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塔の上の転生者 21

「さて、と。とりあえずはこんなところかなー。他に何か訊きたい事ある?」


 エフィの言葉に三人は首を横に振った。今の時点では十分すぎるほどの話を聞けただろう。


「そっか。じゃあ、せっかくだし連絡先交換しない?また何かあった時に、わざわざ転ちゃん通すの面倒だし」

「それはありがたいですけど……ご迷惑じゃ……」


 穂波達にしてみれば願ってもない申し出だったが、その厚意に甘えてしまうのは何となく気が引けた。何せエフィの口から面倒だという言葉が出ているのだ。今回セッティングするにあたって、あの神が何かやらかしている可能性は十分にある。


「子供は変な遠慮なんかしない」


 俯いた穂波の額をエフィが軽く突いた。ハッとして顔を上げた穂波の頬をエフィの手が優しく包む。


「大人に助けてもらえるのは子供の特権なんだから。もっと頼ったっていいんだよ」

「でも……」

「それともあれかなー?転ちゃんから紹介されたエルフなんて頼るに値しないかなー?」


 ギュッと頬を挟みこまれた穂波は必死で違うと首を横に振る。


「よし。じゃあ、さっさとスマホ出して。ほら、聖君達も」


 成り行きを見守っていた聖達だったが、言われるがままにスマホを取り出す穂波を見て慌てて自分達も倣う。


「よろしい」


 無事に連絡先の交換を済ませたエフィは満足げに笑った。


「何かあったらすぐに連絡してくるんだよー。してこなかったら、ひどいからね」


 冗談めかしたエフィの言葉に、三人は真剣な表情で頷いた。エフィがそこまで言うのであれば、三人に否応はない。この先、彼女の助力を得れるというのならば、これ程心強い事はない。


「うんうん。子供は素直が一番だよ」


 満足そうに頷いたエフィは、チラッと壁の時計を確認した。


「すっかり遅くなっちゃったねー。君達、まだ時間は大丈夫?良かったら、晩御飯食べていかない?君達が行った異世界の話も、もっと聞きたいし」

「えっ?いいんですか?」

「ちょっと、そこは遠慮しなって」


 その提案にすぐに飛びついた聖を、穂波が小突いた。


「だーめ。これからは遠慮も許さないから。いい?」


 そんな穂波を、エフィが怒ったふりをしながら窘める。


「えっ?あっ、はい。そう言う事なら、是非……」

「よろしい。じゃあ、どうしようかなー。手っ取り早く出前とってもいいんだけど、せっかくだしエルフの料理、食べてみる?」


 その言葉に、聖達の表情は一瞬で強張った。エフィは満面の笑みを浮かべているが、そこから彼女の真意は窺い知れない。


「エルフの……料理ですか?」

「うんうん、そうだよー。お姉さんが腕によりをかけて作ってあげる」


 京平の質問に、やる気満々の様子で答えるエフィ。最早、断る選択肢はないようにも思えるが、三人の口の中には木の味が蘇りつつあった。あの惨劇は避けたい、と誰しもが思うが、問題は誰がどう切り出すかだ。

 三人の間に緊張が走る。誰かが思わず唾を飲み込んだ音が辺りに響いた。


「どうするー?」


 そんな思いを知ってか知らずか、エフィは変わらず楽しげな様子で尋ねた。


「あの……」


 観念し、覚悟を決めたのは京平だった。すぐ横で明らかにホッとした様子を見せる聖達。


「遠慮も許さないと言われたので、遠慮なく訊きますけど……」

「うんうん。何かな?」

「……それは、不味いですか?」

「ちょっと、訊き方っ!」


 京平の想像以上にストレートな訊き方に、穂波がたまらずその背を叩いた。


「アハハ。エルフのお茶があれだもん。そりゃ、気になるよねー。でも、大丈夫。お茶とは違うから、そこは安心してくれていいよー」


 エフィは気にした様子もなく笑っている。


「そもそも材料とか全部こっちの世界の物だしねー。作るのも私だし。せいぜいエルフの料理風、な普通の料理だよ。あんまり期待されても困る位のね」

「そう言う事でしたら、是非お願いします」


 代表しての京平の言葉に、聖達も同意を示す。せっかく異世界出身者が腕をふるってくれるというのだ。味に問題がないのならば、断る道理はない。

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