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優秀な狩りメインの冒険者が専属になってくれたことで、私の素材収集は一気に捗った。

特に依頼していない素材でも、ギルドに持って行く前にいるかどうか確認しに来てくれるのだ、とてもありがたい、たとえそれが我が家で出される食事やお菓子目当てだとしても。

そしてルナールは魔術具のモニターとしてもとても優秀だった。


「ジャイアントバットの翼が欲しい?それも複数?」


ルナールがわかりやすく眉を顰める。

ジャイアントバットとは、主に洞窟等に生息する巨大蝙蝠である。

1匹ずつならたいしたことはないが、大概は群れているため非常に狩るのがやっかいらしい。


「一応、対策としてこのような魔術具を準備してみました」


私が準備したのは音玉である。

この世界の蝙蝠に効くかどうかはわからないが、人間には聞こえない波長の音を出して気絶すればいいなあ、という感覚で作ってみた。


「これはどういう効果があるんだ?」


「人間族には聞こえない特殊な音が出るようになっていますので、ジャイアントバットの群れに向かって投げてください」


ちなみにこれを作成した時、同じ部屋にいたうさぎのポポちゃんはものすごいびっくりした顔をしてぽてっと倒れたから、動物には聞こえると思う。可哀想なことをしてしまった。


「今回は一緒には行かないんだな?」


「私が思うに、洞窟というのは暗くてじめじめしていて足場も悪いし、その中で様々な魔獣が襲ってくるのでしょう?よほど自分で行かなければならない用事がない限りは、あまり楽しむことのできる場所だとは思えませんし、足手まといになっても困りますので、結果だけをお待ちしておりますわ」


洞窟探検に憧れるのは、トム・ソーヤの冒険を読んだ直後だけで十分だろう。

私は現実を見つめるのだ。


「お嬢さんは本当に色々よく現実を理解しているよ。足手まといにはならないと思うがな」


ルナールは苦笑して、お茶菓子のサラダせんべいをバリバリと食べた。

エリシエルと違ってしょっぱい系のお菓子が好きらしいので、彼が来る時はそちらを用意するようにしている。

ルナールはこれまで相手から日時を指定されない限りは、依頼人に会う時にいちいち面会依頼を出すような面倒な真似はしてこなかったらしいが、私が面会依頼をきちんとしてくれた方が好きそうなお菓子や食事を準備できますよ、と言っておいたので、以来きっちりと面会依頼を出してくれるようになった。

金カードの冒険者に依頼を出すような人は基本的に経済的に豊かな者だけだろうから、依頼人が不在でもちゃんと依頼内容を心得ている執事や侍女がいるだろうから問題ないだろうけどね、直接冒険者に会わずに指示を出すだけの者も多いだろうし。でも貴族相手なら面会依頼はきちんとしておいたほうが今後のためにもいいだろう。


「ああ、あと、音玉に効果がなくても、多分洞窟にずっと棲んでいるジャイアントバットは視力が退化しているでしょうから、光にも弱いと思いますのでこれもどうぞ。暗がりで見えるようになる目薬も作成してみましたが、これもご入用でしょうか?」


念のために光玉も渡しておく。

魔獣の生態に関する講義も受けてはいるのだが、どのような素材が取れるのかは教えてくれるのだが、その他は割と大雑把である。

もっと討伐しやすいような情報も教えてほしいのだが、基本的に教師も学生も素材を使う側であって討伐する側ではないので、その辺の情報は冒険者ギルドの方が詳しいらしい。


「俺は夜目が利くから、目薬は不要だ。普通の依頼人はここまで準備はしてくれないからな。ジャイアントバットの翼以外にも珍しい素材があれば狩って来よう」


「いつもありがとう存じます。ですがお怪我をなさらないように、気を付けて行ってきてくださいね」


私の出した依頼のせいで怪我をされたり死なれたりしたら寝覚めが悪いからね、そういう意味でも金カードのルナールは安心安全だ。



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