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塔の上の転生者 8

「何だかねー、この世界の土だか水だかとは相性がいいみたいでね、めっちゃ育つのよ。まあ、不味い事には変わりないんだけど」


 ケトルのお湯が沸騰したのを確認したエフィは、急須にたっぷりと注ぎ込んだ。


「穂波さん、そっちの棚からアルミのボウル取ってくれる?一番大きいの」

「はい」


 エフィの示した食器棚は綺麗に整頓されており、目的のボウルはすぐに見つかった。


「これですか?」


 穂波が確認すると、エフィは問題ないと頷く。


「そこに、お団子入れてくれるかな。袋のままでね」


 エフィは再びケトルに水を注ぎお湯を沸かし始めていた。


「そのみたらし団子、美味しいのよねー。大好物」


 心から嬉しそうに団子を見つめるエフィの姿に、正解だったと穂波はホッと胸を撫で下ろした。


「湯煎で温めると、いい感じに柔らかくなるのよー。穂波さん、食べた事ある?」

「ないです。食べてみたいとは思ってたんですけど」

「じゃあ、丁度良かった。せっかくだから、いっぱい食べてね。こんなに美味しいお団子食べるのに、エルフのお茶とか絶対ダメ」


 その強い口調の否定に、思わず吹き出してしまう穂波。


「じゃあ、あの二人はいいんですか?」

「いいんじゃない?男の子だもの。お団子の味よりも、エルフのお茶っていう厨二心を満たしてくれる物の方が大事よ」

「確かに」

「でしょー」


 顔を見合わせ笑いあう。


「私達はどうしよう?せっかくだし、穂波さんが持って来てくれたのにしようか」


 エフィはそう言って穂波の手土産を手に取る。穂波が買ってきたのは玉露の三大産地飲み比べセットだ。


「あら、玉露……ホントに気を遣わせたみたいねー。転ちゃん、どんな伝え方したんだか……」


 そう言いつつ新しい急須を用意する。そして手慣れた様子で鉄瓶から急須へ、急須から湯呑へ、そして湯呑から湯冷ましへとお湯を移していった。


「これに比べたら、この世界のお茶なんて何だって玉露なのにねー」


 そう言って指差したのは勿論エルフのお茶を淹れている急須だ。


「ハハ、まあ、あの神のやる事ですしね……」


 どうやら神を通した時点で情報が若干歪んだらしい。


「でも、さっきも言った通り、神とか関係なしで私達の気持ちなんで」

「うん。ありがとう。あっ、ケトルのお湯、ボウルに注いでくれる?」

「あっ、はい」


 言われた通りに穂波がボウルに湯を注いだ。その間に湯冷ましの湯の温度を確認したエフィは玉露の袋へ手を伸ばす。


「穂波さん、好みとかある?」


 その手は三種類の袋の上を行ったり来たりと、どれにするか決めかねているようだ。


「いえ……そもそも飲んだこと自体が……」

「そっかー……じゃ、宇治にしようかな」


 茶葉を急須に入れ、湯冷ましのお湯を注ぐ。

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