塔の上の転生者 5
12/29に上げた塔の上の転生者4の内容が間違っていましたので、12/30に再度上げ直しています。
「神に紹介されたのが推しの作家さんで、その作家さんは本物のエルフで、そしてこの世界に転生してきてるって事ですよね」
そして一つずつ現状を確認するよう呟くに、エフィはいちいち頷いて見せている。その様子を見ていた聖は、京平の肩を軽く叩き少し勝ち誇ったように言った。
「な。言った通りだろ」
「何が?」
何を勝ち誇られているか分からない京平が怪訝そうに訊き返す。
「事実が混じってたじゃん。やっぱり、事実は小説よりも奇なりって事だよ」
「あー……」
確かにそんな事を言っていたなと思う京平だったが、事実があまりに奇に寄りすぎていて素直に頷く気にはなれない。
「それにしたって限度ってもんがあるだろ……」
思わずボヤいてしまう。
「もしかして、その様子だと転ちゃんから何も聞いてない感じ?」
三人の様子に、エフィが少し眉を寄せた。
「……てんちゃん?」
だが、三人はまたもや出て来た聞き慣れぬ単語に困惑するばかりだ。
「ん?転ちゃんの紹介で来たんでしょ?」
エフィもまた首を傾げる。
「あっ、はい、確かに転生の神のしょうか……てんちゃんて転生の神の事ですか!?」
更なる驚きに襲われた京平の言葉に、エフィは事も無げに頷いた。
「そうよ。転生の神だから親しみを込めて転ちゃん。みんなもそう呼んでるんじゃないの?」
「……親しみ、は無いですね」
穂波の苦々し気な言葉に、エフィが笑う。
「そっかそっか。まあ、転ちゃんだもんねー。インターホンで里見さんですかって訊かれた時からそんな気はしてたけど、私の事、何も聞いてないんだ?」
「ええ……あっ、そうだ、これ……」
神から聞いたのは住所氏名を除けば、謎の歌一節だ。そこで手土産について思い出した聖達は、それぞれ持参した袋を差し出した。
「お名前と住所以外で聞いたのがこれです。お口に合うといいんですけど……」
「ああ、そんな気を使わなくていいのにっ!」
「いえ、無理を言って急にお邪魔させてもらってるんでこれくらいは……」
京平の言葉に、エフィが表情を曇らせた。
「本当に無理でも何でもないのにー。あー、もうっ、全然、気楽に来てって言っといたんだけどなー……転ちゃん何考えてるのよ!こんな子供に気を遣わせてー」
エフィが神に向けての怒りを募らせるのを見た三人は、慌ててフォローに入った。
「いやいや、流石に私達も手ぶらでは来れないんで……」
「そうですそうです。だから、エフィさんの好みを教えてもらえたのは良かったと思うんですよ」
「まあ、変な歌で教えてくれ……」
例によって余計な事を言いかけた聖を京平達は目で黙らせると、袋から手土産を取り出す。
「神とか関係なく、自分達からの気持ちなんで。受け取ってください」
神妙に頭を下げる三人を見たエフィは、小さくため息をついて笑った。
「そうだねー。これは君達の厚意だもんね、ありがたく受け取らないと。ゴメンね、ちょっとイラっとしちゃって」
「いえ、全然。寧ろよく分かります」
常にイライラさせられている穂波が力強く同意する。
「君も苦労させられてるんだねー」
エフィにそう笑いかけられ、穂波も苦笑いを浮かべる。




