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要塞研究所 6

「ふむ。また、異界からの召喚か」


 いつの間に戻ってきていたのか、頭上でメアリーのドローンが旋回している。


「残念だな。出来れば目の前で見たかったものだが……」

「……そんな事より、あれ何とかならない?」

「そうだな。動きさえ止まれば何とかならない事もない」


 ダメ元で訊いてみた穂波だったが、意外と脈がありそうな答えが返ってきた。


「動き、か……」


 音が止んだタイミングでそっとロボの様子を窺う。銃撃では埒が明かないと判断したのか、こっちに近づいてこようとしていた。近接となったらどんな攻撃をしてくるか分からない。出来れば近寄らせたくないところだ。


「姉さんは……」

「今向かってるわ。だから、無茶はしないで」

「うん」


 心配そうなヴィルにそう答えた穂波だったが、無茶をせずに乗り切れる気はしない。


「因みに、カノジョの飛行性能はそう高くはない。キミも体験しているから想像はつくだろうがね」

「ちょっとメアリー!余計な事を言わないで!」


 つまり、このままだとヴィルが戻ってきた時には狙い撃ちにされるという事だろう。やはり、それまでにあれを何とかしなければならない。

 持ち手を両手で掴み、盾を持ち上げようとしてみる。かなり重いが、少しの間なら持ち上げられそうだ。


「動きを止めるって、どれくらい?」

「……五秒もあれば十分だ」

「五秒って……簡単に言ってくれる」

「穂波!やめなさい!」


 ヴィルが制止しようとするが、穂波は聞き入れない。


「ちゃんとやってよ」

「勿論だとも」


 メアリーに一声かけた穂波は、盾を持ち上げるとロボに向かって走り始めた。そのまま全身でぶつかっていく。


「!」


 激しい衝撃に歯を食いしばる。そのまま低い姿勢を取って盾ごと下に潜り込む。


「ううううう」


 全力でロボを押しやり、僅かにそのバランスを崩すことに成功する。ロボはそのまま元の体勢に戻ろうとするが、穂波は全身に力を込めて阻止しようとする。

 力では圧倒的に不利な穂波だったが、体勢に恵まれた事で一瞬の膠着状態を作る事に成功した。


「お見事」


 盾の陰からドローンが飛び出しロボに取り付く。


「その頑張りに応えよう。三秒だ」

「出来るんなら、最初っからやってよ!」


 そう文句を言った穂波だったが、言い終わった時には既にロボは動きを止めていた。


「……ふう」


 盾を向こうへ押しやるように手放すと、崩れ落ちるように座り込む。その視線の先ではロボが妙な動きを取り始めていた。乗っ取ったメアリーが操作性能を試しているのだろう。


「ちょっといい盾、か」


 認めるのは癪だが、これがなかったら助からなかったに違いない。感謝すべきだろうと思う穂波だったが、どうしてもそんな気分にはなれない。


「穂波!」


 気持ちの整理をうまくつけられない穂波が悶々としていると、やがてヴィルが室内に飛び込んできた。着地の勢いそのままに、穂波に駆け寄る。


「姉さん」

「無茶しないでって言ったでしょ」


 そのまま強く抱きしめる。


「怪我までして……」

「ごめん、でも……」

「ううん、ありがとう」

「うん」


 ヴィルはそっと体を離すと、自分の服を破って穂波の傷を縛った。


「……もう一機来る」


 そんな二人の間に流れる穏やかな空気を打ち破るかのように、メアリーから警告が発せられる。その声にヴィルはうんざりした表情で立ち上がった。


「……警察が全く役に立ってないようだけど」

「一機足止めしてるじゃないか」

「四機相手にしたら五機も一緒よ」


 穂波が立ち上がるのに手を貸しながらぼやく。


「まあいいじゃないか。ここはワタシが受け持とう。その間にここから離れたまえ」

「そのつもりよ」


 メアリーのロボが廊下へ、ヴィル達が窓へと向かおうとした時、不意にモニターに電源が入った。

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