キャベ15
思いつきで提案してみたものの、実現までの道のりは短くはありません。とりあえずは翌日今後の事を話し合うために集まる事となりました。
なぜ後日なのかというと、ヴァン達をあくまで移住者として迎えるため、正規の手続きをしてもらう必要があったからです。
つまりは、野盗のヴァン・フレデリックという事は隠し、移民のヴァンとその仲間たちとして街に来てもらうというものでした。
ふと、流れに従ってしまいましたがわたしが帰る日はさりげなく伸びてしまいました。
ヴァン達のためなので仕方ありません。
ですが、アレクのお屋敷に何日も泊まってしまうと帰った時に悲しくなりそうなので、今回は普段お世話になっている宿屋に泊まりました。
安心して眠れる硬いマットとずっしりとしたお布団はしっかりと現実に帰して頂けます。
実際は泊まれていないのも、今となってはありがたい事かも知れません。
街に出て待ち合わせ場所に向かうと、既にヴァン達は集まっていました。マリスを含め屈強な戦士達が十名、いい歳のお爺さんとお婆さんで五名、若い少年と少女が一名づつ、小さな女の子が一人の合計十八名が勢揃いです!
するとヴァンとマリスが近づいて来ます。
「おう、キャベツの姉ちゃん。昨日はありがとな」
「まさかあなたがまとめてくれるとは思っていなかったわよ!」
「いえ、思いついた事を言っただけで、まさか本当にこうなるとは思っていませんでした」
ヴァンの仲間達も気さくな人が多く、それぞれお礼の言葉を頂けました。そんな中、三人の子供達は恥ずかしそうにしています。
「あら、可愛いですね!」
「か、頭が言ったからだからな!」
「はいはい」
「ミルルは感謝してます、キャベツのお姉さんのお陰で家に住めるって聞いたので……」
「家には住めると思うけど、」
「お姉ちゃん、おねがいしますぅ」
「きゃわわ。こんなかわいい子も居たんですね!」
それぞれ挨拶を交わした頃、騎士服を見に纏ったアレクとトーマが現れました。
「カトレシア、付き合って貰ってすまないな」
「いえいえ、わたしがいい出した事ですから」
「聞いたっすよ、一気に話を纏めたらしいじゃ無いっすか! だてにキャベツ作ってないすよね!」
キャベツは関係ないと思いますが、キャベツ農家だから出来た提案でもあるのでそのあたりは触れないでおこうと思います。
「それでは行こうか!」
アレクの一声で一行は役所に向かいました。移住の手続きをして、それぞれがどこに行くのかを決めるのが取り急ぎしなければならない事だそうです。
「移民手続きって何をするのですか?」
「簡単に言えば戸籍作りっすかね。元々家柄がはっきりしている貴族と違って領民という証明がないっすからね」
「わたしそんな事した事無いですけど」
「名前と職業、あとは住む所を登録するだけだよ。土地が有ればそれも記録されてるんすよ」
「なるほど。それで毎年役人が来るのですね」
「うちは税率が低い分、そのあたりはしっかりしているからね」
改めてルミノール領の仕組みには驚かされるばかりです。父も移住した際にこの様な手続きを行なっていたのだろうと思いました。
「とりあえずは、どうするか決めておかないとな」
「志願兵は俺含め九名がなるよ」
「なるほど、もう決めているのだな」
「ちょっと待って、九名って……」
数えてみるとやはり兵士になりそうなのは一、ニ、三、四……。
「あたしは志願兵にはならないわよ?」
「えっ、そうなのですか?」
「当たり前じゃない。弟や妹達と別れるなんて考えられないわっ」
一度マリスの方をじっと見てから三人の子供達に目をやります。
「なによ?」
「いや、似てないなと……」
「血は繋がってはいないけど、弟と妹達なのっ!」
とりあえずはそういう事らしい。しかし、精霊が使える片割れが志願兵にならないというのはいいのだろうかとも思います。
「マリスの心は女性だからな」
「ヴァンがそういうなら……」
アレクもあまり気にしてはいない様子で、志願兵希望者に説明を始めました。
「志願兵と言っても階級制だ。だが、心配しないでくれ、どの階級になろうとお前たちはヴァンの部隊に入る事になる」
「頭、かたじけないっす」
「いや、俺たちは軍隊になる。その呼び方はやめてくれ!」
アレクはヴァンの実力を知っている事もあり、部隊長にする事を前提に話を付けているらしい。こうして志願兵の流れは決まったのですが、残りの人達は不安そうにわたしを見ていた。
「みなさんには、キャベツ農家を手伝ってもらおうと思ってます……」
と、説明しようとするとトーマが口を挟んだ。
「それなんすけど、九人もキャベ子さんに任せるのはちょっと違うとおもうんすよね」
「そしたらどうすれば?」
「俺も考えたんすけど、それぞれの特技を生かした形で決められたらなと思うんすよ」
トーマがそう言うと、老齢の人達はいいました。
「儂は元々職人でな……」
「私は裁縫には自信があります」
「うん。この街にもそれらの技術が欲しい人はいるから、この人達は俺が手配するっすよ!」
元々職人の家系で育ったトーマには知り合いがいるのだと言う。わたしも折角なのでその言葉に甘える事にしました。
……残ったのはマリスと、子供達ですね。
とりあえずマリスの顔をチラチラと見て、これからの話をしようと思いました。
またまた誤字報告ありがとうございます!
ストーリーは、ここでまさかのヒーローと別れてしまいます!
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