塔の上の転生者 22
「よし、決まり。じゃあ、穂波さん手伝ってくれるかな?」
「はい」
一も二もなく頷く穂波。
「京平君達は四国無双やりながら待っててくれるかな?」
「えっ?いや、何か手伝う事とか……」
流石にただ遊んで待っていろというのは、簡単には承諾しがたい。
「さっきも言った通り、ちょっと手詰まりになって来てるのよねー。だから、ここは一つフレッシュなプレイヤーによる新たな視点の発見なんかを期待したいわけ」
「なるほど」
そう言う事であれば、料理の手伝いよりかは役に立つだろう。
「ローカルの二人プレイはやった事すらないから、良ければ聖君と二人でやってみて」
そう言いつつ二人にコントローラーを差し出すエフィ。
「それで何か変わりますかね?」
受け取りつつも疑問を呈した京平に、エフィは苦笑しつつ答えた。
「うーん、どうだろうねー。変わらない気もするけど、せっかく人数いるんだから、潰せるパターンは潰しておきたいってところかな」
「了解です。とりあえず、やってみます」
マトリクス表を埋めるだけと言うのならば、気は楽だ。
「よろしくね。じゃ、穂波さん、行こうか」
京平達がゲームを始めたのを確認したエフィは、穂波を連れてキッチンへと向かう。
「さて、と。ささっとやっちゃおうか」
例によってテキパキと作業を進めるエフィ。穂波はそんなエフィに言われるがまま、手を動かす。
暫くの間、ひたすら料理に打ち込んでいた二人だったが、やがてエフィは最後の一品をオーブンにセットし、終わったとばかりに大きく伸びをした。
「いやー、やっぱり二人だと早く済むねー」
後はこの肉料理がグリルされるのを待つだけだ。
「そうですか?お役に立ててればいいんですけど」
穂波にしてみればエフィの手際の良さに圧倒されっぱなしだっただけに、役に立てていたという実感は余りない。
「勿論だよー。何より家電の使い方を教えてくれたのが助かる」
エフィのキッチンには様々な最新の調理家電が取り揃えられているのだが、当の本人は最低限の機能しか使えていない。当然、穂波への指示の際も家電については言及されていないのだが、そこは現代っ子の穂波である。家電に任せられる作業は家電に任せ、エフィにその使い方の指導を行ったのだ。
「まあ、一人で使えるかどうかって言われると怪しいけどねー」
穂波から見ても、エフィの機械音痴っぷりはなかなかのものだった。この言葉も謙遜ではなく、事実に違いない。
「私で良ければいつでもレクチャーするので、その時は呼んでください」
今の自分に出来る事はこんな事くらいしか思いつかないが、少しでも恩は返しておきたい。そんな穂波の想いに気付いたのか、エフィはその体をギュッと抱き締めた。
「もー。転ちゃんが紹介してくる子だからどんなヤバい子が来るかとドキドキしてたのにー。こんないい子と出会えるなんて、ホントに良かったー」
その言葉に、エフィの中でも転生の神の格付けはそんなに高くないんだと、苦笑いする穂波。神の力を感じるというのも嘘ではないだろうが、だからといって敬うかどうかは別の問題なのだろう。
「私は何があっても君達の味方だからね」
「ありがとうございます」
今はエフィのその言葉が、ただただ嬉しい。
「少しは神の事、見直さないとですね。こうやって、エフィさんと出会わせてくれたんですし……」




