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或る午後の出来事 8

「そうね、なんか今日一日無駄にしたみたいでムカつくけど」


 穂波の視線の先には、最早正座させられることに何の抵抗もないかのように平然と座っている神の姿があった。その神は穂波の視線に気づくと、わざとらしく大袈裟に肩を竦める。


「そんなに仰るなら、今から行けばいいじゃないですか」

「は?どこに?」

「勿論、転生者の所にですよ」

「だーかーらー、こんな時間から行ったら迷惑になるって話してたでしょうが!」


 収まっていた穂波の苛立ちが一瞬で蘇る。そんな穂波の神経を更に逆撫でするように、神は指を二度三度振って見せた。


「そうは仰いますが、別に確認した訳ではありませんよね?」

「えっ?それはそうだけど……」


 思わぬ神の反撃に、穂波のトーンが一気に下がる。


「これから夕食の支度したりって時間なんだから、普通は迷惑になるって思うじゃない……」

「他の世界から来た転生者の人なんですよ?どうしてこの世界の普通に従って生きておられると思うんです?」


 大人気なくここぞとばかりに上から話す神。


「そんなの、こっちはどこの誰だか知らないんだから分かる訳ないでしょ」


 口調はともかく言っていること自体は間違っていないだけに、穂波も噛み付くに噛み付けない。


「仕方ありませんねぇ。わたくしが確認してあげるとしましょうか」


 恩着せがましく言った神は、さっと立ち上がったかと思うと携帯電話を取り出しどこかへ電話をかけ始めた。


「折り畳み式……」

「ガラケー……」


 その古めかしいフォルムの電話に聖達が驚いている間に、相手が電話に出たらしい。神がいつもの軽薄な調子で話し始めた。


「あっ、いつもお世話になっておりますぅ。わたくし、転生の神、でございますぅ。ええ、ええ、この度はどうもありがとうございましたぁ」


 神は電話片手に頭をぺこぺこと下げながら、部屋の隅へと移動していく。


「はい、はい。そこでご相談なんですけれども。ええ、ええ、例の彼らがですね、何とか今日会えないかって申しているのですが、何とかなりませんかねぇ?」


 神はチラチラと聖達に視線を向けながら、話を続けている。三人にしてみれば何となく腑に落ちない神の言い草だったが、とりあえず黙って成り行きを見守る。


「ええ、ええ、それはもう、はい、ええ。本当でございますか?あっりがとうございますぅ」


 神が左手でOKサインを出す。それを見た京平が、電話を代われとジェスチャーでアピールするが、神はそれをまあまあと押しとどめて話を続けていた。


「はい、はい。では、そう言う事で。今後ともよろしくお願いいたしますぅ。ではー」


 そのまま暫くの間、四方山話に花を咲かせた神は、京平に代わることなく電話を切ってしまった。


「ほら、オッケーだったでしょ?」


 まるで自分の手柄と言わんばかりの様子で戻って来る神を、京平は盛大なため息で出迎えた。


「一言挨拶くらいさせろよ」

「いいじゃないですか。どうせこれから行くんですし」


 何か問題でもといった神の態度に、京平はあっさり白旗を上げた。


「で、相手はどこの誰なんだよ」


 さっさと話題を変えてしまう。


「おっ?やはりそこが気になる感じですか?」


 少しばかりもったいぶる感じを出した神だったが、京平達は全く反応しない。ただ冷たい目で神を見つめている。


「……何ですか……もう少し付き合ってくれたっていいじゃないですか」


 渋々と言った感じでそう言った神は、三枚の封筒を取り出した。

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