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塔の上の転生者 10

 リビングでは京平達が二人して難しい顔でテレビを見ていた。画面ではどこかの城が炎に包まれるムービーが流れている。


「酷いエンディングでしょー?せっかくクリアしたのに、第六天魔王に蹂躙されて終わるんだもん。それは香宗我部でクリアした時のだねー」


 エフィは一目見ただけでどのエンディングが言い当てた。


「神は七種類のエンディング見たとか豪語してましたけど……」

「うんうん。プレイアブルキャラごとにエンディング変わるから、種類増やすのは簡単なんだよね。まあ、今のところ全部第六天魔王四国蹂躙エンドなんだけどさ……」


 エフィもうんざりしているのだろう。三人は初めて彼女の表情が曇るのを見た。


「ゲーム的に考えたら、絶対トゥルーエンド……もっとグッドエンドっぽいエンディングがあってもおかしくないでしょ?」


 エルフからゲーム的と言う台詞を聞くのも、なかなかできない体験である。


「転ちゃんとか何人かのゲーム仲間に手伝ってもらってるんだけど、何をどうしたらいいのかさっぱりなのよ」


 そう言ってエフィが肩を竦める。


「それだけやって出ないって事は、本当にこのエンディングしかないって事は?」


 京平のもっともな質問に、エフィは首を振って手を差し出した。


「ちょっといい?」


 そう言ってコントローラーを受け取ると、ムービー一覧へと戻る。そしてエンディングの項の先頭を表示して見せた。


「ほら、エンディング1って埋まってないでしょ?これを見たって人、一人もいないんだよ。怪しいと思わない?」


「それは……確かに」


 あからさまに怪しすぎる状況に、京平も頷かざるを得ない。


「でしょー?だから、操作キャラ、クリアタイム、ステージ順とか、考えられる限りの要素でマトリクス作って、みんなで協力してるんだけどね。先は長そう」


 ため息をついたエフィは、そのままテレビを消してしまった。


「さっ、クソゲーの話はここまでにして、お茶にしましょう」


 各自にお茶を出すと、最後に団子の皿をテーブルの中央に置いた。


「それじゃ、いただきましょうか」


 エフィが湯呑を手にするのを見た京平達は、同じように湯呑を手に取る。


「足りないようだったら、ケーキも切るからね。遠慮しないでねー」


 そしてエフィが湯呑に口を付けると、それを見た聖達もお茶を飲もうとする。だが、ほんの少し口にした時点で二人とも動きを止めてしまった。


「……」


 聖と京平、穂波とエフィ。それぞれが無言で見つめあうが、そこに込められている感情は全くの別物だった。片や困惑と混乱、片や興味と満足である。微かに笑いあう穂波達の前で、聖達のアイコンタクトが飛び交う。穂波が気付かない振りをして成り行きを見守っていると、二人は予想通り飲み切る事にしたらしい。悲愴、と言っていい程の覚悟を決めた面持ちで頷きあい、湯呑一杯分のお茶を一気に呷った。


「……フフっ」


 耐えきれずにエフィが吹き出した。聖達は耐えているつもりなのだろうが、完全に顔に出てしまっている。それでも一滴たりとも吐き出さなかったのは見事と言っていいだろう。


「お代わりは如何かしら?」


 エフィの言葉は、何とか液体自体は飲み込んだものの口の中に充満する後味の木に悶絶している二人にとって死刑宣告のようなものだった。一瞬の後、二人は揃って激しく首を振り拒否の意向を示す。


「いえ、もう十分です、なあ……」

「……うん、まあ、やっぱり俺達人間なんで……」


 言葉を濁しているが、不味いという感想は言外に漏れ出ていた。


「そう?じゃあ、人間のお茶を淹れたげよっか?」

「是非!」


 まさに天からの助けと言える提案に、食い気味に飛びつく二人。エフィは笑いをかみ殺しながら、お盆を手にキッチンへと姿を消した。それを確認した聖達は、素早く団子に手を伸ばしたかと思うと一口に頬張った。

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