キャベ11
「隊長、すぐに援護します!」
トーマはそう言ってわたしを持ち上げると、離れた場所に下ろしました。
「キャベ子さん、ちょっと隊長を援護してくる」
「誰なのです? 大丈夫なのですか?」
「わからないです、だけどさっきの様子からして多分狙われているのは俺っすね……すぐに隊長に来てもらいますから、じっとしてて下さいね」
トーマが向かいます。彼を狙う理由が何かわかりません。もしかしたら、平民出で天才のトーマに嫉妬している人が居ると言う事でしょうか?
アレクも隊長という事もあり、素人目にも明らかに優勢で押している様に見えます。
「はい♡ 捕まえたっ!」
そう声がした瞬間、わたしの背後から声がすると口を塞がれます。慌てて払おうとしても全く歯が立たず、アレクが叫んだ声が少しづつ遠のいて行くのがわかりました。
あれ?
もしかしてわたしは、かなり危険な状況なのではないでしょうか?
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どのくらい気を失っていたのでしょうか。気がつくと、手足が縛られており床の上で転がっています。
腐葉土の様な土の匂いから、森や山に連れてこられて来たのだとわかりました。
「あら? お目覚め?」
目の前には、バンダナをした目つきが鋭い男と、垂れ目で髪の長い中世的な男。その二人が明かりの前に座っているのが見えます。
「よう、聖女さん」
「ちょっとヴァン、聖女様にはちゃんと様をつけなきゃダメよ?」
ヴァン?
どこかで聞いた事があります。それよりも、なぜこの二人は聖女と呼んでいるのでしょうか?
「俺は、ヴァン・フレデリック。……といえば状況はわかるだろ?」
「全然わからないのですが?」
「おいマリス。ちゃんと説明しとけよ」
マリスと呼ばれる中世的な男が近づいて来ます。彼は甘ったるい声で耳元で囁きます。
「あたし達は『フレデリック一味』と言えばわかるかしら? 盗賊みたいな物ね」
「なんとなくわかりますが、なぜわたしを?」
「それは貴方がルミノール領の聖女だからに決まっているじゃ無い?」
「いえ、違いますよ。わたしはただのキャベツ農家ですけど……」
「隠しても無駄よ? その綺麗な服、クロマライト家の客人、何よりその髪飾りが証拠ね」
確かにアレクに貰った服と客人としての扱いはただの農家と言うには無理があると思います。それにこのコサージュは聖女様が付けていたもので間違いはないので……つまりは勘違いされていました。
「これには色々な事情があるのですが……」
痺れを切らしたのかヴァンと呼ばれる男がこちらに来ると顎を掴まれ顔を向けさせられます。
「つべこべ言ってんじゃねぇよ。野盗とか言われているけどな、俺たちは民衆の意志なんだ。だから、てめぇの存在が邪魔なんだよ」
「だからわたしは!」
「聖女さん、あんたの境遇には同情してんだ。だから大人しく従っててくんねぇか?」
睨まれて目線を逸らすと、ぶら下がっているピアスが光るのが見えます。見た事のあるその光は……
「精霊持ち……」
「流石は聖女さんだな」
「という事は祝福を受けているのですか?」
「ああ。だが、俺は下民だからな、精霊殿など頼っちゃいない。自分の力でた」
精霊殿を使わず得られる物なのでしょうか。しかし彼に精霊が付いている以上、嘘をついているとは思えません。
「苦労なさったのですね……」
そう言うと、彼は少し驚いた様な表情を見せます。それから少しニヤリと笑うとマリスにわたしの縄を解く様に言いました。
「あんたは、飯が食えなかった俺が精霊殿に来たら中に入れていたか?」
「聖女では無いので入れれませんが、家に来られたならキャベツくらいは出しますよ?」
「だから何でキャベツなんだよ」
「わたしはキャベツ農家ですので。ですが、ルミノールの聖女様は中に入れていたと思います」
きっとそう。あの方なら笑顔で迎え入れているのが目に浮かびます。
「ルミノールはそうらしいな」
「なぜこんな事を?」
「アスタリアは……この王国はそうじゃ無い。既得権益の塊だ。貴族以外は街に入る事すら許されず、龍族から授かった力を体制を維持する為だけに使っている」
「それで、あなたがそれを壊そうと?」
「別に俺たちはパンが食えれはそれでいい。だが奴等はその権利すら奪おうとしているんだ」
農家のわたしにはよくわかりませんが、王国にトラブルがある様な事をアレクとトーマが言っていました。だから騎士が外に出ているのだと。
「パンでしたら、欲しいと言えばいいじゃないですか? ですが、タダというのは難しいです。わたしでいえばキャベツと交換とか、売ったお金で買うとかですね。奪うのは良くないです!」
「小麦、じゃがいも、とうもろこし……俺の村の農作物だ」
「それなら……」
「出来たものの九割は税金でもってかれちまう。その中で、しまいには空気を吸う事すら税を取るといい出してんだ」
「そんな、まさか!」
ルミノールにも税はありましたが、三割程度。それも不作などの時には減税されたり、わたしの様に事故に遭うと補償されたりもします。
「だから、力のある俺や仲間がこの状況を変えなければならねぇんだ」
その言葉にわたしはヴァンを責める事が出来なくなっていました。アレクやトーマは助けに来てくれるのでしょうか。助けに来てくれたとして、彼等をどうするのかが心配でならなくなっていました。
実は理由があったのです。
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