1,困ったときは屋上へ
「あぁぁあぁああもぉぉぉ!!またランク18以上かよ!!」
俺はそのどでかい図体を見ながら少しキレ気味に叫ぶ。近所迷惑だって?そんなの知るかよ。だってコイツが悪いんだろ?俺が疲れてるときにのこのこと出てきてさぁ。何?最近の異常発生モンスターって嫌がらせ行為が目的なの?
俺は内心悪態を吐き捨てる。すると、目の前のとにかくでかいドラゴンはこちらを見て「グオオオッ!!」と咆哮を上げる。
「ひぃっ、そんな怒んなって!!....あぁあぁぁもぉぉ!!『覇権ソルバート』...フォルムスライサー!!」
俺はやけくそにその名を呼ぶ、すると俺の手には1本の実体を持たない碧く燃え盛る剣が現れる。
そして、一つ訂正しよう。俺はただの学年最下位じゃない。こんなパッとしなくてだどの成績が最下位でも申し訳ないが一応2代目『覇王』だ。
俺はソルバートを我流に構えて、地面を蹴る。無論跳んで行く先はドラゴンの首だ。
自身のキルゾーンに入り、一閃。音は無く、目の前のドラゴンは1ミリも動かずにそのまま首がスライスされてそのまま倒れ、魔素で構築されたどでかい図体が霧散していく。
あぁ、そういえば今の動きは本来他人へ見せるものではなかったな。俺はこの動きを学校生活では一度もしたことはない。当たり前だ。だって陰キャがこんな動きしたら正直言ってキモイと思うだろう?俺は周りからあまり相手にされたくないんだ。
まぁ、気持ちを切り替えて魔石を拾って帰ろうじゃないか。あっ、この魔石高く売れそう、ラッキー!!
こうして俺は今日も夜遅く家に帰るのだった。
翌日、
「なぁなぁ、レオン、また昨日ランク18以上のバケモンモンスターが何者かに一撃で倒されてたらしいぜ!!もうこれ絶対俺が調べた『覇王』だろ!?」
「まぁ落ち着けってラインハルト。この前からその魔素反応を調べた結果が切り傷だってらしいから剣聖様でしょう?」
そうレオンと呼ばれている生徒がラインハルトにレスポンスすると、近くにいた数名の女子がその周りに集まってきている。
「なぁに、今ラインハルトまた『覇王』って言った?もういるわけないじゃない、そんな人。まだ信じてたの?いるんだとしたら国民集会の日とかに剣聖様たちと一緒に座っているじゃない?」
「ぐっ...そっそれはこの前読んだ資料によると相当シャイな性格だからだろう?そんな人物が人前に出るわけないじゃないか!!」
女子生徒にラインハルトは噛みつくようにレスポンスする。すると、数人の女子生徒の中から一人が
「ふぅ~ん、資料、ねぇ...アンタは一体どこでそんな重要機密っぽい資料を呼んだのかしらねぇ...?」
「そうですよ、どこでそのようなモノを見たのですか?」
「レッ、レイアーヌ様...!?どうして第1王女様がここに...!?ここは1年生のフロアなはず....!?」
ラインハルトの顔がみるみる白くなっていく。俺は遠目に「お疲れ」と心で呟いた。
「ラインハルト....俺はもうカバーできねぇぞ...」
「レオンまでッ!?」
「ラインハルト=アルクさん、後でお父様からお話があります...いらしてくださいね?」
そう第一王女様がスマイルをラインハルトへ向ける。うわこっわ、アイツ目が笑ってねぇじゃん...俺初めて見たよ。
俺の通ってる高校は腐っても王立学校なのだ。こんなことになるのも仕方がない。え?何でお前みたいな奴がここに通っているのかって?そりゃあ、校長とグル....おっと誰かが来たようだ。
俺はそう本能で危機感じると、自然に顔の向きを窓の外へスライドさせる。この自然さはこの数か月で養った俺の唯一の能力だ。どうだ、凄くてどこか虚しいだろう?
そんなことを思いつつも実際の俺は冷や汗をだらだら流しながら顔を反らした俺の目の前に来ようとしている奴を全力で無視をしている真っ最中だった。
「ハストさん...でしたよね」
「.....」
「ハストさん?どうかしましたか?」
「.........」
「私としたことが...話す相手を間違えたようです。ごめんなさいね、それでは。」
俺は密かに口角を上げる。よっし!!俺の無視能力かなり上達してないか!?最高かよ!!そして俺はゲス顔で一言呟く。
「...俺の勝ちィ....!!」
「あら、何が勝ちなのですか?ハスト様?」
「!?!?!?!?!?」
俺の脳内が全て「!?!?!?!?!?!?」に置き換わる。そして俺はギギギと音がなるように首を回転させる。すると俺の目の前には一切面識のない第一王女様が目の前にいる。体中から冷や汗が止まらない。周りの人はどうやら俺に視線を向けている。陰キャボッチの俺にとってこの状況は地獄を300周するより辛い。
ついに俺は周りの人が怖すぎるせいで所々声を裏返らせながら、
「...あのゥ...おっオレ、ボクちょっとオなか痛いのデホケンシツいきマーす....」
俺は周りの人から逃げるように教室から出て、贅沢に無詠唱で身体強化魔術までかけて全速力で屋上まで逃げ込んだ。屋上に来てまず最初に師匠から受け継いだローブを羽織って屋上へつながる扉を結界魔術を自分でも解けないレベルまで固める。
その一連の動作を終えて俺はその場でへ垂れ込んだ。
「はぁっはぁっはぁっ....!!........もういやだぁぁぁぁぁぁ!!」
その俺の掠れた叫びは誰にも届いてはいなかった。
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