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遺跡の戦い 8

「メデューサさんとしては、とりあえず現状が維持出来ればそれで問題ない感じですかね?」

「そうじゃの……今のように美しさを確認出来れば尚良しじゃが……そこまで贅沢は言うまい。今の美を保てればそれで良い」


 メデューサが静かに暮らせる場所。聖にはこの世界でただ一か所、思い当たる場所があった。問題は元の住人が受け入れてくれるかだが……


「師匠?」

「なに?」


 恐る恐るレリーに声をかけると、ぶっきらぼうな返事が来た。聖がメデューサの美しさに心奪われたことに、殊の外、腹を立てているらしい。

 まずいと察した聖だったが、顔には出さずに済んだ。これ幸いと素知らぬ顔で話を続ける。余計な事を言ってしまうと話がおかしな方向へと行きかねないのは、ここ数日の経験から学んでいた。


「……龍神の教会に住んでもらうというのは……」


 これが聖の思いついた解決策だった。元々化け物じみた龍の巫女が住んでいる場所である。一人くらいモンスターが増えても問題ないに違いない。


「は?どして教会……」


 聖の乱暴すぎる理論によって導き出された答えに、ご立腹モードのレリーは反射的に難色を示しかける。だが、すぐに気を落ち着けメデューサへと向き直った。


「ねえ、家事は出来る?」


 メデューサはいきなりの質問に面食らいつつも、とりあえず答える。


「う、うむ。こうして一人で暮らしている訳じゃからの。妾が快適に過ごせる程度にはこなしておるつもりじゃ」


 そう言われて改めてこの広間を見渡してみると、確かに廃墟ではあるが小綺麗に整えられていた。


「そか。じゃ、次。この化粧品、私も使える?」


 そう言ってテーブルの上の小瓶を指すレリーの瞳は、かつてないほど鋭い光を宿していた。


「それは、妾の肌に合わせて作っておるゆえ、そなたには合わんと思うぞ。勿論、そなたに合わせて作る事は可能じゃがな。少し触れても?」

「うん」


 メデューサはレリーに近付くと、腕、脚、頬とその白い肌を撫でるように触れていく。


「ふむ……見た目の割には随分と痛んだ肌じゃな……じゃが、この程度なら問題なかろう。妾にかかればすぐにツルピカじゃ」

「マジでっ!?」

「うむ。大マジじゃ」


 興奮のあまり珍しく声を大きくしたレリーに、メデューサは重々しく頷いて見せた。


「さらに各種マッサージを合わせて施術すれば効果倍増」

「そのマッサージは?」

「勿論、嗜んでおる」

「意外と何でも出来るね」

「外面だけ磨いてもそれは真の美ではないからの。内面から溢れ出る美が合わさってこそ、美の神髄に到達出来るのじゃよ」


 次の瞬間、レリーは満面の笑みを浮かべてメデューサの手を取っていた。


「採用。龍の巫女の名において、あなたの安全は保証する」


 流石のメデューサも、いきなりこの世界における最上級の安全保障を得た事に動揺を隠せない。


「それはありがたい話じゃが……妾はこんなだぞ?迷惑ではないのかえ?」

「仮にも龍の巫女と呼ばれる私達だよ。例え素顔でウロウロされたって石化するつもりないし。だから、気にしなくていいよ」

「……ふむ」


 尚も思い悩むメデューサに、レリーが畳みかける。


「代わりと言っては何だけど、教会の雑事とかやってもらえれば私達も助かる」

「雑事って……ジェノさんいるじゃないですか」


 聖のもっともな疑問に、レリーは肩を竦め、ため息交じりで訊き返した。


「ジェノがちゃんと仕事すると思う?」

「えっ?それはするんじゃないですか?師匠の従者でしょ?」

「うん、するよ。ギリギリ及第点くらいのね」


 そう言って今度は大きなため息をつく。


「だいたい、主人が旅に出るっていうのに、『あ、そうですか。気を付けて行ってきてください』って手を振って見送る従者がどこにいるってのよ」

「……あー」


 その言葉に、聖も修行に出発する時の事を思い出した。確かにジェノはマリエラ達と並んで手を振って送り出してくれていたが、よくよく考えてみると従者ならばついてくるのが正しい姿だろう。


「だから、もっと気が利く人を欲しがったっていいじゃない!」


 レリーの魂の叫びに、今度は黙って頷く聖。

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