キャベ26
街に戻る途中、わたしは精霊の話を聖女様に聞く事が出来ました。彼女曰く大分拗ねてしまっているのだと言います。
「魔法がまだ発現していない以上、呼び出す機会が無いのは仕方ないかも知れませんね」
「やはり遅いのでしょうか?」
「うーん……どうしてでしょう?」
本来ならもう発現していてもおかしくは無いとの事です。
「街に戻ったら練習しちゃいます? 私が引き合わせたのでちょっとその子に聞いてみたいと思っていますけど?」
「よろしいのですか?」
「はい、これも私の仕事ですから!」
聖女様直々に教えて頂けるとの事で、わたしは練習というのが楽しみになりました。ですが、マリスと合流すると、聖女様の雰囲気が少し変わった事に気が付きます。
「カトレシア、無事でよかったわぁ〜」
「心配かけてごめんなさい」
「そちらは? もしかして聖女様かしら?」
「はい」
すると聖女様はペコリとお辞儀します。
「あの、コンテストの……」
「やだ、恥ずかしいわぁ」
「あなたも精霊を持っているのね! それもかなり大事にされているのですね」
「この子には大分助けられているのよ」
すると聖女様はパリルの方をじっと見つめています。パリルもそれに気づくと少し後退りしました。
「……フェンリル」
「聖女様は直ぐにわかるのね。この子はフェンリルの血を引く獣人よ」
「懐かしい……」
まるで昔の友達に会うかの様な聖女様とは違い、パリルは異常なほどに怯えている様に見えます。
「あなた、龍人に会った事はないのね?」
「なんなんだよっ!」
「怖がらなくていいわ、わたしも似たようなものだから……」
フェンリルと龍の関係はいい伝えとかでも聞いた事が無いので分かりません。
「パリルはほとんど人に育てられたの、だから賢獣フェンリルの知識はないわ」
「それで怯えているのね」
「それにしても、聖女様が龍人だったとはね」
聖女様は人差し指を口に当て、マリスに微笑みます。それまでの無邪気な印象とは違い少し怖いとすら思えます。
「パリルさん、もし何か困った事があれば私を尋ねるといいわ。今はわからないかも知れないのだけど……」
すると彼女は飽きたのか、練習に行こうとわたしの手を引きました。
「マリスは先に戻ってて!」
「あまり遅くならない様にするのよ?」
「はーい!」
それから精霊殿に着くと、普段の無邪気な彼女の雰囲気が戻ります。
「手を貸して?」
「こ、こうですか? って熱っ! なにするんですか!」
「刻印?」
「ちょっと疑問系なのが怖いんですけど……」
すると手のひらに緑色の光で魔法陣が浮かび上がりました。この感じは以前トーマが魔法を使う時に出てきた物と似ています。
「はい、その刻印をじっと見つめて光れーって念じてみて!」
「光れーっ!」
「別に声には出さなくていいよ?」
「はぁ、そうですか」
「ダメダメ、もっと念じて!」
わたしはその光りを見つめて念じると、少し明るくなっている様な気がします。ジリジリと熱を帯び掌が火傷するのではないかというほどに熱くなっているのが分かります。
「すごい魔力量ね。発現しないのは身体が耐えられないからセーブされているのね!」
「耐えられないってどういう事です?」
「そのまま念じていると手が消し飛んじゃうよ?」
「ちょっと、もっと早く言ってもらっていいですか?」
聖女様は回復系だからあまり怪我とか気にしないのでしょうか。ですが、治して貰えるとはいえ痛いのは嫌です。
「さっきの感じでその子と話したいとその光に祈るの!」
「手は無くならないですよね?」
「大丈夫、その子が受け取ってくれるはず……うん、多分……」
「多分!?」
それって受け取って貰えないとダメな奴では?
(心配せんでもちゃんと受け取るべよ)
「今の声なに?」
(君の精霊だべよ?)
「そうだべか……」
「ちゃんと話せたみたいね! 良かったぁ」
「聖女様。なんとなくですけど、失敗を想定してませんでした?」
目線を逸らして誤魔化しているので、多分間違いないでしょう。
「その刻印から光が出ている間は話せるから、どんな魔法か聞いたら発現したのと同じ事になるよ!」
「そういう事ですか!」
むむむ……。
(どうかしたべか?)
「えっと、あなたはどんな魔法ですか?」
(精霊だべよ?)
「そうですけど、どんな魔法が使えるのです?」
(なんでも出来るべよ?)
「なんでも?」
(緑の光を出したりとか、緑の光を出したりとか色々な事が出来るべよ?)
「ああ……緑の光を出すだけなのですね」
(なんかガッカリしてないべか?)
「そ、そんな事はないべよ!」
聖女様はフフフと笑うと、「見つかりましたか?」と尋ねました。
「とりあえず、緑の光が出せるみたいですね!」
「あら! すごい!」
「すごいのですか?」
「うんうん、精霊さんに話しかけて出してみて?」
えっと、だべさんだべさん……
(だべさんって僕の事だべか?)
まぁ、そうですね。
(そうだべか……)
あ、緑の光を出したいです!
(あー、緑の光だべね。どこにだすべ?)
えっとその辺に?
(その辺!? まぁ、龍人さんだから多分大丈夫だべね)
??
その瞬間、紋章から大きな魔法陣が飛び出し、緑の光が溢れ出しました。
「えっ、なにこれ!」
「ちょ、ちょっとカトレシアさん止めて!」
緑の光は聖女様に当たると破裂し、精霊殿のなかではものすごい勢いで爆風が噴きました。
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