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ロード・オブ・ザ・パラディン 4

 二人は軽快に馬を走らせていく。魔法の像から生み出された馬だけあって、乗馬初心者の聖が落ちないようにしがみついているだけでも、それなりの速度で走ってくれていた。


「この辺。最近、よく旅人がマンティコアに襲われているんだって」


 街を出てから小一時間。目的地が近づいたのか馬の速度を緩めたレリーは依頼書を取り出し、そこに書かれた地図と辺りを見比べている。不思議と聖の馬も歩調を合わせるように速度を落としていた。

 よくよく考えてみれば、聖はここまでの道中、馬の首にしがみついていただけで何の指示も出せていない。それにもかかわらず、レリーについてこれているというのは、やはりマジックアイテムの力という事なのだろうか。


「凄いでしょ?この子達」


 そんな聖の思いに気が付いたのか、レリーが自慢げに教えてくれる。


「私の乗ってるのが主で、聖の乗ってるのが従。従の馬は勝手に主の馬と同じように走ってくれるの。隊商なんかで重宝されるアイテム」

「……確かに」


 そう言う事であれば、聖は捕まっているだけでも問題ない。


「さ、ここからは歩いて行こ」


 ひらりと馬から降りたレリーは聖が降りるのも待たず、その首筋を軽く叩いた。同時に二頭の馬が像へと戻る。


「うわっ!」


 突然、宙に投げ出される感じになった聖は、そのまま地面に叩きつけられた。


「……こんなとこまで主従なのかよ……」


 ボヤキながら立ち上がった聖に、レリーは悪びれもせず謝った。


「ごめん。すっかり忘れてた」


 忘れていたのがアイテムの機能の事なのか、それとも自分の事なのか。レリーなら後者もあり得る気がした聖は、軽くため息をつく。


「どかした?」


 レリーに訊かれるが、まさか自分の事を忘れてませんよね、とも訊けない。聖は曖昧な笑顔で頭を振ると、さっさと話題を変えてしまった。


「それで、歩いてって事ですけど、どこまでですか?」

「勿論、マンティコアが出てくるまで」

「なるほど」


 予想通りの答えだったせいか、あっさり受け入れる聖。よっぽどの事でもない限り龍の巫女達が適当なのは、知り合って日の浅い聖も分かって来ていた。

 のんびりとした様子で歩き出したレリーの後を追う。武器一つ持たずに歩くその姿は、不用心な事この上ない。マンティコアならずとも襲いたくなるのも分かる。


「来ますかね?」


 それに比べて、と自分の姿を再確認する聖。頭のてっぺんから足の先までマジックアイテムてんこ盛りである。警戒してくださいと言っているようなものだ。


「だいじょぶ、だいじょぶ。だって、ヒジリ、強そうに見えないし」

「いや、それはそうなんですけど……もうちょっと言い方ってものが……」


 ストレートなレリーの言葉に、聖が軽く凹む。


「じゃ、言われないように強くならないと」

「……そうですね」


 こればかりは事実なので言い返しようもない。


「頑張ります」

「うん。ヒジリなら出来る」


 レリーが笑顔で押してくれた太鼓判は、随分と安そうだった。

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