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第10話:RPGの世界で調査します

田中君のやり方は最悪だった。


修君がしているゲーム名のハッシュタグで、修君の顔写真を拡散するというやり方だ。

確かに一緒にゲームをプレイしていた知り合いから連絡が来る可能性はとても高い。上手く行けば修君からも連絡がくるだろう。

けど、ネットに素顔を拡散するというのは、あまりにもやりすぎだ。


私は田中君の案を却下した。


「じゃあこの声優さんのライブに行こうよ。行けば修くんもいるかも知れないよ」

結衣が楽しそうにCDジャケットを持って私に提案した。

家出をしている少年が、LIVEに行くだろうか?

それに3人では、見つけることができないかも知れない。

私は南の案を却下した。


「じゃあ結衣は何か考えがあるの?」

ここまで二人の案を否定したのだから、何か言わないと流石にマズイ。

修君がやっているゲームは、自由度があることでも有名だ。

どうにかして、コンタクトを取る方法はないだろうか?

私は辺りを見渡し手掛かりになりそうなモノを探した。


「ねぇ田中君。まだ修くんがゲームをしている可能性はあるかな?」

「引きこもるほどのゲーム好きなんだ。ゲームをしてる可能性の方はかなり高い。

調べたところ、データの引き継ぎはできるみたいだからな。それがどうかしたのか?」

「ゲーム内で修君とコンタクトを取る方法が一つあるよ」

私はドヤ顔で二人にノートを見せた。


「随分と上手な絵だね。この絵がどうかしたの?」

私は二人にコンタクトを取る方法を伝えた。


その方法とは、修君が書いたキャラクターデザインでRPGゲームをするという方法だ。

プロットには名前まで書かれている。

見た目と名前が一致していれば、流石にコンタクトしてくるはずだ。


「気づいてくれたら連絡してくるだろうな。

奥本さんからは、息子がキャラクターを書くことが趣味だという話は出てこなかった。

創作物をしていることを伏せていると考えるのが妥当だろう」

「まぁ親にも内緒にしているキャラクターがゲーム内で使われていたら、さすがに焦るだろうからね。私も結衣の意見に賛成かな」

私の意見が採用された。

初めて自分がボランティア部の役に立ったような気がして思わず私は小さくガッツポーズをした。


「部室にあるパソコンではできないだろうな。

このパソコンをデーターの復元をしたいという理由で持って帰るか」

少しやり過ぎているような気はするが、私はとにかく自分の考えを実行したかった。

「そうだね。田中君、奥本さんに許可を貰ってきてよ」

何としてもパソコンを持ち帰る必要がある。

ここは田中君に頼むのが最適だ。


田中君は、ダンボールを持って部屋に入ってきた。

「持って帰って問題ないそうだ。ダンボールに梱包して持って帰るぞ」

「ありがとう田中君」


私達は、梱包したパソコンとキャラクターが描かれたノートを持って家を出た。

奥本さんには、ゲームで知り合った友人自宅に泊まっている可能性が高いこと。

ゲームのデーターを復元できれば、その知り合いを特定できるということを伝えた。

知り合いの自宅に泊まっているということを聞き、奥本さんも安心していた。

後は、ゲーム内で修くんを見つけることができれば問題は解決できるだろう。


私達は部室に戻り、パソコンを机の上に置きゲームを始めることにした。


「今さら聞くことじゃあないんだけどさぁ……この中でゲームが得意な人っているの?」


盲点だった。

ゲームをやり込んでいるプレイヤーの目に触れるためには、同じくらいゲームをやり込む必要がある。

修くんと同じレベルに達するまで、どれぐらいの時間が必要なのだろうか……


「問題ない。このゲームは協力してやることが可能だ。

武器や防具を揃える時間を省いて魔物だけの討伐に専念すれば、すぐに同じステージまでいけるはずだ」

「武器と防具を揃えないと勝てないんじゃあないの?みんな未経験なんでしょ?」

