キャベ27
「もう、私じゃなかったら危なかったわ!」
「せ、聖女様?」
「何? 私に何か付いてる?」
彼女に視線を向けると、そこには聖女の服を着た赤い鱗を纏う龍人の姿がありました。
「聖女様の姿が……」
「えっ、ちょっと何これ!」
「何が起こっているんですか?」
「わからない、だけど、貴女の魔法は回復系なのだと思う……だけどどうすれば元に戻れるの?」
「いや、わたしに聞かれてもわからないです」
聖女様が言うには、とんでもない量の回復をした事で龍人の姿が現れてしまった可能性が高いとの事だ。
「ねぇ……この姿可愛い?」
「えっと、可愛い龍……ですね」
「やっぱりダメだよね。こんなので聖女だと言われても帰っちゃうよね!?」
「……はい、帰りますね」
「あーん、どうしよう。来週人前にでる仕事があるのに、それまでに治るかなぁ」
「ごめんなさい」
「カトレシアは悪くないわ、私が油断していただけだもの。だけど、元に戻れないのはヤバいわね」
なんとも言えない罪悪感に、出来る限りの事はしてみようと思います。
だべさん……彼女を戻す事は出来ないの?
(今の姿が本来の龍人の姿だべよ)
じゃあどうすれば戻るの?
(彼女の体力が減れば戻るかも知れないべね。知らんけど……)
くぅ……頼りにならない精霊ね!
(そんな事言われても困るべよ……)
だべさんはしょんぼりとして、少し拗ねてしまいました。体力が減るというのは、ダメージが要るという事でしょうか?
「聖女様、体力を使うと元に戻れるかもしれません。ランニングしましょう!」
「こんな姿で外には出れないよぅ」
「確かに……夜にします?」
「ルミノールの怪談話になっちゃうよぅ」
確かに。『夜歩く龍の魔物』みたいな事になりかねませんね……。
「あの……ちょっとわたしには荷が重いので、相談してもいいですか?」
「私は?」
「ここで待っていて貰えませんか?」
そう言うと彼女は不服な顔を浮かべる。しかし仕方のない事と悟ったのか、小さく「早くしてね」とだけ言いました。
精霊殿を出るとわたしは急いで解決出来そうな人を探します。きっと彼女を疲れさせる事が出来るであろう人を考え、着いた先はアレクのお屋敷でした。
「すみません!」
「おや、貴女は……アレク様の」
「カトレシアです。アレクさんに合わせてください!」
「アレク様は今ルミノール伯爵の元に行かれていますが、何かお急ぎの用でもありましたかな?」
聖女様を助けた後、話す事があったのかも知れません。ですがわたしには待っているほどの余裕はないので、ルミノール伯爵の屋敷の場所を聞きそちらへ走る事にしました。
マリスは先に帰っているでしょうか。
彼女の事が気になりながらも、出来るだけ早く精霊殿へ帰れる様にしなくてはなりません。
屋敷に着くとすぐに執事の方が出てきました。
「すみません、ルミノール伯爵に会わせて下さい」
「申し訳ありません。ただ今伯爵は大事な会議の最中でして、アポイントは取られてますか?」
「いえ……ですが急ぎなんです!」
「申し訳ありません」
丁寧な対応。ですが、庶民の姿に疑いの視線を感じます。このまま居ても会えないと思い、近くを回る事にしました。
「どうしよう、こんな事をしていても」
同じ場所を走り回っているだけで、何も解決策はありません。
「ちょっと君……」
「はい」
「ここは貴族街だ。何をしている」
「あの、知り合いに用がありまして」
警備兵に声をかけられてしまいました。捕まったりしてしまうと余計に時間が無くなります。
「すみません、市街に戻ります!」
咄嗟に捕まるのだけは避けようと、その場で一番無難な言葉を並べます。
「そうか。それならば……」
「では、」
「ちょっと待て。お前、どこかで見たことがあるな……」
「そうですかね、市街にはよく来ているのでそこでじゃないですかね?」
「いや……あ、あの『閃光の騎士』の思い人ではないか!」
あのコンテスト。まさか警備兵まで見ていたとは驚きです。
「はい……そうですけど」
「なんだ、もっと早く言って貰えれば案内もしたと言うのに。トーマ様に会いに行くのだろう? まぁ立場上あの場では断るしかないからなぁ」
警備兵はニコニコとしながらトーマの家に案内するからと付いてくる様にいいます。
「貴族街は我々庶民は警備でも無い限りあまりくる事はないからな」
「そうですね……」
「だが、『閃光の騎士』とはいえ、志願兵出だから子爵なのだ、この辺りは男爵以上の爵位の家だから覚えておくといい」
彼は本当に案内してくれる様だ。しばらく降った先に少しお金持ちが住んでいそうな家の前で止まりました。
「ここが、トーマ様の家だ。お礼は警備兵が案内してくれたと言って貰えるだけで充分だ」
「は、はぁ」
「宜しくやれよ!」
彼はきっと何か勘違いしている。そもそもトーマはアレクへの当てつけでわたしに告白したのです。ですが、一刻を争うわたしはトーマと会えるだけでも充分でした。
「すみませーん」
声をかけても返事がありません。もしかしてトーマも居ないのでしょうか?
「すみませーん!」
声を張り、叫ぶと中から扉を開ける音がしました。
「誰?」
「トーマ?」
「えっ、なんでカトレシア?」
シャワーを浴びた後の様な、ラフな格好にタオルという姿でトーマは現れました。
話はどんどん進みます!
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