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キャベ3

 夜が明けて日が登り出した頃に目を覚まします。そうです、農家の朝は早いのです。


 顔を洗い、身支度を整えると家を出る事にします。ですが、今日は畑には向かいません。なぜなら畑はこんがりと焼けすぎたキャベツだらけになってしまったからです。


 改めて憂鬱な気分の朝ですが、落ち込んでばかりもいられないのでしっかりと補償してもらう為にアレク様のいる街に手続きをしに出かけましょう。


「キャベ子ちゃん、昨日は災難だったねぇ」

「もう最悪です!」

「困った事があればいつでもおいで、少しなら人参を分けてあげれるから」

「ありがとうございます!」


 噂が回るのは早いもので、近所の農家の人は畑が焼けたのを知っている様でした。もしかしたらアレク様が持ち主を探す為に聞いて回っていたからなのかも知れません。


 街迄は馬車で一時間ほど。普段キャベツを売りに行く際に借りる馬小屋で、乗合の馬車が出ています。


「こんにちは!」

「キャベ子ちゃん、今日はお出かけかい?」

「ちょっと街に用事が出来たので行ってきます」

「おっ? 珍しいねぇ」

「はい、珍しい用事なのです」


 わざわざ補償してもらう為とはいいません。馬小屋の人に無駄な心配をかけるわけにはいきませんから。


 昨日、アレク様が迎えに来ると言われましたが、貴族の方とこの道を過ごすのは想像しただけで疲れるので断りました。わたしにはまったりと心地よい風に吹かれながら農園を抜け、少しずつ変わる街並みを堪能出来る方が合っています。


 しばらく走ると宿木が付いた木々が並ぶ林に入ります。この林道を抜けるとポツポツと民家が現れ、次第に大きな街に変わっていくのです。


 しかし、馬車が止まりました。


「うーん……」

「御者さん、何かあったのですか?」


 すると彼は困った顔で、道の先に視線を送りゆっくりと首を振ります。


「ああ、騎士の方々が……」


 道を塞ぐ様に鎧の騎士が立っています。別に嫌がらせをしているわけではなく、この先で野党や魔物が出ており対応しているとの合図です。


「しばらくは通れなさそうですね……」

「困ったねぇ、お嬢ちゃんは急いでいるのかい?」

「いえ、別に急いではいないのでお昼までに着けば問題ありません」


 隣にいたお婆さんも、慣れていると言った様子で荷物のなかから手作りのお菓子、エショデを取り出しました。


「一つたべるかい?」

「はい、ありがとうございます!」


 小麦粉と塩で出来たソレは小腹が空いた時にはピッタリのお菓子です。少し喉が渇くのが難点ですが水を持ってきているので問題ありません。


 まったりお婆さんとおやつタイムをしていると、どうやら騎士様がこちらに向かって来ています。通行止めが終わったのだとホッとしていると馬車の隣まで来ました。


「街に行くのか?」

「ええ、ファームからの定期便でして」

「最近潜り込んで来た魔物の残りなのだが、林の中に隠れてしまってな……少し時間がかかりそうなのだ」

「困りましたな」


 御者は頭を抱え、客席をチラリと見ました。


「そこで提案なのだが、我々が林道を抜けるまで着いて行くというのはどうだ?」

「そうしていただけるとありがたいですが、」

「ただ、魔物が出てこないとは限らないのでな。安全に行くなら討伐を待つしか無いのだが、いつまでかかるかは分からない」


 御者は客席に向かい尋ねます。騎士様に警護して貰いながら抜けるか、安全が確保されるまで待つか。時間に余裕がある者も警護があるという事で前者を選ぶと警護の騎士が来るのを待ち林道を抜ける事になりました。


 普段あまり見る事のない騎士様の仕事に、関心していると、前の方から騎乗した騎士が三名やって来ます。警護をしてくれる騎士様なのだとわかり安心したところで一人の方がわたしを見つめます。


「じーっ……」

「どうかされましたか?」


 一目惚れというのは突然起こります。恋をするまでは身分の差など関係ないのです。


「そのペンダントを持っているという事はカトレシアさんですか?」

「ペンダント……どうしてわたしが持っていると分かったのです?」


 無くさない様に付けてはいるものの、服で隠れている。外からは見えるはずがないそれに気づいたのが不思議でした。


「俺、目がいいんですよ」

「目がいいとかのレベルじゃ無い様な気がしますけど……」

「騎士は基本的に魔力が見れます、アレク隊長のペンダントには微力ですが魔力が流れているんです」

「なるほど……そうだったのですね」

「今日は隊長いないですけど、一応魔物を見つけるのは得意なんで、安心してください!」


 アレク様はわたしの件で家に帰っているのだろうかと考えます。街に着けばわかる事だとあまり気にしない事にしました。


 騎士様は馬車に並ぶ様に走ります。客車の隣に先ほどの方が並ぶと気を許しているのか気さくに話しかけて来ました。


「思っていたよりかわいい感じすね。あ、俺トーマっていいます」

「トーマ様は……」

「いえいえ、トーマでいいっすよ。もしかしたらもしかするかも知れないっすからね!」


 トーマが言っている意味はよくわかりませんが、気になる事がありました。


「思っていたよりもかわいいとはなんです?」

「あ、いや。隊長がペンダント渡す様な人なんでもっとお姉様って感じの人かと思ってたんですよ」


 トーマはペンダントを渡した経緯を知らないのかも知れない。そのせいで何やら誤解をしているのだろうと思います。


「多分、何か誤解をされているかも知れないです」

「誤解? それは無いっすよ。だって……」


 そこまで言うとトーマは急に林の中をじっと見つめ始めます。


「二時の方向から来ます……止まって下さい!」


 急に止まると、トーマが言った場所からガサゴソと次第に大きな音にかわり馬車と同じ位の大きさのボアが顔を出しました。


 そして、なぜかその魔物はわたしを見ているようなそんな気がしてなりません。

今のところ聖女要素ありませんね……これからそのあたりも少しづつ出てきます!


ところでですが……


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