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間章1 エレク=ラジエル

 エレク=ラジエルは、自室として使っていた広い書斎の窓際に机と椅子を構え、そこで無線に耳を傾けていた。


 どうやら、状況はあまり芳しくない様子。ミーシャ・アスモデウスに逃げられただけでなく、ブラボーが殺られたという報告がエレクの耳にも入ってきている。


「彼女らの逃亡に加担している者の正体と、潜伏場所を大至急特定しろ!」


 エレクは無線越しに怒号を放つ。


「は、はい。しかし、エレク様の繋いでいた糸は断ち切られているのでしょう? どやって探しだしますか?」


 その問いかけに対し、エレクは苛立ち混じりに吐き捨てる。


「そんもん、お前らの足と頭を使うんだよ!」


 そして彼は、返事を待たずに無線機を机の上に投げ捨て

「全く、使えない連中だよ」と愚痴をこぼした。


 するとその時、彼の携帯に一件の着信が入る。


「ッチ……! こんな時に誰だ?」


 そこで、彼はさらに苛立ちを募らせるが、携帯の画面を見ると急に青ざめ出す。


 そして彼は、すぐさま通話へと出た。


「はい……」と電話越しにも関わらず低姿勢な態度を取りながら。


 すると、電話の主は低く、よく通る声で問いかけてきた。


「首尾はどうだ?」


 それに対し、エレクは言葉を詰まらせながら


「ッ……そ、その……まだ、目標の確保は出来ておりませんが、問題はございません。奴らの足取りも直に掴めることでしょうから」と答える。


 だが、電話の主はそれに納得していない様子。


「そうか、問題はないか……。お前に貸し与えた大事な部下を一人殺しておいて、良く言えたな」


 それに対し、エレクは即座に謝罪を延べた。


「も、申し訳ありません。相手を見誤っておりました……」


 しかし、彼はさらに厳しくエレクを責め立ててくる。


「それに、お前は私に言ったよな? 穏便に済ませる、と。その割には、随分と派手にやっている様だが?」


「ッ……たしかに、思ったよりも大事にはなってしまいました。しかし、あなた方の存在が漏れる様な心配は、決してございません!」


 エレクはその件に関しては問題がない事を伝えた。ただ、相手はやけにこの事態を危惧してくる。


「そうか。治安局が捜索に乗り出している現状でも、問題はないのか?」


「……ええ。我々に繋がるような痕跡は全て消し去りました」


 そこで、やっと相手は納得を示してくれた様子。


「そうか。なら、私はまだお前を信用してもよいのだな?」


「はい。これ以上、あなたを失望させるような真似はいたしません」


 エレクは力強くそう言い放った。


 しかし、電話の主は少し声を荒げ

「当然だ。これ以上の失態は許されないぞ。心してかかれ」とエレクに忠告してくる。


 それに対し、エレクは苦い表情を浮かべながらも、

「はい。勿論であります」と返事を返す。


 すると、相手はさらに釘を刺してきた。


「それから、治安局が動きだしたという事は、猶予もないぞ。多少強引にでも目標の確保を急げ。いいな?」


 そして相手は、それだけ言い残し通話を一方的に切ってくる。


 そこで、エレクはため息を漏らしながらも、無線機を手に取った。


「ホテル内の調査にあたっている者へ通達する。目撃者の情報とホテルの監視カメラ映像を全てこちらへ回せ。それと、我々が突入する瞬間の映像は念入りに加工しておくんだ」


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