第七話 自分の能力
「いっちょ上がり」
上手く着地し、刀をしまう。カシャッ。刀を鞘にしまう音。なぜかわからないが、その音が異常なほど大きく聞こえた。それだけではない。さっきと違って視界は眩しい。互換が急に強まったような感覚だ。それに違和感を覚える。しかし、すぐにその違和感は消え去った。
「あら、なかなか強いのね」
紫と霊夢がこっちに近づいてくる。紫からは何も感じなかったが、霊夢からは敵対心がむき出しになっていた。
「・・・・・・あんた、魔理沙のマスパをどうやって避けたの?」
「それは確かに、私も気になるわ」
「・・・・・・・・・・・・」
しかし、自分はそれに返答は出来なかった。
「・・・・・・そう、わからない・・・・・・のね・・・・・・」
紫は自分が返答できないことを察してくれたようで、問い詰めてはこなかった。
「なんか・・・・・・すまない・・・・・・」
「もしかしたら、その力はあなたの能力かもしれないわ」
「能力?」
「そう。簡単に言えばあなただけの特別な力ね。幻想郷にいる住民は全員が能力を持っているわ」
「そうなのか?そしたら、人里に住んでる人も・・・・・・・」
「使えはするわ。だけど彼らは能力にめざめていない。だから能力をもってないのと同じなのよ」
「能力に目覚める?」
「まあそれはいつか話すわ」
今度は霊夢が紫に質問をする。
「仮に能力としたのならどんな能力なのよ?」
「さあ?そんなこと私にも分からないわ。言ったでしょ、私が彼を外の世界から連れてきたわけじゃない、だから彼の事何も知らないのよ」
「そう・・・・・・・」
(そういえば、魔理沙の奴どこに行ったんだ?)
「霊夢、紫。魔理沙はどこに行ったんだ?」
「そこにいるわよ」
霊夢の指さした方、それは自分の足元だった。急いで確認すると真下に魔理沙がいた。どうやら踏んでいたらしい。急いで魔理沙から降りると、うつ伏せに倒れていた魔理沙背中には、くっきりと足跡が付いていた
「すまない、魔理沙」
しかし、返事は返ってこない。
「あらあら、気絶しているみたいね」
「はぁ、自分から勝負仕掛けておいて何なのよこの様は・・・・・・」
「レイ、魔理沙を母屋の中に運んであげて」
「じ、自分が⁉」
「当たり前でしょ、ここに寝転がってたら私の営業妨害なんだし」
「そうは言ったって・・・・・・」
魔理沙は年頃の少女。男がむやみに触れば通報ものだ。
「早くしてくれるのかしら」
しかし、そんなこと迷ってる暇などない。どうやら霊夢も少し苛ついているようだ。貧乏ゆすりの音が少しづつ大きくなっている。
(・・・・・・ここは覚悟を決めて運ぶか・・・・・・)
少し躊躇しながら、魔理沙の身体をもちあげる。そして、速足で母屋まで運び、その一室で寝かせた。
「そう言えば、今日ここで宴会があったわよね?」
「そうね」
「レイ、それに出ない?」
「別にかまわないが、なんでこんな正体不明の自分をさそうんだ?」
「だから誘うのよ、どうせここで暮らしていくのなら、挨拶ぐらいはしとかなきゃいけないでしょう?顔見知りになっていて損はないはずよ」
(確かに紫の言うとうりだ。そここで暮らしていくうえで、顔見知りがひとりでも多くいれば、何かあっても頼れる・・・・・・)
「分かっ・・・・・・!?」
急に激しい睡魔に襲われ、視界がぼやける。
(なんだ・・・・・・これは・・・・・・?)
普通の睡魔とは異なったものだ。自分で制御できない。足もふらつき立っている事すらままならなかった。
「ちょっと、どうしたのよ、レイ⁉」
薄れていく意識の中で紫の声が聞こえたが、そのまま意識を失ってしまった。