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塔の上の転生者 11

「喉、詰まらすよ」


 穂波もエフィと同じように笑いをかみ殺しながら、二人に声をかける。一人優雅にお茶を飲むその姿に、聖達は恨みがましい視線をぶつけた。だが、穂波が動じる様子は全くない。


「……よく飲めるな」


 視線だけでは飽き足らず恨み言までぶつけて来た京平に、穂波は平然と答えた。


「それはもう、天下の宇治の玉露だもの」

「えっ?エルフのお茶じゃないの?」


 驚く聖に、穂波はニコリと笑いかける。


「他人を見て研究するのは常套手段だもんね」


 エフィの助け船があった事などおくびにも出さない。


「くっそ、人柱かよ……」


 悔しそうに呟いたのは京平。エルフのお茶、という単語に反射的に飛びついてしまったが、冷静に考えれば誰かが飲むのを確認してからでも遅くなかっただろう。


「誰かが爆死しないとね。それにエフィさんもそのノリ好きだって言ってたから、友好度的には有りだったんじゃない?」

「……それはそうだとしても……聖一人でも良かったんじゃ……」

「えっ?それは酷くない?」


 納得いかなそうな聖だったが、穂波は涼しい顔で団子に手を伸ばしていた。


「二人共ってのがミソよ。野郎が二人して厨二なノリを見せたからこその友好度アップなんだから」


 これには京平も納得いかない表情になるが、穂波は意に介せず美味しそうに団子を頬張っている。


「……なら、仕方がない……」


 相変わらず苦虫を噛み潰した表情ではあるが、京平は自分を納得させるように頷いた。今回の目的はあくまでエフィから有益な情報を得る事である。エルフのお茶で一手進むならば飲んだ甲斐もあるだろう。


「どうぞー」


 新しいお茶を淹れたエフィが戻ってきた。改めて聖達の前に置かれた湯呑からは、心安らぐ緑茶の香りが漂ってきていた。


「ありがとうございます」


 緑茶の程よい苦みと団子の甘みが口の中を支配していた木を消し去っていく。ようやく味覚の違和感から解放されホッと息をつく聖達。その様子を見たエフィは自分も団子に手を伸ばした。

 団子とお茶を堪能し、人心地つく四人。まったりとした空気が流れだしたところで、エフィが本題を切り出した。


「さて、それじゃ、そろそろ聞かせてもらおうかな?私に聞きたいことって、なに?」


 その言葉に聖達の間に一瞬にして緊張が走る。顔を強張らせお互いに視線を交わし合うが、すぐには言葉が出てこない。


「どうしたの?そんなに怖い顔して。何も取って食おうって訳じゃないんだからさー。気楽に訊いてくれればいいんだよ?」


 エフィはそう言うが、話はそう簡単ではない。少なくともエフィは転生の神の事を転ちゃんと呼ぶくらいには親しい間柄と見受けられるのだ。下手に話すと全てが神に筒抜けになる事すら考えられる。


「あの……神様からは何て聞いてますか?」


 探るような穂波の言葉にも、エフィは気を悪くする様子すら見せずに答えた。


「大して何も聞いてないよー。転生経験者に話を聞きたい子がいるって事と、あとは何か『おねがいリンカーネーション』とやらについて、随分と力説してたくらいかな」


 『おねリン』の名が出た時に三人が僅かに反応する。その事に気付いたエフィだったが、何事もなかったかのように話を続けた。


「うーん、そんなに信用出来ないかなー。やっぱり、エルフだってのが良くなかったかしら」


 そう言いつつ尖った耳を抑えてみたりしている。


「いえ、別にそう言う訳では……」

「じゃ、あれだ。転ちゃん呼びが気になるんだ」


 その言葉におずおずと頷く穂波達を見て、エフィは頭を掻いた。


「ごめんねー。そこまで気が回らなくて。確かに、転ちゃんて呼んでちゃ警戒もするよね」


 それでもなお逡巡する三人に、エフィは軽く肩を竦めた。


「流れ流れてここまでやって来た流浪のエルフの私だけどね。でも、助けを求めてきた子供を見捨てるほど、堕ちてはいないつもりだよ」


 そしてさっと表情を引き締めると、真剣な眼差しで三人を見遣った。


「『お願いリンカーネーション』について、転ちゃんには聞けない、聞かれたくない事があるんでしょ?私で答えられる事なら、何でも答えるよ」


 その視線を受け止めた聖達は、微かに視線を交わし頷き合った。ここまで親身に寄り添おうという姿勢を見せてくれるエフィを信用出来ずして、この先誰を信用出来るだろうか。


「実は……」


 三人は意を決して話し始めた。

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