塔の上の転生者 19
「だよねー。じゃあさ、こう考えてみるのはどうかな。転ちゃんの存在そのものが試練であるってね」
冗談めかした口調だったが、エフィの表情はどこか真剣に言っているようにも見えた。
「『おねがいリンカーネーション』のルールの中で結希子さんを助ける方法を探す。それこそが試練なのだ、と」
「難易度高い試練ですね」
京平の素直な感想に、エフィは苦笑いで答えた。
「一見無駄かもしれない理不尽なものでも、神が与える試練には意味があるものなのよ。それが例え転ちゃんからだとしてもね」
「だといいんですけど」
エフィの事は信じたいが、神の事は信じきれない。穂波の言葉からはそんな想いが感じ取れた。
「そうだね。本当にアーティファクトが現れるかどうかは分からないもんね……寧ろ、現れない可能性の方が遥かに高い。君達に希望を持たすだけ持たして、ダメでしたってなるかもしれない。もしかしたら話すべきではなかったのかもって、思わなくもないしさ」
エフィの声が僅かに沈む。
「そんな事ないです。例え僅かでも可能性があるという事が分かりましたから」
「そうですよ。こういう言い方をするのがいいのか分からないですけど……エフィさんを紹介してくれた事に関しては、神に感謝してます」
京平が、穂波が、口々に感謝を述べる。
「そっかー。だったら良かった。少しはお役に立てたのかな?」
「ええ、とっても。本当に会えて良かったです」
穂波の答えにホッとしたのか、エフィの表情が少し和らいだ。
「『おねリン』そのものが試練だって言うのなら、何とか耐えれそうだしな」
「転生して速攻で即死させられるとか、ホント理不尽な事多いけどさ」
「私なんかボディコン着てお立ち台に立たされてるんだけど」
「そう考えると、京平はそこまで理不尽な目に逢ってないよな」
「ほう。お前はチャドウ・ファイトと称して吐くまで腹パンされる世界が理不尽じゃないという訳だ」
ようやく明るさを取り戻し軽口を叩き合う三人の様子を暫く楽しげに眺めていたエフィだったが、やがて何か思いついたのかパンと軽く手を打った。
「そうだ。せっかくだから見て行く?アーティファクト」
「へっ?」
エフィの口調はまるで飼っている猫でも見て行くか尋ねているのかと錯覚してしまう程に軽く、三人が意味を理解するまでに少しの時間を要した。
「ええっ!?」
「あるんですか!?」
思った以上の三人の反応に気を良くしたエフィは、にんまりとした笑顔を浮かべ軽やかに立ち上がった。
「あるよー。おいで」
後についてくるよう促し、先に立って歩き出す。一瞬、顔を見合わせた三人だったが、すぐに後を追う。




