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ジュリアス 2

姉上が自分がずっとアルトディシアに留まるよう幼少時から繰り返し暗示を受けていたことに気付いてしまった。

私がそのことを知ったのは、セレスティスに来る直前に父上から教えられたからだったが。

筆頭公爵家の令嬢であり、6つ名持ちである姉上は、その存在を国のために役立てなければならない、国のために尽くすことが義務なのだと、洗礼式で6つ名を授かった時から王家からの教育係によって繰り返し暗示を受けていたらしい。

筆頭公爵である父上と元王女である母上は国のためにそれを容認したが、第2王子の一方的な理由で婚約を解消されたことで、姉上に強制的に国のための義務を課しておきながら私情で行動した王子とそれを容認した王家に怒りを抱いた。

そしてセレスティスに留学したいという意志を持った姉上を見て、もしかして暗示に綻びが生じているのではないかと気づいた。

幼少時から繰り返し与えられた暗示によって、姉上が外交等の仕事以外で他国へ行きたいなどと思うはずがなかったからだ。


このまま姉上が自分からアルトディシアに戻るのならばそれで良しとするが、もし自分にかけられていた暗示に気付くようなことがあれば、そのきっかけとなった相手次第ではシルヴァーク公爵家は王家が何と言おうと姉上が他国へ嫁ぐことを容認する。


それが公爵家当主である父と次期当主である兄の決定だ。

そしてもしそういう相手が現れたなら、速やかに報告せよ、というのが私がセレスティスに留学するにあたって2人から受けた命令だ。


ヴァッハフォイアの王は強さで決まる1代限りの存在だから、政治的な権力はほとんどないお飾り的な存在だ。あの国を動かしているのは狐人族のシュトースツァーン家だから、そこの出身だというルナールは人間族なら公爵家出身とさほど変わらないだろう。


学院で姉上にほけっと見惚れているような輩ならどの種族でも単純でわかりやすくて良かったのだが、まさか獣人族の冒険者が求婚してくるとは。

人間族ならこのセレスティスに留学がてら冒険者登録する程度ならば私や姉上でもしているくらいだから珍しくないが、下位貴族の次男以下ならともかく、公爵家子息が本気で討伐メインの冒険者になるようなことはまずありえないから、冒険者が公爵令嬢に恋慕したところで身分違いと一蹴できるし、市井の恋物語のように駆け落ちだの、攫って行くだのという馬鹿な行動に出たらそれこそ排除してお終いなのだが、獣人族の冒険者はまた事情が違う。


ああ、頭が痛い。


人間族ならアルトディシアでも、フォイスティカイトでも、その他の小国でもどうとでもなるが、他種族となると色々と勝手が違いすぎる。

まあ、あのやたらと神々しいハイエルフが相手でない分、まだマシか?

エルフ族は総じて排他的だしな。

獣人族は大陸中にたくさんいるし、人間族との関係も良好だ。

これを機にヴァッハフォイアとの友好が結ばれるのなら、アルトディシアとしても容認するしかないだろう。

姉上が他国へ嫁ぐにしても、駆け落ち同然に出て行かれるくらいならば、円満に出て行かれた方が神々の怒りを買わずに済むはずだからな。


とりあえず、姉上を掻っ攫っていきそうな獣人族の男が現れた、と実家には報告しておこう。

見極めるのは父上と兄上だが、あの狐獣人族の男が、アルトディシア王家が歯ぎしりするのを尻目に姉上への愛を誓い、うちの家族へにこやかに挨拶できるようなら、遠国だが姉上が嫁ぐのも悪くはないのではないか?

ああいう男が姉上の好みだったのは正直意外だが、姉上が義務ではなく幸せになれるのなら、それが1番なのだから。


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― 新着の感想 ―
[一言] 個人的にはハイエルフの方が好みではあるけど、寿命差がなぁ‥
[一言] バランスの良い物語に出合えた事に感謝。ありがとう。
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