塔の上の転生者 4
12/29に間違ってアップロードしていたので、12/30に正しいデータをアップし直しました。
「はいはーい、ちょっと待ってねー」
すぐに先程と同じく軽やかな声が返ってきた。ややあって扉が開く。姿を現したのはジャージ姿の女性だった。首元にはお洒落なスカーフを巻いているが、頭にはタオルも巻いていた。そのちぐはぐなファッションに、三人はどう反応したものかと戸惑う。
「いらっしゃい。さ、入って入って」
だが、女性はそんな三人の様子を気にした風もなく、笑顔で中へ招き入れた。
「お邪魔します」
三人は口々に挨拶しながら、部屋の中へと入る。
「ちょっと散らかってるけど、ごめんね」
そう言って通されたのは広々としたリビングだった。ソファーにテーブル、そして壁には巨大なテレビモニター。後はラックに収められた各種ゲーム機に、数台のパソコン。そのパソコンにはキーボードやスピーカー等が接続されている。そして窓の向こうには流石の眺望が広がっていて、その初めて見る光景に三人は息を呑んだ。
「ほら、そんな所に突っ立ってないで、座って座って」
女性はテーブルの上に広げられていた資料のような物を脇へ片付けながら、ソファーの方を指し示す。
「あっ、失礼します」
その声に我に返った三人は、ロングソファに並んで座った。それを見届けた女性は一人掛けのソファーに腰掛ける。
「あの、今日は突然お邪魔させてもらってありがとうございます。私は、松永穂波、で……」
「丹羽京平です」
「直江聖です」
穂波が頭を下げたのをきっかけに、京平達も次々自己紹介し頭を下げた。
「穂波さんに京平君に聖君ね。どうぞ、よろしく。私の名前は、もう聞いてもらってるみたいだけど、改めて。私は里見英莉。英莉って呼んでね」
胸に手を当て、優雅に一礼する。
「英莉、さん……」
おずおず、といった感じで口に出した穂波を見た英莉は、何か思いついたのかポンと手を打ち付け加えた。
「もしくはエフィ、でもいいよー」
「エフィ?さん?」
どこから出てきた名前か分からない穂波が戸惑った様子を見せると、英莉は悪戯っぽく笑った。
「転生者、としての私に会いに来たんでしょ?じゃあ、それっぽい方がいいかなって。私の最初の世界での名はエフィルロス。だから、エフィ」
「エフィルロス……」
どこか聞き覚えのある名前に三人が顔を見合わせる。そして同時に答えに行き当たり、一斉に驚きの声を上げた。
「えふぃるろす!」
「ぐうたらエルフ!」
「だらエル!」
驚いたままの表情でエフィに目を向ける。
「あら?その様子だと私の本、読んでくれてるのかな。だったら嬉しい!」
そう言いつつ頭に巻いていたタオルを取り去る。流れ落ちるように零れ出た銀色の髪をエフィがかき上げると、僅かに長い尖った耳が露わになる。
「ぐうたらエルフことエフィルロスよ。どうぞ、よろしくね」
エフィは茶目っ気たっぷりに笑っているが、聖達は未だに驚きから脱することが出来ずただポカンと彼女を見つめていた。
「そんなにビックリした?」
その余りの驚きっぷりに、今度は逆にエフィが驚いた様子を見せる。
「そう……ですね。あまりの衝撃に理解が追い付いてません」
京平が言葉を絞り出す。




