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キャベ4

「なぜ急に現れたんだ……」


 騎士様達は馬車と魔物の間に入るように、並びます。それでもボアは一向に引く気配を見せません。


「トーマは戦わないのですか?」

「ああ、俺はこっち!」


 そう言って指をパチンと鳴らすと小さな光が森の中に飛んで行きます。まるで小さな鳥の様なそれには何か意味があるのかも知れません。


「今のはなんですか?」

「伝令を送ったんすよ。俺、索敵と伝令が仕事なのでね! 通信兵って奴です」

「通りで他の騎士よりも軽装なわけですね」

「正解! でも俺はそれだけじゃないっすけどね」


 もしかしたらトーマは意外とすごい人なのかも知れないと思いました。雰囲気がラフなせいか、後輩感のある彼は魔物に向かい的確に指示を出していきます。


「こんな時に隊長がいれば……」

「アレク様はそんなにすごい方なのですか?」

「もちろんっすよ。だけどあの人、自分がどれだけ凄いか気付いて無いんすよね。まぁ、それが魅力でもありますけどね!」


 トーマの指示で、馬車に魔物が近づく事は無い様に見えます。ですが最初に感じた視線の様な物が常に向けられている様な気がしていました。


「あの、変な事いう様なんですけど」

「どうかしましたか?」

「どう見てもあいつ、カトレシアさん狙っているみたいなんですよね」

「やっぱりそう思います?」


 彼をそれを感じていた様で、確信に変わりました。この魔物は……


「キャベツ好きなんじゃ無いすかね?」

「ええっ!?」

「だって、昨日の奴もキャベツ畑に突っ込んで行きましたし……」

「それはちょっと」


 キャベツを好きと言ってくれるのはいいのですが、魔物に好かれるのは嬉しい様な、悲しい様な気分です。


「それが分かれば、手はあります」


 そう言うと騎士達を分け、馬車の前に立ち塞がりました。


「俺の実力見てて下さい!」


 すると両手から二つの魔法陣が浮かび上がり、弓を射る様に魔物に向けると突進してくるボアに解き放つとトーマの目の前で勢いが止まり息絶えたのがわかりました。


「すごい……」

「ふぅ。一発しか使えないんで、避けられたらどうしようかと思いましたよ!」


 屈託の無い笑顔でわたしを見るトーマは、キラキラとしてどこか可愛い弟の様に見えます。だけど流石は騎士と言った様に威勢のいい言葉を掛ける姿が様になっていました。


「これでお昼までには、街に着けそうっすね!」

「ありがとうございます」


 お礼を言うと少し照れたように、「林道を抜けるまでは付いていきます」と、畏まった物言いで警護を続けてくれました。


「ここまで来れば大丈夫っすね。まぁ、ターゲットは倒しているので必要無かったかも知れないですけど……」

「こんな所まですみません」

「いえいえ、隊長に会ったら宜しく言っておいて下さい。トーマに助けて貰ったって言って貰えれば俺の株も爆上がりなんで!」

「わかりました。ちゃんと伝えておきますね!」


 トーマ達と別れ、関門を抜けると小さな民家の立ち並ぶ街道に差し掛かります。色々な職人達が住むこの辺りは中心地に向かうに連れ栄えていきます。


「あのよぉ。嬢ちゃんは何者なんだい?」

「わたしはただのキャベツ農家です」

「いや、さっきの彼は閃光の騎士トーマ・ブレゲだっただろう?」


 閃光の騎士。わたしの一つ年下の彼は若干十四歳で騎士になったと言われる天才だったのです。


「トーマって閃光の騎士だったのですか!」

「ボアを倒した時に確信したよ。あれが有名な閃光、最上級魔法のライトニングボルトだよ」


 とんでもない魔法だとは思いましたが、本当にとんでもない魔法でした。そうとは知らずに気軽に呼び捨てしていただなんて……。ですが、隊長と呼ばれ一目置かれていたアレク様は一体何者なのでしょうか。英雄の孫で名家なのは知っていますが、二つ名の有る騎士以上となると何かしらの名前や呼び名があるのかも知れません。


 わたしはキャベツ農家で居るためにも、ペンダントの事は特定の人以外に知られてはならないと思いそっと胸を押さえていました。



 街に着くと、馬車を降りてアレク様の家に向かいます。細かい場所は聞いてはいなかったのですが、名家であるクロマライト家のお屋敷。貴族の住むエリアの上の方だと言うのは分かります。


 しかし、貴族街に差し掛かると田舎者のこの服は浮いている様で気になります。とはいえ、これでもキャベツを売る時に着る営業用の一張羅なのでこれ以上の服はありません。


 ところで気にせず屋敷に向かっているのですが、それで良かったのでしょうか? いまさらながら迎えに来て貰えば良かったと後悔し始めました。


「失礼、カトレシア様で宜しいですか?」

「はい。そうですけど」

「アレク様の執事でございます、話は聞いておりますのでご案内させて頂きます」


 声をかけて来た身なりの整った初老の男性は、執事なのだと言う。屋敷の使用人みたいなものなのかと感心していると、すぐ近くの建物に案内されました。


「お屋敷って思っていたより小さい……それでも庶民の家よりは断然大きいのだけど」

「カトレシア様、ここは屋敷ではございません。アレク様より来賓の準備をと伺っておりますので」


 執事の返事と共に何者かが後ろから抱きついて来ます。


「ぎゃっ!」

「うーん、ちょーっと細いわねぇ……」


 化粧の濃い派手なマダムはそう言うとわたしの身体を揉む様に触り始めてしまいました。

とりあえず街に行って賠償して貰わないと破産してしまいます( ; ; )


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