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塔の上の転生者 16

「さて、聖君にはそのままパラディンを目指してもらうとして。次は、京平君と穂波さんが何を探すべきかって話だね」


 その言葉に期待に満ちた視線を向ける京平達の思いとは裏腹に、エフィは難しい顔で考え込んでしまった。


「……物、が一番簡単なんだけど。世界次第では、治癒のポーションなんて割と簡単に手に入るからねー。でも、残念ながら君達も知っての通り、基本的にはこの世界では効果を発揮しない」


 穂波が頷く。京平が持ち帰ったポーションで済めば、どんなにか良かっただろうか。


「となると、次に考えられるのは人なんだけど。これも割と簡単ではあるのよね。私が最初にいた世界なんかだと、病気を治せるクラスの神官はそれなりにいたし。対価さえ払えば魔法をかけてもらうのは難しい話ではないもの」


 そう言ったエフィだったが、大きなため息をついた。


「ここで問題になってくるのは、『おねリン』のルールだよねー。世界のどこに転生させられるか分からないってのは、病弱な結希子さんにはリスクでしかないし。ホント、転ちゃんもろくでもない仕様を考えたものね」

「……まあ、神の思う『おねリン』本来の使い方からすれば、言わんとしてることは分からないでもないんですけどね……」


 京平が苦々しく呟く。転生の際のギャップを無くすためと考えれば、仮転生の際の行先をランダムにして異世界の様々な面が見られるようにする、というのは決して悪い事ではない。


「想定外の使い方をしている側の弱みだねー。文句も言えないもんね」

「言った奴がここにいるんですけどね……」


 京平の視線を受けた穂波は面白くなさそうに肩を竦めた。


「課金ガチャで同じ場所に転生出来ない事に文句言っただけじゃん。転生先がランダムな事は受け入れていたわよ、とりあえずだけど……」

「ああ、アベックガチャかー。確かに、艱難辛苦がどうのこうのって意気揚々と語っていたわね」


 エフィの言葉に、その姿が容易に想像出来た穂波と京平がうんざりとした表情を浮かべる。


「よく聞いてられましたね」

「うん?ちゃんとは聞いてないよ。ゲームしてたもの」


 そう言ったエフィはソファに戻って来ると、脇に寄せていた資料の山の中からボイスレコーダーを取り出した。再生ボタンを押すといつもの調子の神の声が流れてくる。そしてその背後には、確かに四国無双の音楽が流れていた。時折キャラが技名を叫ぶ声まで入っている。


「マジでガッツリやってる……」

「後から要点だけ確認したら、三分の一くらいの時間で済んだよ」


 三人にしてみれば、三分の一もまともな事を話していたことの方が驚きである。


「聞きたかったら言ってね。いつでも貸してあげるから」

「ありがとうございます」


 とりあえず礼は言った京平だったが、借りる事は無いなと密かに思う。ただでさえ毎日うんざりとするほど聞かされている声である。これ以上、聞きたいとは思わない。


「でも、通話内容録音するならスマホのアプリで良かったんじゃ……その方が雑音も入りにくいし、データの共有も簡単だし……」


 聖の何気ない言葉に、エフィの視線が窓の外へと向けられた。


「スマホの進化ってね……エルフの成長より早いんだ……」


 全てを察した穂波と京平が、慌てて聖を黙らせる。暫く自虐的な笑みを浮かべて遥か遠くの山々を眺めていたエフィだったが、やがて気を取り直し続きを話し始めた。


「ファンタジー以外だったら、ここより文明が発達した世界なんかで治療法を発見した名医が存在したりするかもだけど。結局、結希子さんを連れていけるかどうかが問題になるのよね」


 エフィの言葉に三人は黙って頷く。

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