「綾瀬さんノートを貸してくれ」

私は田中君にノートを差し出した。


「見ろ。踊り子のキャラクターが二人いるだろ。踊り子の能力スペックを使って、俺が操作する狂戦士《狂戦士》の攻撃力を上げてくれれば問題ない。」

このゲームは、職業というシステムがあるそうだ。


職業は、勇者や魔法使い、バトルマスターなど様々だ。職業によって、スペックと言われる特殊能力を使用することができる。

私と結衣が使う踊り子のスペックは、ダンスをすることで、他のプレイヤーの攻撃力を上げることが可能だ。


元々攻撃力がある狂戦士の火力があれば、武器を揃えることなくクリアできるというのが田中君の考えだ。


「今調べてるんだけどさぁ。狂戦士って攻撃は得意だけど、防御力は低いらしい。

防具揃えないといけないから意味ないんじゃない?」

南はスマホを触りながら、田中君に質問をした。


「攻撃は当たらなけれ問題ないだろ」

自信満々に田中君は言い切った。

最終的に田中君頼りではあるが、なんとか上手く行きそうだ。


「さっそくキャラクターを作っていこうよ」

「じゃあ俺はいつもの家電洋品店に行ってくる」

そう言い田中君が、椅子から腰を上げた。


「田中。何しに家電用品店にいくの?」

「パソコン一台しかないだろ。3人でやるならパソコンも三台必要だ」

「えっ。そうなの結衣……」


私はてっきりテレビゲームのように一台あれば、みんなでできると勘違いしていた。

パソコンっていくらなんだろう……

このままパソコンを購入するとなると、また10万円以上の費用が掛かってしまう。


「一台は今後のためにも購入しておいて、邪魔にはならない。

問題は、後一台をどうするかだ。二人はパソコンを貸してくれそうな友人はいないのか?」


当然のように手は挙がらなかった。


「篠宮先生に聞いてみるか」

「ゲームをするために、わざわざパソコンを持ってきてくれるのかな?」

「動画サイトでボランティア部の宣伝をしたいから、編集できるだけのスペックがあるパソコンを探していると言ってみたらどうだ?いずれ動画も作れば嘘ではないからな」

「じゃあ、私と結衣で篠宮先生の所に行ってくる」

南は、私の背中を押し部室を出た。


「良かったのかな?田中君一人で買いに行ってもらって……」

「大丈夫でしょ。パソコンのことは、よく分からないしさぁ」

「確かにそうだね。篠宮先生にパソコン貸してもらえるといいね」

パソコンが借りられないとなると、さらに出費が掛かるかも知れない。


私は職員室に入り、篠宮先生に事情を話した。


「高校生は動画の方がよく見るからな。

よし分かった。明日私がパソコンを持ってきてやるよ」

「ありがとうございます」

「いえいえ。前田のことをよろしく頼むよ」

「は、はい」


私が職員室を出て、南にパソコンを借りられたことを話す。

「流石篠宮先生。これで田中がパソコンを買ってこれば解決か」

「そうだね。前から気になってたんだけど、篠宮先生と南って知り合いなの?」

「別に。私先輩と仲が良いから覚えられているんだよそれがどうかしたの?」

「前から気になってただけだよ。田中君が帰ってくるまで、紅茶でも飲んでようよ」


私達が紅茶を飲み終わり、しばらくすると田中君が大きなダンボールを持って帰ってきた。

「それで篠宮先生はどうだった?」

「明日持って来るって。ゲームは明日からだねぇ」

「そうか。俺は明日の準備をするから、帰っても構わんぞ」

「じゃあ、お言葉に甘えて。行こっか結衣」


次の日、放課後のチャイムが鳴り部室に入ると、パソコンが3台綺麗に並んでいた。


「休み時間の間にキャラクターは作っておいた。それじゃあやるか」


私と南はチュートリアルを済ませ、いよいよ調査開始だ。


最後まで読んで頂きありがとうございます。

また明日も投稿するので読んで頂けると幸いです

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