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キャベ7

 いざ祝福を!

 と意気込んではいましたが、着いてみるとその荘厳で神聖な雰囲気に飲まれてしまいます。


「オーラがありますね!」

「精霊殿だからな」

「何か別次元の様に凄いです!」

「気に入って貰えたら連れてきた甲斐があるよ」


 少し透明感のある石なのか宝石なのかわからない見た目。アレクが言うにはクオーツと呼ばれる精霊が宿りやすい石が多く含まれているとの事です。


「精霊ってどんな姿なのですか?」

「難しい質問だな。形は様々で祝福を受けた者同士であれば見るか感じる事が出来る。トーマなんかはかなりハッキリ見えるとの事だ」


 確かに彼は目がいいと言っていました。すると噂をしていたからなのかトーマの声が聞こえた様な気がします。


「隊長ー!」

「トーマか、丁度お前の話をしていた所だ」

「俺のすか? それよりその子だれなんですか? もしかして隊長の彼女すか?」

「よくみてみろ、お前も会った事があるだろう」


 するとトーマはジロジロとわたしの方を見ると驚いた顔になる。


「あーっ、キャベ子さん!」

「ちょっとトーマ、どこで聞いたの!」

「あのあと農園でボアの話をしていたら、カトレシアさんって言うとみんな『ああ、キャベ子さん?』って返して来たんすよ! だからその方がいいかもって」


 するとアレクは不満気にトーマの首に腕を回しました。


「おい、ちょっと馴れ馴れしすぎやしないか?」

「それを言うなら隊長は連れ回していたらしいじゃないすか。色んな所で噂になってますよ?」

「私のはお詫びの意味を込めてだ!」


 実力はさておき、口ではトーマの方が一枚上手の様です。口では勝てないと察したのかアレクは表情を硬くしています。


「それよりトーマ。野盗の件はどうだった?」

「あの件は結構大物みたいっすよ。ヴァン・フレデリック、伝説の盗賊の三代目はかなりヤバいって話ですね……」

「ヴァン・フレデリックか。また厄介な奴が出てきたものだ」

「まぁ、うちの騎士団なら問題ないっすよ」

「それもそうだが、油断は禁物だな」


 そう言うとトーマは精霊殿を見上げ、階段を登り始めるとすぐに足を止めます。


「あれ? 入らないんすか?」

「なぜお前も一緒に入る気なんだよ」

「いいじゃないすか? キャベ子さんにも精霊付くかも知れないし、俺がいた方がいいでしょ?」


 トーマは精霊が見えるからと言う事でしょうか。アレクも不服そうにしながらも納得した様子でわたしの手を取り階段を登り始めました。


「隊長はいいんすか?」

「何がだ?」

「キャベ子さん貰わなくて」

「な、なぜそうなるのだ」

「だって隊長と普通に話せる女の子はもう現れないっすよ?」

「しかしなぁ……彼女にも意思があるだろう」

「はぁ。クロマライト家も隊長の代で終わりかぁ」

「そんな話、屋敷では絶対するなよ?」


 二人の関係は思っていた物と少し違いました。上司と部下というよりは先輩と後輩と言った様な仲のいい雰囲気で少し親近感が湧きます。


「おっ、今日は聖女さんいるみたいですね!」

「お前その感じでよく最上位クラスの祝福を受けられたものだな……」

「精霊も気軽に話せる奴が欲しいんすよ!」


 精霊殿の奥には外の光が差し込んでいる祭壇がありました。その真ん中に立たれている方がどうやら聖女と呼ばれる方の様です。


「綺麗な人……」

「聖女様はやはりオーラが違います」

「それだけじゃないのがあの人の面白い所っすけどね!」


 アレクは近づいていくと膝を付き頭を下げる。すると落ち着いた声でいいます。


「聖女様、祈りを捧げに参りました」

「はいっ!」


 予想外の明るい返事。神聖な雰囲気からは想像も出来ない位の自然な笑顔です。


「お元気でしたか? 精霊さんも元気にはしゃいでて相変わらずかわいいです」


 そう言って何かを掴む素振りを見せる聖女。その姿を見て呆気に取られていると、トーマが腕をつつきました。


「キャベ子さん。衝撃でしょ? あの人結構な精霊マニアなんすよ」

「わたしには精霊が見えないので、危ない人にしか見えません……」

「精霊見えたらもっと危ない人っすよ?」


 トーマにつられて聖女様に近づいてみると、彼女はゆっくりとわたしの形を確かめる様に触れ始めました。


「もしかして目が……」

「いえ、見えてますよ? ただ普通の人より多くの物が見えるので確かめてます!」

「あ、そうなのですね」

「うん、この子は祝福を受けられると思う。精霊が好きそうな土の匂いが沢山する」

「まぁ、キャベツ農家なので土の匂いはすると思います……」


 アレクがソワソワしているのが見えましたが、気にせず聖女様に手を引かれるまま祭壇に上がります。


「はーい、この子を祝福したい子はいるかな?」


 彼女の表情がなにかを見つける度に変わっていきます。それはまるで精霊と話している様にも見えて来ました。


「やっぱり君かぁ。うん、それじゃあ聞いてみるねっ! カトレシアさん、緑の子が祝福したいと言ってますがどうですか?」

「いいのですか?」

「はい。祝福を受けると形を現してくれますので、姿はわたしにも見えません」

「なるほど、ではお願いしたいです」


 すると聖女は顔を掴み額に優しく口づけをされました。その瞬間世界の色に一つ新しい色を加えた様な鮮やかさに包まれ周りの精霊が見えるようになりました。


 聖女が大切に抱えている親近感のある子がわたしの精霊でしょうか?


「この子が貴方の精霊です。モフモフはしてませんけど、見た感じ可愛い……キャベツですねっ!」

「ああ、ツルツルしたキャベツだな」

「まごう事なくデフォルメキャベツっすね」

「いやいや、見た目は親しみがあるのだけどみんなの精霊と違いすぎないですか!?」

魔法は精霊の力を借りて発動しますね!


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