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塔の上の転生者 12

 不治の病に侵されているもう一人の幼馴染、高坂結希子の存在。

 そしてその結希子を助けるために、突然現れた転生の神が勧める『おねリン』に乗った事。

 聖はパラディンの持つ癒しの力ならその病を治せるかもしれないと考え、自らパラディンになろうとしている事。

 京平と穂波はそれ以外の手段を模索しているが、今のところ手掛かりすらない事。そもそも何を探したらいいかすら分かっていない事。

 そして幾つかの世界に実際に転生して体験した事。


 相も変わらず傍から聞けば突拍子もない話であるが、エフィは真剣に耳を傾けてくれた。


「なるほどねー」


 三人が話し終えると、エフィは難しい顔で頷く。


「やっぱり、難しいですか?」


 聖が不安げに尋ねる。自らの手応えとしては、後二回の転生でどうにかるとは到底思えない。


「パラディンになれるかどうかって話?そりゃ、難しいかどうかって訊かれたら難しいと答えるしかないねー」


 その答えに聖がやはりとばかりに肩を落とす。だが、エフィはそんな聖に構わず話を続けた。


「そもそもパラディンになるってのが難しいんだよ、という話は横に置いておいて」


 ジェスチャー付きで話題を横へ除けてしまう。


「世界の理の話は転ちゃんから聞いてるんだよね?」


 三人が頷くと、エフィは続けて問いかけた。


「君達、神の存在を感じた事はある?勿論、転ちゃんは除いてね」

「えっ?いや……」


 聖と京平の視線が自然と穂波に向く。二人の視線を受けた穂波は渋い表情を浮かべた。


「……そんな目で見ないでよ。父さんならいざ知らず、単なる神社の小娘の私にそんな経験ある訳ないじゃない」

「あら?神社の娘さんなの?」


 穂波の言葉に、エフィが反応する。


「ええ……でも、手伝いで巫女をする程度で、神の存在とかそんなのは……」

「まあ、この世界の人はだいたいそうよねー。じゃあ、魔法の力を感じた事は?」


 今度の問いには三人揃って首を横に振る。


「だよねー。神は居れどもその存在は感じられず、魔術は夢幻の如くなり。それがこの世界の理。だから君達が持ち込んだポーションはただの水になった」


 京平が頷く。神の力か魔術の力か、ポーションの力の根源は何かは分からなかったが、この世界には存在しえない力だったのは間違いないだろう。


「そしてそれは君達も同じなんだよね。この世界の理で生きる君達の体は、神の存在を感じられるようにも、魔術を使えるようにも出来ていない」

「……それってどういう事ですか?」


 困惑する聖をよそに、エフィは京平へと向き直った。


「君達、特に家の中にお社出されちゃった京平君に訊きたいんだけど。正直な話、転ちゃんを神だと感じた事はある?」


 思いがけない質問に、三人は顔を見合わせ、そしてそれぞれ考え込んだ。

 確かに異世界へ転生させられたり、プレゼントボックスからアイテムを取り出したりと、超常の力を発揮する姿は見てきている。その力をもって神だと理解はしていたが、確かにその姿から何かを感じた事は無い。


「そう言われてみると……」


 思い当たる節が全くなく眉を顰めた京平が後の二人を見ると、全く同じ表情を浮かべていた。


「……そうね。どっからどう見ても、謎の力を使うただの不審者だもん……」


 呆然と呟いた穂波の言葉に、エフィが吹き出す。


「不審者かー。確かに、あの転ちゃんだもんねー」


 どんな転生の神の姿を思い浮かべたのか、涙を浮かべるほど笑うエフィ。

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