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キャベ16

 合計四人。とりあえず今のお金なら問題はありません。それに農園を再開出来れば裕福では無いものの大きくなるまで食べて行くのはどうにかなると考えました。


「何か心配そうね?」

「いえ、とりあえずはなんとかなります」

「そんなにあなたの農園は大きいの?」

「キャベツをちゃんと育てれば一家族は問題ないとおもいますけど……」

「長期的にみてどうかと言う事ね」


 するとマリスは口元に手を当ててニッコリと笑みを浮かべるとわたしの目線まで腰を落とします。


「だからあたしが要るんじゃない?」

「マリスさんが?」

「時間が有るなら、なんでも出来るわよ?」


 どんな能力かはわからないですが、彼は精霊の能力を持っています。もしかしたら何か策があるのかも知れません。


「ところであなたの精霊はどんな魔法なの?」

「それが、最近祝福を受けたばかりで……」

「あら。発現前なのね、そしたら発現したら収入になる事は増えるわけね」


 確かに、能力によってはお金を稼ぐ事に役立つものもあります。そうでなくても小銭位は稼ぐ事が出来ると聞いていました。


「ちなみにあたしは……バフよ」

「バフ?」

「簡単に言えば、強化したりする魔法なのだけど治癒を早めたりはできるわ」

「治癒って聖女様と同じですか?」

「そんなに凄いものじゃないの。自身の治癒力を高めるだけだからあくまで応急処置程度ね。そもそもあたしは隠密活動専門なのよ」


 マリスが言うには、直接戦うなら自分より強いのは何人か居るとの事です。それを聞いてわたしは彼……彼女が、志願兵を断った理由が分かりました。


「カトレシア、話はついた様だな。こちらも実力はある程度理解した」

「色々聞いて貰って、ありがとうございます」

「礼を言うのは私の方だ。貴女のお陰で色々と解決する事が出来たのだ」


 わたしはこれでアレクとはお別れになるのだと思い少し寂しくなりました。元々は畑が焼けなければ会う事も叶わない様な身分差のある人。きっと次に会ったとしても挨拶位しか出来ないのだろうとおもいます。


「もし良ければなのだが……」

「どうかしたんですか?」

「また、会いに行っても良いか?」

「わたしは構いませんけど、農園は遠いですよ? 次来るなんてまた魔物が……まさかまた?」

「もちろん、魔物はもう入らない様にはして行くつもりだ。そうでなくともカトレシアに会いに行こうと言う話だ」


 そう言って顔を赤らめているアレクは、さっきまでテキパキと仕事をこなしていたとは思えないギャップがあった。


「ま、マリスは女性には興味はないんすか?」

「あら、どうしてそんな事聞くのかしら? トーマちゃんはタイプではあるわよ?」

「俺じゃなくて……」


 トーマは気まずい雰囲気でチラチラとアレクを見る。


「そう言う事ね。安心して、あたしは小娘には興味はないわ。ただ、農家の彼女が貴方達と対等に話している事には興味あるわね」

「これは、農園が燃えてしまったからで……」

「まあまあ、俺も近くに行ったら寄るっすよ!」

「うん、また来てね! 市場に来る時は声かけるから!」


 わたしはアレクとトーマに別れを告げると四人を連れて馬車に乗り、久しぶりの我が家へ向かう事にしました。


「あんた、玉の輿ねらえるんじゃないの?」

「だけどわたしは農家でアレクは貴族ですよ。そんな事考えいるわけ無いですよ」

「あの隊長さんも報われないわね」


 マリスは意味深な事を呟くと、眠りについた子供達を眺め優しい笑みを浮かべているのがわかりました。



 日が沈みかけた頃、ようやく農園が見えて来ました。たった数日でしたが、遠くに見える山々と地平線が懐かしく思えてきます。


 子供達を下ろすと、マリスはちゃんと挨拶する様に促しました。


「俺は、パリルです。よろしくお願いします」

「ミルルはミルルだよ、こっちが妹のリリム」

「リリーです。よろしくです」


 パリルとミルルは十二歳、リリムは七歳との事らしい。マリスの年は教えてはくれませんでしたが、二十歳は超えていると思いました。


「あんた、一人暮らしなわけ?」

「まぁ、そうですけど。見た感じ十六.七歳に見えるのだけど?」

「十七歳なので合ってますよ?十三歳の時から一人で住んでますので」


 それを聞いて悟ったのか、マリスは肩をポンポン叩くと「お姉ちゃんとよんでいいわよ」と、声を掛けてくれました。しかしその後で小さく「ごめんなさいね……」と呟いた事が気になりましたが、過去を聞いてしまった事なのだと思っていました。


 しかし、食料置き場でいくつかの野菜を手にしていると、完全に日が沈み空が真っ暗になると異変は起き始めました。


「今日はキャベツのスープです!」


 おかしいです。本来なら美味しいキャベツを使ったスープに拍手喝采が起きてもおかしくはありません。ですがそんな歓喜の雄叫びは少しも聞こえる事が無く、目の前にはうずくまり苦しそうなパリルの姿がありました。


「パリル? どうかしたの?」

「ううっ……」

「体調でも悪いの?」


 そう尋ねた瞬間、マリスが慌てた様子で普段は絶対に出すことが無いと思われる程の野太い声で叫びました。


「いますぐ離れてっ!」


 その瞬間、パリルの頭から大きな三角形の耳が飛び出して来たのです。


「もしかして……パリルは獣人なの?」

農園編……


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