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キャベ19

 突然のトーマの声に、何かあったのではないかと慌ててドアを開けました。しかし、目の前には鎧では無く騎士服を着ています。


「久しぶり、急にどうしたの?」

「ちょっと用事があったんすよ!」


 あれからそれほど経ってはいないとはいえ、少し懐かしい気分になります。彼を中に入れると、トーマは周りを見渡しました。


「結構な大所帯っすね。でも楽しくやってるみたいで良かったっすよ」

「みんな頑張ってくれてるよ。街の方はどうなの、結構大変だったんじゃない?」

「こっちも結構いい感じっすよ」


 トーマは、街での出来事を話してくれました。ヴァン達は思った以上の実力で、アレク直属の部隊になったのだとか。訓練が厳しいと嘆いているとの事。


 技術者のお爺さん達も街の技術に感銘を受け、それまでの知識を使いお互いに研鑽出来る環境になっているそうです。


「みんな上手くやっているみたいで安心だわ。あたし達もじゃがいもを育て始めたのよ」

「マリスさんも実力者なのに勿体ないっすね」

「あたしはこっちの方が合っているのよ。それで、今日はそれだけじゃ無いんでしょ?」


 するとトーマは恥ずかしそうに頭を掻いています。マリスが言う様に別に用事があったのでしょうか。


「実は──」

「どういう事よ! 『イケメンコンテスト』なんてあたしが出るわけないじゃ無い!」

「マリスさん頼みますよ、俺には思いつくのが貴方しか居なかったんすよ!」


 トーマは躊躇う事無くマリスに土下座している。そもそも『オネェコンテスト』ならともかく『イケメンコンテスト』でマリスを選ぶとかトーマは何を考えているのでしょう。


「そもそもどうしてマリスさんに? ヴァンさんとか居るし、トーマが出たらいいじゃ無いですか!」

「部隊毎に連れて来ないといけないんすよ。ヴァンさんは違う部隊ですし、あの人が出るとなると俺じゃ絶対勝てないと思うんすよね」

「それでなんであたしなのよ!」


 確かにカリスマ性のあるヴァンが出るならトーマでは厳しい気もします。だからと言ってマリスが出るのは……。


「いや、マリスさん女装しなければかなりのイケメンだと俺の目が言ってます」

「目が言ってるって酷い理由ね」

「そうでもないですよ。トーマの目は分析に特化した魔眼みたいなものらしいので」

「カトレシアまで何言い出すのよ!」


 しかし、子供達も見てみたいのか期待の眼差しを向けキラキラしています。確かにオネェとしても体格以外のクオリティがかなり高い彼女が男性の格好を、しているのは見てみたい気がしました。


「もう……仕方ないわね。それで、報酬は? まさかタダであたしを男装させる気じゃないわよね?」


 するとトーマはニヤリと笑みを浮かべ三本の指を突き出しました。


「一流の職人が作る風呂、キッチン、そして優勝した暁には白金貨二十枚でどうでしょう!?」

「よし、乗ったわ!」

「やったー! これで優勝間違いなしっすよ!」


 ただのコンテストにしては大盤振る舞いなのが気になりますが、トーマは一応貴族。これくらいの報酬は妥当なのかも知れません。


「それで、あたしが優勝したら、あんたにはなんのメリットがあるのよ?」

「うっ……」

「お金を貰える位じゃそこまでするとは思えないのよね?」

「えっと、うちの部隊の待遇が変わるのと……」

「変わるのと?」

「俺が昇格します……」

「昇格したらなにがあるの?」


 トーマは冷や汗をかきながら目を逸らします。


「何があるの?」

「……結婚出来る様になります」

「あれ? 結婚出来なかったの?」

「騎士は二十歳までは出来ないんです。ですが、次上がれば幹部クラスなのでその縛りはなくなるんです……」

「なるほど。早く結婚したい意中の人がいるわけね、納得してあげるわ」

「まぁ、まだOK貰えるかはわからないんすけど」


 相手が居たら死亡フラグになりかねない内容なのだけど、まだ付き合ってもいないのであれば、それはそれで大丈夫だと思います。


「それはともかく、マリスさん一度着てみないっすか?」

「これ貴族の正装じゃない、これを着るの?」

「個性はもう充分すぎるくらい有るっすから、正統派で攻めてみるのがいいと思ったんすよ」


 なるほど。確かに下手に衣装を着させるよりは素材の良さを引き出す方が良さそうです。


「ちょっと奥で着替えてくるわ」

「おっ、着替えてのお楽しみっすね!」


 多分マリスはトーマの前で着替える事を恥ずかしがっているだけだと思います。依頼をなんだかんだで受けたのもトーマだかりではないでしょうか。


 マリスの着替えは思っていた以上に長く、慣れない服に手こずっているのでしょうか。それとも納得がいかないのでしょうか。


「出来たわよ……」


 そう呟き、ゆっくりと歩いて来ます。

 丁度明かりが足元から順に照らされて細く長い足にピッタリの青く装飾されたタキシード。顔を表すと息を飲みました。


「ど、どうかしら……?」

「マ、マリス様、イケメン過ぎます」

「思ってた以上の逸材っすね」

「ねえねカッコいい!」


 普段のアイメイクやルージュは無く、短い髪に力強い眼差し。鼻筋の通った小さな頭はとてつもないオーラを放っています。


「これは街の女の子達は放ってはおかないっすよ」

「それ、素性知ったら絶望しない?」

実はイケメソ。


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