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キャベ1

 小さな頃からキャベツ農家でした。

 そうですね、キャベツというのは薄い緑色した生でも蒸しても焼いても食べられる野菜。これがなかなか美味しいのです。


 とはいえ、毎日キャベツばかり食べる訳にもいきません。育てたキャベツは交換したり売ったりして他の食材や生活用品に変えて生活しているのです。


「キャベ子ちゃん、今日も頑張ってるねぇ」

「いい天気ですからねー、また人参と交換してくださいねー!」


 わたしにはカトレシアと言う両親に付けて貰った可愛い名前があるのですが、キャベツ農家をしているせいか街の皆さんは【キャベ子】と呼びます。親しみがあってわかりやすいのでそれなりに気に入ってもいるのです。


「雑草も綺麗にとれたかなっ」


 畑の雑草をとり、ちゃんと育っているかを確認。傷んでいたり形の悪い物は間引きして自分のご飯にしちゃいます。見た目が悪くても味は問題ないので安く売るくらいなら美味しく頂こうというのが育てた者の親心という物ではないでしょうか?


 この日も二つ自分用にキャベツを取り、日が沈む前に家に帰ります。この世界には魔法があったり、魔物もいるらしいのですが、このルミノール伯爵領ではしっかりとした体制が作られているので、安全にほのぼのの暮らせています。


 そしてこれがわたしの家。

 木造の庭付きの一軒家と言うと響きはいいのですが、ただのキャベツ農家が高級な家など持っている分けもなくこのあたりで極々普通で少しちいさめのお家です。


「ただいまー」


 はい。誰もいません。

 だけどとりあえず言っておかないと、家に帰って来た実感が湧かないので言ってみます。プライベートと切り替えるジンクスみたいな物ですね。


「今日は、美味しいスープにしようかな!」


 取れたてのキャベツと保存していたベーコンをとっておきの胡椒と塩で味付けして煮ます。キャベツもベーコンもいい出汁がでるので充分美味しくいただけます。


「いただきまーす! うん、美味しい」


 やはり自分で育てたキャベツは絶品ですね。ご飯を食べ終わる頃には流石に暗くなっているので、ランプを灯し、明日の支度を始めます。寝巻きに着替えるついでに身体をしっかり拭いたら後は夢の中へ飛び込むだけで一日が終わります。


 トントン……。


 いえいえ、一日が終わります。


 トントン……。


 乙女は寝巻き姿など晒しません。


 ドンドン!


 わかりましたよ! 出ればいいんでしょっ!


「はーい! ちょっと待ってくださいね!」


 慌てて服を被り、手櫛で簡単に髪をとかしてドアの前に立つと鍵を開ける前に一言。


「どちら様ですか?」

「すまない、中に入れては貰えないだろうか?」


 少し苦しそうな男の声。歳は同じか少し上くらいかも知れません。ですがここは若い乙女の一人暮らしのお家、簡単には開けるわけにはいかないのです!


「ごめんなさい。知らない方はちょっと……」

「私はルミノールの騎士だ。それでも難しいだろうか?」

「騎士様ですか?」


 本当に騎士様だったとしたら、今後の事も考えて開けるべきなのですが、もしかしたら悪い人の罠かも知れません。


「何か証拠はありますか?」

「証拠……紋章の入った剣ならある」

「剣って、それで脅されたら大変な目に逢っちゃうじゃないですか!」

「くっ……ならどうすれば!」

「ルミノール騎士の軍歌を歌って下さい」

「軍歌だと? わ、わかった……我ら〜が、騎士の〜」

「あ、もういいです」


 軍歌を知っている者は少ない。わたしも知らないのですが、迷いなく歌えるのなら本当と信じてあげなければこんな農家の家の前で歌わされた騎士様に後でなんと言われるかわかりません。


 鍵を開け、恐る恐るドアを開けてみます。


「ありがとう、助かっ……」


 バタン。


「おい、何故閉めるんだ!」

「すみません、思っていたより大きな騎士様でしたので……」


 再びドアを開け、ちょっとサイズ感がおかしな騎士様を中に入れると、椅子が壊れそうなのでキャベツを入れる木箱に座らせ水をだすと、兜の下からはやけに整った男前のフェイスが現れました。


「すまない。だが、助かった」

「それで、騎士様が何故この家に?」

「領地内に入り込んだボアを討伐していてな」

「それで怪我を……」

「いや、討伐したばかりで疲れてはいるが怪我はしていない」


 余計に意味がわかりません。

 水を貰いに来たわけでも無さそうですし、ひょっとして討伐中に見かけたわたしの事が気になってここまで来たのでしょうか?


「名前を伺ってもよいか?」

「キャベ子……いや、カトレシアと申します」

「カトレシア、いい名前だ」

「ありがとうございます」

「それで、カトレシア……心して聞いてくれ」

「……はい」


 水を飲んだからなのか滴る汗と、真剣な表情でわたしをじっと見つめている。ですがわたしにはかわいいキャベツ達がいるのです。騎士様と幸せになるためにあの子達を放ってはおけない!


「私が来た理由なのだが……」


 うんうん。


「魔物討伐の際に畑を焼いてしまってな……」


 うん?


「なんですとー!?」

連載始めました!

久しぶりのファンタジー物です!


もしよろしければ、ブックマークや評価をいただけると励みになります!


⭐︎も気軽に、思うがままにつけて下さい!

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