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キャベ17

 彼の髪の色が少しずつ明るく変わっていきます。次第に銀色になり、大きな犬の姿に変わっていきました。


「えっ、ええー!!」

「秘密にしていてごめんなさいね。パリルにはフェンリルの血が混ざっているの」

「フェンリルってあの?」

「そう、神獣よ」

「だけど、すごく苦しそうなんですけど」

「彼はまだ、その力をコントロール出来てはいないの。だから神獣の力が強くなる夜になるとこうして暴走しちゃうのよ」


 マリスが付いてきた理由はこれだったのです。彼が暴走するのを止めるために監視役として付いてきたのでしょう。


「マリスには止められるの?」

「止められる訳ないじゃない。あたしが出来るのはいざという時に拘束する程度、彼を止めるのはあの子達の仕事よ」


 そう言うと、彼女はミルルとリリムに視線を送りました。まだ少し眠そうなリリムは彼に近づくとそのモフモフの毛をゆっくりと撫でます。


「怖くない、怖くない」


 すると、完全なフェンリルの姿になったパリルは落ち着いた様に寝そべりました。それはまるで大きな犬を慰める少女の様に二人はそのまま眠りについています。


「ミルルとリリム。特にリリムは神獣に支える巫女の継承を受けた末裔なの。彼女達がいる限りよほどの事が無ければ暴走する事はないわ」

「なるほど……ですが、大きな犬になってしまいましたね」

「朝になれば元に戻るわ。まぁ、お昼のうちはある程度制御は出来るみたいなのよね」


 いつのまにか、神獣までも一緒に暮らす事になってしまいましたが、わたしは害獣対策の番犬としては優秀なのではと気楽に考えました。


「リリムはそのまま寝るみたいだから、あたし達も準備しようかしらね」


 そう言って、荷物から毛布をいくつか出すと、わたしの家の隅に場所を確保します。その窮屈そうな見た目に、ベッドや家の改築も考えないといけないと思うのでした。



 次の日の朝、自分の家に帰って来たはずが、家の中では普段とは違う騒がしい声が聞こえています。


「ミルル、ちょっとコレ運んで頂戴!」

「はーい!」


 何やらいい匂いがしたかと思うと、小さな木のテーブルにはスープとパン、そして切り刻まれたキャベツが並んでいます。


「あら、あんたも起きたなら手伝ってよ!」

「わたしですか?」

「他に誰がいるのよっ!」


 どこから出したのか、マリスはフリルの付いたエプロン姿で手際良く料理しています。


「本当、あたしが来て正解ね。規則正しい生活をしないとお肌にも悪いわよ?」

「うう……はい」


 見た目以外はまさにお母さんの様です。小さい頃から母が居ないわたしは、むしろこの姿も正解なのではと勘違いしてしまうほどです。


「こんな材料どこから……」

「もちろん持って来たのよ? パンととうもろこし、じゃがいもや調味料もあるわ」

「それはみんなの食料ではないのですか?」

「今頃普通にご飯たべてるわよ。なんせ向こうには貴族様が付いているんだから!」


 確かにアレクやトーマがご飯を出さないとは思えません。きっともっと豪華なご飯なのでしょうと考えると、これくらい食べてもいいかなと思いました。


「それで、今日はどうするの?」

「畑が放ったままなので、とりあえず見に行きます。その後は、必需品でも買いに行きましょうか!」


 マリスは満足そうに頷くと、またどこからか子供達の服を引っ張り出し、着替える様に促しました。


 彼女はもしかして生活担当?

 長い事世話をして来ているのか、手際の良さに驚いてしまいます。


 まだ、耳の出たままのパリルにフードを被せるとわたしたちは畑に向かいます。畑に着くとすっかり冷えてはいたものの灰になったキャベツや炭化してしまったキャベツが目につきます。


「これは……中々ひどいわね」

「はい」


 頭では許しているものの、悲しさは残ったままです。以前見た時は気づきませんでしたが、角の方に逃れたキャベツが幾つか見つかり慌てて収穫しておきました。


「あの隊長、本気を出せばここまで出来るのね。あたし達は実力を見誤っていたかも知れないわね」


 マリスは少し思い悩んだ顔をしてそう言いました。きっとヴァン達の事を心配しているのだと思い、あの時何食わぬ顔で明るく振る舞っていた彼女も大きな決断を迫られていたのだと感じました。


 黒焦げになった畑をどうしようかと考えながら、農園の近くのお店に必需品を買いに行きます。お店と言っても不要な物を売り買いしている広場でフリーマーケットみたいな物なので野菜などの交換なども行っています。


「あら〜今日から引っ越してきましたの。この子達共々よろしくして頂戴ねぇ」

「これまた変わった兄ちゃん、いや姉ちゃんかい?    可愛らしい子供達もいるみたいだし、困った事があれば気軽に言ってくれよ」

「親切にどーもー!」


 マリスはあっさりと、広場の人達に溶け込んで行きます。 毛布や椅子、木のお皿なども買い揃えていきます。少しお金に余裕があるからか勢いよく購入した物を持って来たリュックに詰めていきます。


「今日はこのくらいあれば充分ね」

「本当にいいの?」

「わたしが言い出した事なので、気にしないでください!」

「……でも」

「食料提供してもらったり、ご飯も作って頂いているので、今日はわたしに甘えて下さい!」

「……そう言うなら、甘えようかしらね」


 そう言って帰路に着くと、わたしはまた農園の前で足を止めます。少し気持ちが整理できて来たのか少しだけ前向きなイメージが湧いて来ました。


 ムギュッ……。

アクセスはそれなりにあるので読んで頂いていると信じてます( ; ; )


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