6,助け舟と
やばいやばいやばい、どうしようどうすれば....!!
シュベルトがウチの高校に来る!?嫌だよただでさえ俺はコミュ障なのに...ああそうか!!実技科目含めて全部制限付きの俺ばっか指名しやがって、醜態を晒させる気だ!!おのれシュベルトォ、やり方がセコイぞ。
「のおぉぉぉぉぉぉ」とうめき声を上げながら俺は枕を抱いてベットの上をゴロゴロする。
数分が立ち、ようやく正気を取り戻した俺は取り敢えず、布団から出て、ベッドに胡坐をかいて座り込む。
そして俺はアレと何かあったとしても全員に忘却術を吹っ掛けて俺がやった部分だけを綺麗に消し去ればいいのでは?と、考えるがよくよく考えてみると、そんな綺麗に物事が進むとは限らないので却下した。そうだ、パートナーがいるではないか!!
と、思い立つも、この学校の人間が忘却術を完全にマスターしているはずもなければ、まず忘却術、幻術、幻影体術なんて分野を知っているはずなどないと肩を落とす。確か、エトワールのパートナーはかなり優秀な幻影体術士だったはずだ。くぅぅ、そんな人間何処探せば見つかんだよ!!
あぁ、こんな時に優秀なパートナーがいれば...まぁ、あのサイドテールの悪魔の実力は知らないけど見た限りやっと上位体術、剣術、魔術を使えるというところだと思うから正直見守ってもらう程度しかできないだろうしな。
「こんな時にロリババアが居ればなぁ...」
俺はそう一言呟いてベッドに大の字に寝転がる。すると、窓ぎわに1羽のハトがやってくる。俺は平和じゃないけど平和だなぁとハトをこちらに寄せる。首元をコショコショしてやるとハトは気持ちよさそうに鳴く。
次の瞬間、俺の和やかモードは終止符を打った。
「お困りかな?ハスト・アーネット君?」
「!?」
イキナリ目の前のハトが人語を離し始め、俺は驚きすぎて口からひらがな一つさえ出なかった。
俺はこの声に聞き覚えがあった。
「あ、アークさん....?」
「うむ、そうだが。私こそが14代目国王アーク=フォン=フラハイトだが何か?」
「あ、あの、仕事はどうしたんですか?」
「そんなもん池に捨てた!!はっはっはっは!!池に書類を投げるのは気分が良くなるものなのだな!!」
そう、この目の前でハトの姿に変化し、ゲラゲラ笑っているのは仕事サボり魔は現国王だったのだ。
「はぁ....それ、王族の人とか、特にウチにいる第一王女様とかが聞いたらやばいことなのでは...?」
「まぁ、私の身体変化魔術は未だお前とアーネットにしか見せていないからな。ついでに言ってしまうと、あのあのレイアーヌは魔術より体術、剣術の方に長けているから、お前みたいに全てを目指す訳でもなければ、ロクに魔術など学んだりなどせんはずなのだよ、はっはっは!!」
「それってかなり重要機密なのでは...?俺なんかが知って良いことじゃないでしょうに。」
「どちらにせよお前もこの国最高の重要機密なのだから、説得力に欠けているな。で、確か助け舟は欲しくはないか?今なら見返りとかは無しにしてやろう。」
国王から直接助け舟を出してもらえる、というモノはどうやら本当だったらしい。俺は本当なのかと目を見張る。
俺の反応を見たアークさんは、少し引き気味に、
「おいおい、なんだその驚き様は、まさかこの私が嘘をついているのではと思っていたのか?」
「正直、思ってたっていうのは、まぁそうなんですけど。というか、この俺が置かれているかなりの絶望的状況をどうにかできる策なんてあるんですか?」
「あるからここにきているのだよ。まぁいい、私が言う作戦を聞いてくれ、話はそれからだな。」
俺は直感的に何か楽しそうな気がしてアークさんの作戦を聞いたのだった。
その日の帰り道、俺はいつも通り一人少し暗くて、人の気配が全くない道を歩いていた。
「はぁ~、人気がないな~って思ってたらコレが原因かよ...トホホ、俺ついてねぇな。」
俺の目の前に大量の魔素が集まっていくのが見られた。そして、その魔素の塊から、轟音とともに1体の巨大な熊型のモンスターが出現する。
「はっ、鬱憤晴らしでもしようかなぁ!!『覇王』様の前に出ちゃったら、終了だぜ?『覇権ソルバート』...!!フォルムスライサー!!」
俺が怒りのままにそう叫ぶと、俺の右手には1本の実体を持たない碧く燃え盛る剣が現れる。今回は前までと比べて、碧色の輝きが強くなっている。まぁ、俺が本気でやると、色が変わるんだけどな。まぁ今回はそこまで怒っているわけでもないし、色は変わらないか。
俺は目の前のランク18モンスターを見据え我流に剣を構える。剣を向けられたモンスターは「グウォォォォォォォ」と雄叫びを上げて、突進を仕掛けてくるが、
「じゃあな」
俺のその言葉と同時に、キルゾーンに入った熊型モンスターの胴体が真っ二つとなる。
俺は何とか熊型モンスターから吹き出る血のような液体を避けれるだけ避けて、魔素となって消えるのを待った。
「あちゃ~...ローブ羽織ってなかったから返り血浴びちゃったよ、まぁでもこんなもんかな。このくらいの雑魚なら秒殺できるし、地味に魔石高く売れるからありがてぇんだけど、ここら辺に出るモンスター全部がコレってわけじゃないしな...やっぱ山奥の方がいい稼ぎ場になるのかな...」
俺は走そうポツリと独り言を零して覇権を元に戻し、魔石を回収し、アイテムボックスにしまい込んだ。
「まぁでもよくよく考えてみると、フツーは冒険者が何人がかりかで数時間かけて討伐するもんなんだろうな。改めて自身の実力を知ったのかもしれないな...高校の奴らは冒険者より圧倒的に弱いし、俺からみても惨めな嫌がらせだったりと、まぁ、最悪クラスの半分死ぬくらいで討伐は可能かな。」
俺は、自身の実力と、クラスの人たちが討伐できるのかを確認していた。
「寒いしさっさと帰るか。」
俺はそうポツリと独り言を言い残し、その場を立ち去った。
この一連の流れが致命的なミスにつながっているとは知らずに。
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さて、致命的なミスとは何なんでしょうか?