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塔の上の転生者 13

「私の世界ではね、神の力ってのは身近なものだったんだ。だから、この体は神の力ってのを感じられるんだ、君達よりかはね」


 髪をかき上げ尖った耳を示す。


「転ちゃんもね、やっぱり神なんだよ。ああ見えて、物凄い力を持ってるんだから」

「物凄い力を持ってるのは分かりますけど……」


 エフィの言葉は理解出来る京平達だったが、心が納得する事を拒んでいた。


「見る人が見れば自然と頭を垂れるほどには神なんだよ。私にしてみれば、京平君が転ちゃんと同居出来てる事が信じられないもの」

「……そんなにですか?」

「そんなによ。敬虔な神の信徒でもない限り、神の力を間近に感じ続けるなんて苦痛でしかないし」


 肩を竦める。


「そんな訳で、君達みたいなこの世界の住人は、神の力や魔術を扱えるような体にはなっていないのよ」

「……なるほど」


 三人はそれぞれ自分の体を見ながら、何となく頷いていた。


「勿論、この世界にだって聖人、魔術師と呼ばれた存在はいっぱいいるよ。まあ単なる騙りが大半なんだけどさ、本物もいたんだよね」


 そこでエフィはニヤッと笑うと三人を次々と指差し問いかけた。


「さて、ここで問題。その本物と言われた人達は、どんな人物でしょうか?」


 突然の問題に困惑する三人だったが、それでも真剣に考え始める。そして京平がすぐに答えに行き着いた。


「……もしかして、転生者?」


 その答えにエフィは小さく手を叩いた。


「そう、正解。大半は私のように元の世界の能力を引き継いで転生してきた存在。だから実は人間ですらなかったりもするんだよね」

「なるほど……」


 目の前に異世界から来たエルフの魔術師がいる以上、疑う余地はない。


「だからまあ、この世界の住人が魔術や神の力を使えるようになるのは絶望的に難しい事なんだよ」


 微かな希望の光が消えたように感じた聖が肩を落とす。だが、エフィはそんな聖を元気づけるかのような口調で話を続けた。


「でもね、極稀に、本当に極稀に、この世界でも異能者と言える能力を持って生まれてくる特異な者もいるの。まあ、結局はこんな世界だから、大した力を発揮できる訳じゃないんだけどさ」


 エフィはそう言うと三人に理解出来ない言葉と共に、空中に何か印を描くような動作をしてみせた。


「元の世界だと、これで魔法使えたんだけどねー。この世界だと、死ぬ気で力を籠めないと発動しないんだよ」

「えっ?」


 エフィの突然の行動に思わず腰を浮かす三人。


「だから発動しないんだって」


 なおも印を描きながら笑うエフィに、京平が恐る恐る尋ねた。


「参考までに、どんな呪文を……」

「不可視の召使。初歩中の初歩なんだけど、こんなのですら簡単には使えないんだから、ホント魔術師には厳しい世界よねー」

「……そうなんですね」


 三人は危険な魔法でないと分かり一安心した様子を見せる。


「で、そういう特異な存在ってのは、やっぱりそれなりの血を引いている事が多いのよ。例えば穂波さんみたいな、ね」

「私、ですか?」


 戸惑う穂波。少なくとも、今までの人生で超常的な何かを感じた事は一度もない。


「そうよ。本人が認識出来ないだけで、神の力が身近に存在する所で生活していたりする訳だしねー。かと思えば、何の変哲もない家系から聖人が生まれてきたりもするから、何とも言えないけど」


 エフィはそう言いつつ立ち上がると、キーボードの方へと歩いて行った。


「それに、聖君がなろうとしてるのはパラディンでしょ?じゃあ、話は少し変わってくるんだよ」

「えっ?」


 聖が向けて来る物問いたげな視線を気にせず、エフィは並んで置かれているキーボードの電源を入れていく。

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