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ロード・オブ・ザ・パラディン 9

 ミノタウロスは山の中腹のダンジョンに住みついていた。近くには小さな集落もある。ミノタウロスにしてみれば、いい餌場になるだろう。


「さて、さっさと倒して次行こ」


 ダンジョンはレリーが力づくで突破した。おかげで聖は早々にミノタウロスと対峙する羽目になっていた。


「……二本脚か……」


 四つ足で怪物然としていたマンティコアよりかは、人間に近いフォルムをしている。いざ目の前にした時に戦う覚悟を持てるか、多少不安はあった。


「まあでも、頭は牛だし、脚も牛だしな」


 幸いにもその姿は何処からどう見ても怪物だった。これならばマンティコアを相手にするのと変わりない。


「何ブツブツ言ってるの?来るよ」


 レリーの言葉を合図にしたかのように、ミノタウロスが猛々しく咆哮する。そして角を振りかざし聖へと突進してきた。


「あー、これは受けたら死ぬな」


 その勢いを目の当たりにし、レリーのアドバイスの妥当性を確認する。だが、これを避けてしまうと後ろにいる、か弱いレリーへとミノタウロスが向かってしまう事になる。

 困った聖がチラッと後ろを確認すると、レリーは集中しろと言わんばかりに手で追い払う仕草を見せた。


「私は勝手に避けるから、気にしない」


 流石に自分を庇って戦わすのは難しいと判断したのだろう。


「了解」


 それならばと盾を投げ捨てた聖は、両手で刀を握りバッティングの要領でミノタウロスを迎え撃つ。

 こうして始まった二戦目だったが、意外にも早々に決着がついた。


「あれ?俺、ちょっと強くなってません?」


 倒れ伏したミノタウロスを前に、聖が驚きの声を上げた。多少息は上がっているが、マンティコアを相手にした時ほどではない。


「なってるなってる」


 レリーはどこまで本気か分からない感じで適当に答える。


「まあまあ、上手く戦ってたと思うよ」


 無傷という訳にはいかないが、大きな怪我は負っていない。ミノタウロスが振り回す斧を上手く掻い潜っては、その胴体に斬りつけていた。


「ですよね」


 見えた、と自信を持って言える程ではない。それでも、斧の攻撃はそれなりに余裕をもって避けられていたように思う。もしかしたらレリーの言葉通り、実戦経験を積むことで強くなれているのではないか、そんな気にもなってくる。


「元気そうだね。じゃ、次行こうか」


 そっと寄ってきたレリーは、さっと聖の傷を治すと踵を返し出口へと向かう。


「えっと、次はトロルですよね」

「うん。この近くの森で見かけたって話。すぐに見つかるといいんだけど」


 例によって依頼書を確認していたレリーが面倒そうに答える。


「ジェノがいればすぐに見つけられるんだけど……ま、ウロウロしてたら向こうが見つけてくれると思うし」

「そんなもんですか?」

「うん。さっきも言った通り、私達はいい獲物だから」


 確かにマンティコアも割と早い段階で襲ってきた。だとすると、トロルも案外早くに襲ってくるのかもしれない。


「その、トロルって再生するんですよね?」


 トロルの何よりも厄介な点である。


「勿論、トロルだからね。もしかして、ヒジリの……」

「トロルもいません」

「そなんだ。ラッキーだね」


 もはや幸運の基準がどこにあるのか分からなくなってくるが、今心配すべきことはそこではない。


「再生されると勝てる気がしないんですけど……」


 ミノタウロスとの戦いで人に近いフォルムのモンスターとの殴り合いには多少の自信を持った聖ではあるが、再生された日には削り負けるしかない。


「ジェノならどうするか教えてあげよっか?」


 碌な答えが返ってくる気がしないが、だからと言って聞かない手はない。


「再生するより早く切り刻み続ければ、いつか殺せるってさ」


 予想より遥かに過激な答えが返ってきたが、それが出来るのはジェノだからに違いない。


「無茶苦茶ですね……」


 思わず漏れた聖の心の声に、レリーはおかしそうに応えた。


「だってジェノだし」


 本人は不本意だろうが、その一言で納得出来てしまうのがジェノのジェノたる所以だろう。


「でも、確かに再生されると面倒だね」


 この二戦の聖の様子を見ると、最早トロルと戦ったところで得れる物は多くないかもしれない。せいぜい単なる戦闘経験と言ったところだろう。


「まあ、簡単な再生対策で私が手を貸してもいいけど」


 ならば、さっさと済ませてしまうのも手だ。


「いいんですか?」


 思いがけないレリーの言葉に聖の声が弾む。


「まあ、ヒジリが良ければ、だけど」


 どこか歯切れの悪いレリーの態度に、これはやはりタイマンさせたいのではないかと焦った聖は全力で頷いて見せた。


「いやいや、是非とも、是非ともお願いします!」

「そ、分かった」


 そんな話をしている間に、二人はダンジョンを出た。次に向かうのは目前に広がる鬱蒼とした森である。


「さ、行くよ」

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