2
今年の試験も無事終わり、私は引き続き白金、ジュリアスは金だった。
自国で厳しく教育されている高位貴族の子弟は、初回でも銀以上が当然なのだ。
ジュリアスは私が時々冒険者と一緒に街の外に採集に出かけることもある、と聞いてものすごく驚いていたが、私が楽しそうで良かった、と笑っていた、本当に姉想いの良い弟である。
ジュリアスは何かを作ることにはあまり興味がないようなので、私と講義が被ることはあまりなさそうである。将来のことを考えて、政治、法学、経済、経営等がメインになるのだろう。
私は次期王妃として必要だから学んだだけで、本来はあまり興味のない分野である。
私は今年はいくつかの上級コースの受講を許可されたから、そちらにかかりきりになると思う。
この世界は魔力や魔術は存在しているが、前世のゲームのように「ファイア!」と唱えて手の平から炎が出てくるような魔法はない。
媒体となる魔術具が存在して初めて魔術が発動するのだ。
量の多い少ないはあれど、誰でも魔力は持っているので、充電池のように空の魔術具に魔力を込めて魔術具を動かしているシステムだ。
明らかに弱点がわかっている魔獣を狩る際には、先にその属性の魔力を武器に付与しておくこともあるらしい。
つまりは下準備さえしておけば、どんなに強大な魔獣でも倒せるということである、理論上は。
魔術具を作成するための道具には、魔獣の爪とか羽根とかの素材も必要になるので、そういうものの採集も、買ったり冒険者ギルドで依頼を出すだけではなくそのうち行ってみたいと思っている。
ただし、日帰りで行ける範囲で。
私はもともとアウトドアはあまり好きではないのだ、日帰りなら楽しめても、野宿とかは遠慮したい。
エリシエルに言うと、魔獣狩りをするなら自分だけではなく、そちらに長けた冒険者も雇った方が良いと言われたので、腕の良い冒険者を募集中である。
あまり変なものを狩りたいとは思っていない、ドラゴンとかとガチで勝負するのはしんどそうなので、もっと弱そうなので十分だ。前世でやったことのある狩りゲーでは、何十回とティガに負けてトラウマになったし。
「お嬢さんが狩りに行ってみたいって?それもスライムの核が欲しい?」
冒険者ギルドで紹介された狐獣人の冒険者に胡乱な目で見られる。
「スライムの核なんて誰でも取ってこれるんだから、わざわざ俺みたいな狩り専門の金を雇わなくても、依頼さえ出しておけばすぐに集まるぞ?それこそ1/10以下の金で」
「私が欲しいのは安全と安心ですわ。初めての狩りにベテランの案内は必須でしょう?」
安全と安心は金で買えるのなら買え、というのが前世からの私のモットーである。
前世では海外旅行が趣味のひとつだったが、治安の悪い国はたくさんあったからね、お金でどうにかなるのなら先に対処しておくにこしたことはないのだ。
「ルナール、セイランさんはお金払いもいいし、よくいる貴族の学生みたいに高飛車でもないから、大丈夫よー?私もよく一緒に薬草採集に行くし」
エリシエルも採集がメインだが金のカード持ちで、冒険者ギルドには私のやっていることは貴族のお嬢さんの道楽と映っているようだが、実際にはエリシエルへの報酬はほぼ食べ物である、本人が私と一緒の採集は楽なのでそれでいいと言っているし。
「まあ、金払いさえ問題ないなら俺は構わんけどな。俺はルナール・シュトースツァーンだ、よろしくな」
「はい、よろしくお願いいたします」
黒髪に金色の瞳のワイルドなイケメンだが、私の目は彼の後ろにあるふさふさの尻尾にくぎ付けだった。
いいなあ、もふりたい。