キャベ12
誘拐されて半日が過ぎました。
ヴァンとマリスは時々部下に指示を出す様に外に出ます。拘束はされていませんが、出る事は難しいと思いました。
「はい、あんたもお腹空いたでしょ?」
「ありがとうございます……これ何ですか?」
「コーンのスープよ。ちゃんと塩も入っているわよ?」
その黄色のスープを口に運ぶと、ほのかに甘さのある美味しいスープです。
「美味しい……」
「ヴァンの村の名産品よ? 美味しいに決まっているじゃない?」
「あ、お金払います。いくらですか?」
「いいわよそんなの。あんた状況理解してるの?」
野盗とはいえ、別にわたしをどうこうするつもりは無い様子で、どこか安心していました。ですが確かに監禁されています。農園の事とかを考えるとある程度気がすんだら帰してくれないかと思っていました。
「これからどうするつもりなのですか?」
「ヴァンは貴女を人質にルミノール伯爵と交渉する予定よ」
「交渉って、わたし伯爵とは面識ありませんけど」
「面識ないって、そろそろ観念しなさいよ!」
マリスは未だにわたしを聖女だと思っている様で、農家だという事を信じてはいません。かと言って聖女様が龍族だと言うわけにもいきません。
一体どうすれば信じて貰えるのでしょうか?
「伯爵はどの様な方なのですか?」
「ルミノール伯爵のこと? 彼が頭がいいと言うのは領地をみてるとわかるわね」
「そうなのですか?」
「そうよ。私たちも急に来たわけじゃないし、潜伏していた仲間もいるわ」
「そんなに前から来ていたのですね」
マリスはため息を吐くと、机に腰を掛けた。
「ルミノールが最初なわけじゃないのよ。この国の色々な所で交渉しようとして来たわ。でも結果は武力での解決ばかり……」
「それじゃ被害を受けるだけじゃないですか!」
「そうね。ヴァンがいなければ間違いなく壊滅していたわね」
やはり、精霊を使える彼が鍵になっているのかも知れません。
「魔法が使えても騎士と戦うのは難しいのではないですか?」
「大群か幹部クラスでも無い限りヴァンに勝てる人はいないわよ? 彼をただ祝福を受けた人と考えているならそれは間違いね」
すると部屋にヴァンが帰ってくるのが見えた。
「おい、どこまで話す気なんだよ?」
「おかえり♡だってこの子が……」
「悪い奴では無いとは思うが、味方なわけじゃねぇ。油断して仲間が死んだらどうする気だ?」
「貴方がいるじゃない?」
「その俺が無駄に危険を増やすなって言ってんだ」
ピリピリした空気にもマリスは気にする様子は無くそのままヴァンに話を続けた。
「それで、交渉はどうなったの?」
「ルミノール伯曰く、そいつは本当に聖女では無いらしい」
「え、ダメだったの?」
「いや、領地のルールを守るなら移住や食糧の支援をするとの事だ」
「どうして? ルミノール伯爵には脅しは通じないのでしょう?」
「ああ、通じないさ、ただの善意だ。しかし条件は二つある」
まさかルミノール伯爵はわたしのために要求を飲んだと言うのでしょうか?
「条件ってなんなのよ?」
「一つは、人質が無事である事」
「元々そのつもりだし、支援を貰えるなら問題はないわ。それでもう一つは?」
「アレク・クロマライトとの和解だ……」
アレク?
この事は伯爵まで届いていたの?
「ルミノール最強の騎士ね……昨晩もヴァンをあっさり止めていたわね」
「ああ、まともにやって勝てる相手では無い。しかし、聖女で無いならこいつはなんなんだ?」
「だからキャベツ農家だって言ってますけど?」
「ただの農家を人質にして、何で騎士のトップが直々に動いてくるんだよ。来賓扱いになるくらいには地位があるんだよな?」
それは、わたしにもわからなかった。
アレクが助けてくれるとは考えていたものの、知り合いだからというレベルでは無いと思うのです。
「さて、見つかるのは時間の問題だ。どうしたものか……」
ヴァンは椅子にすわると頭を抱えた。アレクが名家なのは知っている、だけどまさかルミノール最強の騎士がアレクだったのは予想外でした。
ですが、彼がここを見つけるのに時間はかかりませんでした。
「クソっ、来ちまった様だな」
「どうしてわかるの?」
「ヴァンは、精霊の気配が分かるの。貴女を聖女だと思って疑わなかったのは、その髪飾りの精霊の魔力が原因よ」
通りで話を聞こうとしなかった訳です。わたしに精霊が付いていると確信していたからこそ、誤解が解けなかったのだとこの時初めて理解しました。
「それで、どうするの?」
「とりあえず、お前を連れて出る。そうすればいきなりやられる事は無いだろう」
ヴァンは、交渉に持ち込む事が出来ればチャンスが有ると考えているのでしょうか。わたし自身アレクがどの様な対応をしようとしているのかは全く検討がつきません。
きっと彼なら最善を目指すに違いない。そう、思いました。
ヴァンはわたしを盾にするように外に出ます。周りは夕方で予想していた通り木々が茂る森の中。時間的にもどのくらい離れているのかはわからないでいました。
「カトレシア! 無事か? 何かされたりはしていないか?」
「はい、大丈夫です!」
「ヴァン・フレデリック、なぜこの様な事を!」
アレクは、見た事もない形相でヴァンの顔を睨みつけました。
誤字報告ありがとうございます!
アレクが助けに来てくれましたが、どうやらヴァンもそんなに悪い人ではなさそうです。
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