キャベ23
周りは鎮まり帰り、視線はわたしの方を向いたままです。この静寂がとても長い様に思えてきます。
普通に考えてみると、トーマは将来有望な騎士団の隊長。それに成り上がりの貴族でもあるわけです。どう考えてもこんなチャンスは二度とこないかも知れません。
「あ、いや……」
葛藤してます。
気が許せる相手でもあるし、とても優しい事も理解しています。
ですが……今わたしがOKしてしまうと農園はどうなるのでしょうか。マリスや子供達は?
貴族の妻の立場を使い援助する事も出来るかも知れません。それでも納得してもらえるでしょうか。
トーマの顔が少しづつ不安そうになっていくのがわかりました。
「迷うならやめておけ。焦る必要も無いだろう」
会場にアレクの声が響き渡りました。
正直わたしはその言葉にホッとしました。
「隊長、なんでとめるんすか?」
「お前たちはまだ若すぎる。カトレシアもやりたい事もあるのだと考えてやれ」
畳み掛ける様にいいます。ですがトーマは納得がいかない様子で言い返しました。
「俺に先越されたからっすよね?」
「なんの事だ?」
「いつもそうだ。隊長が気に入らない時は上手く纏めようとするのは分かってんすよ」
「俺はただ、カトレシアが困っているからだな」
「もういいですよ……」
そう言って、トーマはわたしの方に歩いて来ました。やはり答えを待っているのでしょうか。
「キャベ子さんの気持ちだけは知りたいです」
「わ、わたしは。今は色々やらなきゃいけない事もあるし、別にトーマの事が嫌いな訳じゃなくて。いきなりだったから心の準備も出来ていないといいますか……」
「そうっすよね。農園も再開したばかりっすもんね……じゃあ俺、待ちます」
「はい?」
「彼女からでも、友達からでもどこからでも構わないんでちょっと俺の事意識してくれないっすか?」
「……はい」
まさかトーマが真剣に思ってくれているとは思いませんでした。そもそもわたしの事を好きになるタイミングなどあったでしょうか?
まだ、キャベツも食べてもらって無いですし。
そして、少し煮え切らないままコンテストは終わります。マリスも満足そうに報酬を貰ったようすでいつもの彼女に戻っていました。
波乱はあったものの、一段落つきました。ただ、少しだけトーマの事が分かった様な気がして意識しない様にしても意識してしまいます。彼も気を遣っているのか、普段とは違い少し離れたところから小さく手を振るだけでした。
しかし帰りの馬車に乗ろうとした時、アレクが慌ててこちらに走って来ました。
トーマの言葉が気になっていた手前、アレクにも告白されてしまうのではと考えた矢先、彼は思いもしなかった事を口にします。
「カトレシア、聖女様を見なかったか?」
「いや、見てないですけど……どうかしたのですか?」
「コンテストが終わってから居ないんだ」
「精霊殿に帰られたのではないですか?」
「いや、戻ってはいないらしい。もし見かけたらおしえてくれ!」
アレクはそう言うと、他の騎士にも声をかけ一緒に探す様に促しています。わたしも御者さんに時間を聞いてからマリスに相談する事にしました。
「ねぇマリス。わたしも一緒に探してもいいかな? なんなら子供達と先に帰っててくれても構わないですけど……」
「あたしも探すわよ。最悪宿を取る事もできるのでしょう?」
「それは大丈夫ですけど、いいのですか?」
子供達も疲れている事もあり、きっと彼女は先に帰りたいと思っているはず。だからと言うわけではないですが、手伝ってもらう事になりました。
「ただ、探すと言っても当て無く探しても仕方ないわね……行きそうな場所とかはないの?」
「聖女様は……以前会った時は路地裏に居ましたけど……」
「なにそれ、聖女様はそんなにおてんばなわけ?」
「自由な人では有りますね」
だけど、マリスが言う様にそんな彼女を無作為に探しても仕方がない。精霊と話せたらまだわかりやすいのだけど。
ふとわたしはトーマが話せないかと思います。だけど今彼に頼るのは気が引けます。ですがそれとこれは別、わたしはそっと彼に近づきます。
「あ、あの」
「ああ、聖女様の事っすよね。さっきから精霊が伝えようとしてる事はわかるんすけど……」
「こんな時だけごめんなさい」
「出来るだけカッコいい所見せるっすよ!」
彼は不器用に笑うと、キョロキョロと周りを見ています。
「あの人よく行方不明になるからなぁ……」
場所が分かるなにかがあればいいのに。そう考えていた時にふとミルルを思い出しました。
「そうだ、分かるかも知れない!」
「マジっすか?」
「うん、ちょっと待ってね」
わたしはミルルに駆け寄るとすぐ様聞いてみる事にしました。
「ミルル、聖女様の場所はわかる?」
「あの神獣のひと!」
「そう、場所まではわからないかな?」
「わかるよ。だけど……」
「だけど?」
「あっちの貴族街の方なの」
するとトーマはミルルの頭を撫でて、優しく尋ねました。
「ありがとう。俺が居れば気にしなくてもいいか、一緒に着いて来てもらえないかな?」
ミルルはコクリと頷き、わたしたちはトーマと一緒に行く事になりました。
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