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あやしい神ほどよく喋る 2

「何にせよ、問題はガチャだな」


 京平の呟きと同時に、タイミングよく呼び鈴が鳴り出した。

 曲は昨日と同じく蛍の光だ。

 無言で玄関へと向かう京平。

 扉を開けると満面の笑みを浮かべた神が立っている。


「おはようございます。今日も絶好の転生日和ですね」


 和やかに話しかけてきた神に、京平は冷たく言い放った。


「チェンジ」

「はっ?」


 困惑する神に、さらに言い募る京平。


「だから、チェンジだって言ってんだよ。八百万もいるんだから、他にも転生司ってる神の一柱位いるだろ?その神と変われって言ってんだよ」

「何を仰います、京平さん。転生なんてものを司っているのは、日本広しと言えどもわたくしただ一柱!オンリーワン!」


 大仰なポーズをとる転生の神。


「まあ、こんな色物が他にいても困るか……」


 諦めたように京平が扉を開けると、神がいそいそと入って来る。


「では、失礼いたしまして……さ、今日も靴を履くことを忘れずに異世界ガチャと参りましょうか。いよいよ、今日から仮転生の本番ですよ」


 挨拶もそこそこに、テンション高くまくしたてる。


「おや、聖さんも既においでとは。やる気十分ですね」

「おう、やるぜ!目指せ、ケモ耳!」


 つられたように聖のテンションも高くなる。


「お、ケモ耳!いいですねぇ。そんな世界をどんどんと引いちゃってくださいよ」


 一人冷静な京平は、無の境地で二人のやり取りを眺めていた。ここまで来たら、もはやなるようにしかならない。


「それでは、早速第一回の仮転生のガチャとなる訳ですが……せっかくなので、お二人とも同じ世界に行ってみませんか?」

「えっ?そんな事出来るのか」


 チュートリアルで聞いてない、と言わんばかりの京平の表情。


「勿論ですとも。この『おねがいリンカーネーション』、通称『おねリン』は恋人や夫婦、親子、はたまた禁断の兄弟姉妹まで、二人以上での御利用も想定しています。そこで登場するのが、このアベックガチャ!こちらを回していただきますと、なんと、皆様で同じ世界に転生していただけるのです!これが一回たったの五百転生石!」

「課金アイテムかよ」


 そういう事ならチュートリアルで説明されなくても不思議はない。


「課金の案内はちゃんとするんだな」


 京平の皮肉を神は平然と受け流している。


「だいたい何だよアベックって。マジでお前はいつの時代を生きてんだよ」

「だから、令和ですって」


 神はまるで動じない。


「後、あれだ。『おねリン』って、いきなりおねショタみたいな単語を放り込んでくるなよ」

「えっ?可愛い響きじゃないですか。『おねがいリンカーネーション』略して『おねリン』。何度でも口に出したくなる可愛さ『おねリン』」


 そう言って神は何度も『おねリン』を繰り返す。


「あー、もう、分かった。うるせーから、少し静かにしてくれ」


 うんざりした京平にそう言われた神は、それでも小声で『おねりん』の連呼を続ける。『おねがいリンカーネーション』の時と同様、満足の行くイントネーションが見つからないらしい。


「まあまあ、『おねがいリンカーネーション』でも『おねリン』でもどっちでもいいじゃん。今はアベックガチャを回すかどうかだろ?とりあえず、チュートリアルの時の詫び石あるんだからさ、やってみない?」


 転生に前のめりな聖に訊かれ、京平は少し考えこむ。チュートリアルでの体たらくを考えると、まずは一緒に転生して協力し合う方がいいかもしれない。


「やるか、アベックガチャ」

「あっりがとうございまっす!」


 京平の返事を聞くや否や、あっさり『おねリン』の連呼を止め手帳に何やら書き込んだ神は、テキパキと動き二人を部屋の中央に立たせる。


「はい、準備は出来ましたか?靴、履きましたか?大丈夫ですか?それでは参りましょう!転生先に願いを込めて。レッツ、異世界アベックガチャ!」


 チュートリアルの時とは違う掛け声に、当然合わせる事の出来ない聖達。三人はお互いがお互いを呆れたように見つめあった。


「ダメじゃないですか、ちゃんと合わせてくれないと。昨日やった事、もう忘れてしまったんですか?」

「昨日の通りやったじゃねぇか。変わるんなら変わるって先に言っとけよ」


 たちまち始まる京平と神の低レベルの諍い。


「だからアベックガチャって言ったじゃないですか。ちょっとは頭使って、臨機応変にやってくださいよ」

「アベックだろうが何だろうが、異世界ガチャは異世界ガチャだろ。そっちこそ臨機応変に転生させろよ」

「まあまあまあまあ。今回はどっちもどっちという事でさ、次はお互い気を付けたらいいじゃん」


 早く異世界に行きたい聖が二人の間に割って入った。


「まあ、聖さんがそう仰るならそれで構いませんけども……」


 二人は不承不承という感じながらも口論を収める。


「それでは、気を取り直して参りましょう。異世界アベックガチャ、ですよ。宜しいですか?」


 聖はワクワク、京平はうんざり、と言った表情で頷く。


「それでは参りましょう!レッツ、異世界アベックガチャ!」


 昨日と同じく、掛け声と共に二人の姿はかき消すように消えてしまった。

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