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私は3日に1度くらいの割合でジークヴァルト先生の研究室に通うようになった。

ご神木様へのお供え物、もとい、お茶菓子を持参して、まずは閲覧許可をされているジークヴァルト先生がこれまでに収集した資料や研究成果を読ませてもらっている。

もともと私はいきなり実践ではなく、資料等を先にじっくり読み込むタイプなのだ。


そういえばこの世界は天動説である。


間違った知識ではなく、実際にこの世界はお盆状の世界で世界の果ては海の水が滝になって流れ落ちているのだ。なんらかの幻想生物が何匹か下でお盆の世界を支えているらしい。

なので季節も各大国で神事を執り行うことで移り変わっている。

ジークヴァルト先生の資料には、各国で執り行われている神事についてのものもあった。

私はアルトディシアの神事は執り行う側だったから熟知しているが、他国のものは大きなお祭りになっているもの以外はあまり知らない。

この資料によると、エルフの国であるリシェルラルドでは、冬には神事を執り行う度にオーロラがよく見えるらしく、リシェルラルドの衣と呼ばれているらしい。

平面のお盆状の世界で観測できるオーロラは地球のオーロラとは似て非なるものだろうけれど、せっかくだから見てみたい。

前世ではオーロラを見に行ったことはなかったのだ、新婚旅行でオーロラを見に行った同僚が、寒すぎて会話がなくなるから新婚旅行先には向かない、と力説していたし、運要素が強いので見えるかどうかわからなかったので、それならば確実に見れるものを見に行こうと別の場所に行っていた。

この世界では磁場とか関係ないのだから、理論上は夏のセレスティスでも見られるはずなのだ、わざわざ寒い中見たいとは思わないし。


「君はリシェルラルドの衣をこのセレスティスに出現させようというのか?それもこの夏に?」


ジークヴァルト先生が今日のお供え物であるレモンメレンゲパイを食べながら眉間に皺を寄せる。

何をしても絵になるのだから、美形というのは得である。


「ちょっと魔法陣を書き換えて一時的に冬を呼び、リシェルラルドへの神事を執り行えば出現しますよね?理論上は」


「理論上は間違っていないが、それで何をしたいのだ?」


「え?見たことがないので、見てみたいと思っただけですけれど?きちんと魔力は奉納するわけですから、神罰など下ったりするわけではありませんよね?」


ジークヴァルト先生が無言になってしまわれた、神罰下るんだろうか?アルトディシアの公爵領では、風車を回すために風よ吹け吹けとばかりに実験的に軽く季節外に神事を執り行ったり、農作物の豊穣を願ってヴィンターヴェルトへ酒をお供えして神事を執り行ったりしてみていたのだが、効果はあれど特に神罰が下るようなことはなかったのだが。


「神罰が下るかどうかは試してみたことがないので、私にはわからぬが、ただ見てみたいというだけの理由で神事を執り行うつもりなのか?」


神々には常に感謝と祈りと魔力を捧げているので、多少の遊び心は許されると思うのだが。この世界の神々は割と色々と緩いし。


「街中でやると目立ちそうなので、ちょっと郊外に出てやってみようかと思うのですが」


「やることはもう決定なのだな」


ジークヴァルト先生に深々とため息を吐かれてしまった、そんなに突拍子もないことを言っただろうか、夏だし、花火の代わりにちょっと夜空にオーロラ出現させてみようかと思っただけなのだが。


「リシェルラルドへの奉納は舞と楽ならどちらが良いでしょうか?アルトディシアへはどちらも頻回に捧げておりましたので、それなりに得意だと自負しております」


神事というものは、この世界を作りたもうた神への感謝と祈りだ。

それさえきちんと弁えていれば、特に失敗することはない。


「リシェルラルドはどちらも好むから、どちらでも構わないだろうが・・・まあ、良い。実行する日には私も同行しよう、何かあっては困るからな」


「何人か友人も呼んで眺めようと思っているのですが、構いませんか?」


ますます胡乱な目で見られてしまった、そんなにおかしなことだろうか?

夏の夜空にオーロラを出現させて、それを愛でながら飲み食いしようと企画しているのだが。


「構わぬ。いきなりセレスティスの夏の夜空にリシェルラルドの衣が出現したとなると大事になるから、私から魔術の実験をすると先に申請を出しておこう」


頭が痛い、という表情でジークヴァルト先生が実験の申請を請け負ってくれた。そうか、オーロラ見えたら綺麗だよね、と安易に考えていたが、いくら郊外でもセレスティスの街中からも見えるだろうし、そうなると学院に問い合わせがいくかもしれないしね。


害がないから大丈夫というわけにもいかないか。


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