平。罠、と言う可能性も捨てきれない。


「ここの神様がどこまで性格が悪いかよね……」


 同じ懸念を抱いていた穂波が応えた。


「じゃあ、体力と走力で平原を突っ切るか?俺はそれでもいいぜ」


 聖はそう言うと軽く準備運動を始めた。そのやる気満々な姿に、京平は力無く首振りながら言った。


「流石にお前でも無理だと思うぞ……」

「だよな」


 諭すような口調にあっさり同意する聖。


「ゲームだといろいろ検討する時間あるけど、現実だとそんな余裕ないもんだな」


 当然と言えば当然のことを、さも重大な発見をしたかのように呟く聖。


「よし、今度からゲームの時もリアルタイムで決断を迫るようにしよう」

「やめろよ、クソマスター」

「別にどうマスタリングしようが京平の勝手だからいいんだけどさ……今迫られている決断はどうするのよ」


 冷たい穂波の一言に、改めて顔を見合わせる三人。


「あー……」


 僅かな間虚ろな視線を交わし合っていたが、すぐに京平が諦めたように頷いた。


「仕方ない、森へ逃げよう」


 そう言って剣を拾い上げる。


「悪いけど、聖は盾を持ってくれ。穂波は弓を」


 頷いた二人はそれぞれの荷物を手にするが、すぐに穂波が挫けた。


「これ、ホントに持って行かなきゃいけない?」


 持てない重さではないが、走って逃げるには十分邪魔だ。


「手持ちのカードが少なすぎるからな。とりあえず持っておくに越したことはないだろ」

「……ババ引いてるだけな気がするけどね」


 京平の答えにぼやきつつも、穂波が弓を背負う。上手く森に逃げ込めた暁には、今度はこの大きさが邪魔になってくるに違いない。


「ジョーカーがババになるか切り札になるかは使い方次第さ」

「ババ抜きだったら、何をどうしようとずっとババよ」


 同じように盾を背負った聖が恰好をつけたが、すぐに穂波に切って捨てられる。


「仮にババだとしても、ここで捨てたら負けた気がするだろ」


 京平のその言葉は、どこか自分に言い聞かせているようでもあった。


「そうよね」


 渋々、と言った表情で頷く穂波。


「準備はいいか?」


 気が付けばワイヴァーンの姿は随分と大きくなっている。それでもなお三人との距離はありそうで、それがワイヴァーンの大きさを物語っていた。


「よし。じゃ、逃げるぞ」


 京平の言葉を合図に、三人は一斉に森へと駆け出した。

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