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吸血鬼はBARにいる 4

「ハハハ。本当に面白いわね、貴方。大丈夫、大丈夫よ、もう。きっと、貴方と話していれば、ね」


 何故ヴィルに笑われたのか分からない穂波はキョトンとしている。


「そうねぇ……じゃあ、穂波の話を聞かせてくれないかしら。貴方が話をすれば、私の地雷を踏むこともないんじゃなくて?」


 ヴィルはメアリーに代わりのグラスを要求しながら、そう提案する。


「私のですか?」


 穂波はヴィルに聞かせる程の話があるだろうか、と考え込んだ。何をどう話すにしろ、あの転生の神の話は避けて通れないだろう。


「あんまり面白い話はないですけど……」

「ふむ。いいアイデアだよ。キミには聞かせてもらいたい話が山ほどあるからね」


 元から穂波に興味を持っていたメアリーが乗ってくる。


「まあ、そう言う事でしたら……」


 渋々と言った感じで穂波が話始めようとするが、それを遮るようにボリスが席を立つ。


「どうかしたかね?」


 メアリーに聞かれたボリスは、ぶっきらぼうに答えた。


「ガールズトークに付き合えるほど若くはねぇんだよ。悪いけど、先に休ませてもらうぜ」


 手をひらひらさせながら店を出て行った。


「ガールですって」

「レディじゃないって言われてるのよ。全く、いつもいつも一言多い駄犬だわ」


 上機嫌な穂波に対し、ヴィルは不愉快さを隠そうとしない。だが、その表情はどこか楽し気にも見える。


「まあ、いいじゃないか。それよりも、早速楽しい女子会を始めようじゃないか」


 そう言いながら、それぞれのグラスに新しいツイカを注ぐメアリー。


「そうね。じゃあ……」


 ヴィルが新しいグラスを掲げる。


「新しい友に、乾杯」

「乾杯」


 軽くグラスを合わせ、中身を飲み干す三人。

 ヴィルは楽しげに笑うと、メアリーにさらなるお代わりを要求しつつ、穂波に話し始めるよう促した。


「えーっと、そうですねぇ……」


 転生の神との出会いを思い出しながら話し始める穂波。

 不治の病に侵されている幼馴染を助けようと『おねリン』という企画に乗った事。

 その『おねリン』の異世界ガチャの力で転生してきた事。

 穂波は順を追って話しているつもりだったが、酔っているせいか、合間合間に二人からの質問が入るせいか、随分と話は取っ散らかってしまっていた。

 気が付けば二人に乗せられて、自分の事だけではなく結希子や京平、聖の事まで、随分と話してしまった気がする。

 その上、グラスには絶え間なくツイカが注がれ続け、ヴィルが挑戦的な瞳を向けて来るのだ。呑まない訳にはいかない。

 かつてない程の深酒にいつしか穂波の意識は途切れ、気が付けば眠ってしまっていた。




 そんな穂波が意識を取り戻したのはベッドの上だった。

 状況が掴めない穂波の耳に微かな歌声が届く。

 痛む頭を押さえながら声の方に目を向けた穂波は、窓辺に佇むヴィルを見つけた。鼻歌交じりにグラスを傾けている。


「あ……」


 穂波が起きた事に気付いたヴィルは、軽くグラスを振ってみせた。中の琥珀色の液体が煌めく。

 そのまま起き上がろうとした穂波だったが、アルコールの力には勝てず意識が沈んでいく。穏やかなヴィルの笑顔に見送られ、再び眠ってしまった。

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