3,パートナーが出来ました。
翌日、俺は盛大に後悔していた。俺は先日渡した契約書をフィアットはまずサインするはずがないと思っていたが、あろうことか彼女は今日の朝目を輝かせて持ってきたのだ。俺は若干顔を引きつらせながら「お、おう...」と受け取ったが、俺がその契約書を仕舞おうとしたとき、彼女から一言耳に囁くように
「お父様が覇王様に本日会いたいと仰っております。」
とえげつないことを言われたので現在、俺はあのロリババアも無理やり引き連れてセルジーネ家にお邪魔していた。
「貴公が、あの『頂天者』の銘『覇王』殿であるか?」
そう俺に話しかけてくるのはフィアットの父親のルキウスさんだ。でかい図体に白髭。かなり公爵感があふれている。威圧もかなりキツイ。まぁ、そんなんで怖気づく俺じゃないので
「はい、そうでごぜーますけど。」
俺がそう言い終えると同時にフィアットの顔色が青ざめた。俺はどうしたのかとフィアットを心配した顔で見ると、フィアットはこちらを向いて小声で、
「....敬語...習ったことないの...?」
敬語?えぇ?あれ、おかしいな国王とかとお話しするときこれでイケたんだけどなぁ...
俺は助けを求めるように隣にいるロリババアの方を向く。
「....?何か問題でもあったかの?....」
駄目だ、俺が分からないモノはいくら師匠でも分からないもんなんだな。あれ?何か接し方間違えたのかな?
俺が首を傾げるような仕草をすると、目の前にいるルキウスさんが口を開く。
「その表情...さては貴公、礼儀作法というものをご存じないようで?まさかとは思うが...あのわが娘フィアットが見せてきた書類は偽物ではあるまいな?」
「そんなわけなかろう、戯けが。わしがわざわざアーク君に頼んで用意させたのだぞ。偽物なわけあるか馬鹿者。」
爆弾発言をしてフンッとそっぽを向くように言い払いのけたのは紛れもなくロリババアだ。
「アーク君...あぁアーク=フォン=フラハイト国王のことか...くははっ、もはや国王を短縮して呼ぶとはな。すまない、初代『覇王』殿、私の間違いだったようだな。」
そういって豪快に笑うルキウスさん。ふぅ、危なかった。どうやら俺たちの死刑は免れたようだ。
「あれ?コレ信じてもらえたってことかな?やったなフィアットさん」
「良かった...私、もう無理....」
「おい小娘しっかりせんか!!何を自身の父親ごときで倒れこむ!!」
「え、ちょフィアットさん!?マジで言ってる!?」
俺たちが心配して駆け寄ろうと、ルキウスさんは直ぐに
「使用人、頼む娘を部屋へ運んでくれ。」
と、使用人さんたちにフィアットをどこか別の部屋に運んで行ってしまった。そしてこの部屋に残ったのは俺とロリババアとルキウスさんだけとなった。
「さて、ここからは貴公が本当に2代目『覇王』なのか見させてもらう。何か自身がそうだと言えるモノを出してみてくれ。」
おぉ?コレはソルバートを出していく感じかな?
俺は一度ロリババアの方を向き、目線で出しても良いかどうかを聞く。返答は頷き1つでOKとのことだ。そうと決まればと思い俺は口角を少し上げて、
「『覇権ソルバート』....フォルムスライサー」
その名を呼ぶと俺の手には前回同様に1本の実体を持たない碧く燃え盛る剣が現れる。ロリババアの方は至って普通の表情をしていたが、その光景を初めて見たルキウスはごくりと喉を鳴らした。
「少し触れてみても...?」
「あぁ、止めといたほうが身のためだと思う。もし触ったとしたら多分覇権に負けて公爵様の手が吹っ飛ぶんじゃない?」
「そうじゃな、並みの人間が下手に触ると生命力ごと持っていかれる可能性が高いからの~。」
俺とロリババアがそう軽~く言うと、ルキウスは自身の手を即座に引っ込めた。
「それを先に言ってくださいよ、危うく私がここで死ぬところだったではないか。」
若干顔を青ざめつつそう言って笑った。まぁ、でもこれで俺が2代目『覇王』だって証明できたことだし、シメに入ろうかな
「あの、公爵様。この件のことは...」
「分かっている。覇王の件は口外禁止だろう?私は別に国王と対峙したいわけでは無いからな。この件は他に知るものは居るのか?」
「知っているのはアーク君とこの馬鹿弟子の学園長と『頂天者』のみ。この件は王族であってもアーク君以外知る者はいないのじゃがな。それだけわしら『覇王』は秘匿された存在なのじゃよ。」
「んなッ!?王族にすら公開されていない....だと...?.....くははっ、これはまた面白くなってきたな。道理であの契約書に記されていた金額も頷けるわけだ。あの金額、私の総資産の数百倍はあるのだよ。...いいだろう。この話、我がセルジーネ家が引き受けよう。2代目『覇王』殿、娘のフィアットをよろしく頼んだぞ。」
そう言ってルキウスは幼い子供のような無邪気な笑顔でこの件を引き受けてくれた。
...よぉし、これであのクソ博識王に「バーカバーカ!!」と煽り散らかすことができる!!まってろエトワール!!お前が白目向いてるところ俺が写真を連写しまくってやるからな!!
俺はただ一人、ニヤニヤと腹黒い顔で笑っていた。
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次回はフィアットの正式なお仕事が来るそうですよ?