第六話 弾幕勝負
「まずは小手調べだ!!ここで当たるんじゃないぜ!!」
そう言うと魔理沙は手に持っていた箒で空を飛び、星型の弾のようなものを無数に放ってくる。
「いや、小手調べじゃねぇよ!!!!自分は弾幕ごっこの事何も知らないんだが・・・・・・って、うおっ!!!!」
危うく弾のようなものに当たりそうになった。ぎりぎりのところで避ける。
「そう言えば説明するの忘れてたな・・・・・・すまないのだぜ、てへ」
「いや、てへ、じゃねえよ、こんな勝負不公平だ!!!!」
無数の弾が飛んでくる。多分これが魔理沙達が言っていた弾幕というものだろう。
(こんなの避けれるわけがない・・・・・・)
そんな自分を見た紫と霊夢。
「霊夢、レイが説明をしている間、魔理沙の相手を頼んだわ」
紫が自分に助け舟を出そうとしてくれていた。
「・・・・・・」
しかし、霊夢は動こうとはしない。紫は何かを察し、呆れた。
「・・・・・・はぁ、仕方ないわね。じゃあ、日本酒3本でどうかしら?」
「その約束、忘れないでよ」
霊夢はそう言うと、自分の方に向かって歩いてきた。
「夢符 二重結界!」
霊夢がそう唱えると、自分の前に結界が現れる。その結界によって魔理沙の弾幕は消滅した。
「あんたは一旦下がって紫から弾幕勝負について説明を受けていなさい」
「あぁ・・・・・・」
霊夢に言われた通りにする。
「なんだ、霊夢。弾幕ごっこを邪魔するのか?」
「レイが弾幕勝負の説明を受けている間だけよ」
「そうか、でも手加減はしないぜ!!」
「望むところよ!」
霊夢は空を飛んだ。そして両者弾幕を打ち合う。
「レイ、あれが弾幕勝負」
紫は扇子で霊夢たちの方を指す。
「あれが・・・・・・」
二人は激しい攻防戦をしている。
(あんな動き・・・・・・到底自分には・・・・・・)
あの動きを見るの彼女が幻想郷最強という理由もわかる気がする。その動きについていっている、魔理沙もかなり強いのではないのだろうか。
「ああやって相手の弾幕を避け続けて、自分が相手に自分の弾幕を当てる。まぁ、お遊びね」
紫はそう言う。
「お遊びって・・・・・・死合の代わり何だろう・・・・・・」
「死合ねぇ・・・・・・その言葉久しぶりに聞いたわ・・・・・・」
「そうなのか?」
「えぇ、霊夢が博霊の巫女になって幻想郷内で血を見ることは少なくなった・・・・・・いや、ほとんどなかったと言ってもいいわね」
「やっぱりすごいんだな、霊夢は・・・・・・」
物凄く感心した。
「そんな雑談するんじゃなくて、早く変わってもらえないかしら」
「あぁ・・・・・・」
霊夢は地上に降りる。そして本殿の賽銭箱の前の階段に腰を下ろした。
「おっ、やっとか」
魔理沙は霊夢との戦いで興奮しているようだ。
「お手柔らかに頼む」
「じゃぁ、行くぜ!!!!」
その声と共に、再び星型弾幕が大量に魔理沙から放たれる。
(これが、弾幕か・・・・・・さっきの紫の発言からすると、当たったらいけないのか・・・・・・?)
疑問を抱きながらも、弾幕を避けるため弾幕の軌道を確認する。さっきから見てて思っていたが弾幕は左右対称になっており、美しい。まるで、相手を殺すために作られた物じゃなさそうだ。
(そんなに避けれないってわけじゃないな・・・・・・)
左右にステップをし、飛んできた弾幕を避ける。
「やるじゃないか!!なら、これでどうだ!!」
魔理沙は懐からカードのようなものを取り出した。
(何をする気だ・・・・・・?)
何が起こってもいいよう警戒を強める。
「魔符 スターダストレヴァリエ!!」
魔理沙がそう言うと、さっきとは比べものにならないような星型弾幕が渦状に放たれた。
「なっ!?」
予想をしていなかったことで少し戸惑った。そのせいで、弾幕にかすってしまった。
「イッツ・・・・・・なんで痛いんだ!!?」
まるでナイフが掠ったような感覚だ。
「あぁ、言い忘れてたけど・・・・・・弾幕は被弾しても基本的に死にはしないわ」
「基本的・・・・・・?」
紫の言った言葉に引っかかった。
「そう、基本的には・・・・・・でも、当たり所が悪かったら死ぬわよ」
「そんな大事なことは最初に言え!!!!」
(大して死合と変わらないじゃないか!!)
