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塔の上の転生者 14

「私も幾つかの世界でパラディンと呼ばれる存在を見てきたけどね。戦士や魔術師と違って、世界によって随分と違ってたりするんだよ。神の代行者たる聖なる騎士だったり、単なる戦士の一形態だったり」


 電源を入れ終えると、そのまま鍵盤へと指を走らせる。聖達には馴染みのない、それでいてどこか聞いた事があるような不思議な旋律の曲を奏でだす。


「当然、存在が変わればその力の源も変わるんだよねー。そして話を聞く限り、聖君の師匠になったパラディンの力の源は想いの力だね」

「想いの力?」

「そう。信念、執念、エゴ……言葉は何でもいいんだけどね。とにもかくにも、自分自身の内から湧き上がってくる想いを力に変えてるのよ」

「ああ、なるほど」


 納得の表情を浮かべたのは京平だった。レリー達にしてみれば自分自身をパラディン足らしめている何かが内に存在し、それを自然と行使しているにすぎないのだろう。聖が感覚でパラディンやっていると愚痴っていたが、あながち的外れな感想でもなかったらしい。


「えっ?どういう事?」


 当の聖はピンと来ていない様子だったが、京平は気にせずエフィへと話しかけた。


「つまり、魔術師や神官になろうとするよりかは、可能性があるんですね?」

「うん。少なくとも君達には幼馴染を救いたいという強い想いがあるよね。だったら、可能性はゼロではないと思うよ。そして何よりも想いの力を源とするのならば、この世界でも力を発動させられる可能性が高い」

「そうか、それもあるのか……」


 京平が呻く。パラディンになれさえすれば何とかなると思っていたが、現世で力を発現できるかどうかまでは意識が回っていなかった。


「神の力や魔術なんかよりはよっぽどね。そう考えると、パラディンを目指すのはある意味正解かも」

「そう……なんですかね?」


 若干、話についていけていない聖が首を傾げる。


「そうよー。それに弟子になれたって事は、少なからず見込みがあるって事なんじゃない?端にも棒にも掛からないようなら、弟子にすらなれてないんじゃないかな?」

「まあ、そうかもしれませんけど……いや、でも、想いの力って言われてもなぁ……」


 高坂を助けたいという気持ちは当然あるが、それをどうすれば聖なる一撃になるのかは全く想像できない。


「そこは、師匠に教えてもらうしかないんじゃないかなー」


 そう言って笑ったエフィは指を止め、今度は近くに置かれたパソコンを何やら操作する。先程までエフィが奏でていた音楽が、聞き馴染みのない楽器のアンサンブルで流れて来るが、その響きにはどこか違和感があった。


「ねえ、この曲。さっき私が弾いていた曲と同じなんだけど、比べてどう思う?」


 思いがけない質問に、エフィの意図が読めない三人。


「……正直に、ですか?」

「うん。正直に」


 探るような京平の言葉に、エフィはあっさりと頷く。


「……そうですね。メロディーに対して伴奏がずれてるんじゃないかなって感じる所が多々ありましたし、そもそもメロディーのテンポ自体も狂ってたりする所もあるように感じたりしたんですけど……」


 申し訳なさそうに指摘する京平だったが、エフィはあっけらかんとしたものだ。


「だよねー。やっぱり、まだまだだなー」


 そう言って演奏を止める。


「この曲はね、昔の世界の仲間がよく歌ってくれてたの。この世界の音楽も好きだけどねー。やっぱり、かつていた世界の音楽が恋しくなる事もあるじゃない?そうなると自分で演奏するしかないんだけどさー」


 再び鍵盤に指を走らせる。

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