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先日何気なくルナールがオークキングの肉を手土産に持ってきてくれたが、どうやらオークの集団が発生したため討伐メインの冒険者達がギルドからの命令で半強制的に討伐した結果だったらしい。その影響で今セレスティスでは豚肉ならぬオーク肉がセール中だ。

オークキングというと、私には竜を倒す依頼の某国民的RPGに登場したモンスターしか思い浮かばないが、ルナールに確認すると概ね合っているようだ。ルナールはご飯のお礼にとオークキングの大きな魔石も太っ腹にくれたが、こんな上質な魔石をもらってしまうとご飯以外に何でお返ししたら良いか悩みどころだが、上級冒険者のルナールはお金には困っていないので、それよりも美味しいご飯を食べさせてくれるほうが嬉しいらしい。

なのでもらった魔石はありがたく床暖の魔術具を作成させてもらった。

我が家の全ての床を温めるための魔術具だ、秋冬は重宝するだろう

上質な魔石だったから、この家全体に作用する魔術具を作成できた、これで今年の冬は足元からぬくぬくだ。


「最近はどこの店もオーク肉料理ばかりだが、やはりこの家で出てくるオーク肉料理は格別だな」


ご飯代にとオークキングの魔石をくれたルナールは、オークの群れの討伐で疲れたのでしばらくは依頼を受けずに休むとのことで、その間の夕食は毎日我が家に食べに来ている。朝食は宿で食べ、昼食は外の店で食べているらしいが、1日の最後は美味しいものを食べたいと言っていた。

獣人族はあまり凝った調理をすることはなく、焼く、煮る、生しかしないので、我が家の料理には本当に心奪われたらしい。


今日のメインはオーク肉の角煮だ。

ほろほろと崩れる柔らかい肉に、一緒に煮た卵が最高に白米に合う。

スープも豚汁ならぬオーク汁だ。

副菜は大根と厚揚げの煮物に、野菜の南蛮漬けで栄養バランスもバッチリだ。

デザートはほうじ茶によく合う芋羊羹である。

セレスティスに来てから和食のメニューが増えて本当に嬉しい、イタリアンもフレンチも中華も好きだが、やっぱり和食が1番好きだし、前世のレシピも1番たくさん覚えているのは和食なのだ。


「今日の料理はヴィンターヴェルトの調味料をメインに使っているんだろう?実家にヴィンターヴェルトとの食材の取引を進言しておこうかな・・・」


狐獣人のルナールの実家は、ヴァッハフォイアでは政治の中枢らしい。若いうちは諸国を冒険者として巡って見聞を広げてから国に戻り政治や外交に携わるのだと言っていた。

獣人族は強くないと馬鹿にされるので、政治や外交をするにしても腕っぷしもある程度強くないと従ってくれないらしい、とても大変だ。

まあ、前世の知識を鑑みても、狐というのはある程度強くて頭の切れるイメージだよね。

ちなみに私がポーション類の味の改良をしたことも実家に報告したらしく、何か獣人絡みで困ったことがあればシュトースツァーン家の名を出すと良い、と言われた。

いつの間にか強力なコネを手に入れていたらしい。


「調味料はヴィンターヴェルト産ですが、調理方法は我が家のものですからねえ、こういっては失礼ですが、獣人族はあまり調理方法を試行錯誤するということが得意な種族ではないように思うのですが」


そういうのが得意なら、料理のほとんどが焼く、煮る、生しかないという事態にはならないだろう。まあ、前世でも国によってはお金を出せば美味しくなるのではなく、不味い料理が増えるだけ、という国もあったが。


「そうなんだよな・・・ちなみにお嬢さんのレシピの値段はいくらなんだ?」


「アストリット商会にはひとつ中金貨1枚で提供しておりますよ。それでも十分利益は出るそうです」


ちなみに今準備中の食事処は、アストリット商会とパルメート商会とドヴェルグ商会が共同出資という形で進めている。せっかくセレスティスで開店するのだし、フォイスティカイトとヴィンターヴェルトの大商会との縁もできたのだから、食材の仕入れも楽になるし良いのではないか。

リュミエールとフリージアは、留学中に大きな取引を自分の手腕でまとめることができた、ととても嬉しそうだった。

なんせ食事処で出す料理もお菓子もこの3ヶ国の食材を万遍なく使用しているのだから、提携した方が断然お得なのだ。


「金はともかく、まずは料理人の確保か・・・もし俺の実家の者がお嬢さんに取引のために面会を求めてきたら応じてくれるか?」


「ルナールさんの紹介でしたら構いませんよ。取引に応じるかどうかは内容次第ですけれどね」


私は表立って商取引はしていないからね、基本的にアストリット商会が窓口だ。本国では未だに私がアストリット商会の商品開発者だと知らない者が大半だし。

だがまあ、友人の紹介だし、今後ヴァッハフォイアの力を借りなければならないような事態に遭遇した時のためにも、この縁は繋いでおくべきだろう。


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