さっきみたいに何かを考えている暇などなさそうだ。死ぬ可能性あるのなら、当たるわけにはいかない。脇目もふらず弾幕を避ける。
「やるじゃないか!!」
魔理沙も感心していた。しばらくすると、弾幕の量は最初とかわらないぐらいまで戻った。
(さっきのが、スペルカードっていうやつか・・・・・・?)
あんな攻撃の最中では攻撃は出来ない。
(今のうちに攻撃したほうが良いんじゃないか・・・・・・?)
腰にある刀に手を伸ばす。
「!!」
気づきたくないことに気づいてしまった。魔理沙は空を飛んでいる。しかし、自分は飛べない。そして弾幕も出せない。
(つまり・・・・・・魔理沙の攻撃を与えることは不可能に近い・・・・・・かといって守ってばかりじゃ、いつかは弾幕に当たる・・・・・・)
魔理沙に攻撃する方法を考える。
(刀を投げるか?・・・・・・いや、やっぱりだめだ、攻撃を外してしまえば丸腰になっちまう。そうなれば勝負に負けることは明白だ・・・・・・ていうか大体、武器を弾幕勝負で使っていいのか・・・・・・?)
そう考えている間にも弾幕は飛んでくる。
「もういっちょ行くぜ!!」
再度、魔理沙はカードを取り出す。
「魔符 ミルキーウェイ!!!!」
先程よりも大きい星型弾幕が魔理沙を中心として渦状に飛んでくる。さらに、左右からも小さめの星型弾幕が飛んでくる。
「嘘だろ⁉」
先程よりも弾幕の量は増えている。避けるには魔理沙の周りを円を描くように動き、左右の弾幕を避けるしかなさそうだ。
「くそっ・・・・・なんで当たらないんだ⁉」
流石に魔理沙も焦っているようだ。それもそうだろう。初心者相手なのだから。しばらくすると再度、弾幕の量は元に戻った。
「凄いわね・・・・・・初心者で、被弾しないなんて」
「あの動き素人のものとは思えないわ」
(・・・・・・せめて自分にも魔理沙が使ているあのカードが使えれば、勝機が見えるんだが・・・・・・そう思っただけで使えるわけがないか・・・・・・)
そう思いながら弾幕を避ける、その時、懐から一枚のカードが落ちた。
(なんだ・・・・・・?)
弾幕をかわしながら、そのカードを拾う。そのカードには何やら文字が書かれていた。
(衝符・・・・・・空牙衝・・・・・・・スペルカードかこれ・・・・・・)
「もういい!!私の十八番出決めてやる!!」
痺れを切らした魔理沙は、懐から八角形の形をした何かの道具を取り出した。それをこっちに向ける。
「もう、お前に勝機はないんだぜ!!」
「!!?」
「これで終わりだ!!恋符 マスタースパーク!!!!」
道具からはあの極太レーザーが自分めがけて飛んでくる。
「なっ!!」
カードを見ていて反応が少し遅れてしまう。
(しまった!!被弾する!!)
そう思って目を閉じた時、身体と意識に輝く液体が一滴注がれた。機械に油をさすように。たった一滴。しかし、その一滴で一気に視野が拡大し、入ってくる情報の密度が、桁違いに増え、解像度が跳ね上がるみたいに、魔理沙の弾幕がさらに眩しく見えた。
(なんだこれは・・・・・・?)
自分が体験したことがないような感覚。すべてがスローがかって見えた。極太レーザーがいともたやすく避けることが出来る。しかし、魔理沙達は極太レーザーに自分が当たっていないことに気づいていない。
(気付いていないなら好都合。今のうちに・・・・・・)
レーザーの影に隠れながら魔理沙に近づく。レーザーが止んだとき、自分は魔理沙の真下にいた。
「やったか・・・・・・?」
魔理沙はレーザーを放った方に気を取られており、自分の方など見向きもしていなかった。
(この高さ、飛べるか・・・・・・?)
普通の人間なら跳べない高さだ。しかし、今の自分には跳べる気がした。地面を思いっきり蹴る。
「なっ⁉」
魔理沙が自分に気づいたのは、魔理沙と同じ高さまで飛びあがった後だった。
「衝符 空牙衝!!」
刀を抜き放ち、身体を一回転させ、魔理沙に衝撃波を飛ばす。その衝撃波は渦を巻きながら魔理沙に向かって飛んでいく。魔理沙は自分が生きていることに驚いて反応が遅れたのか、避けきれなかった。
ピチューン!!
そんな音と共に、魔理沙は被弾し、勝負に決着がついた。