第四十九話 始まりの準備
こんばんは、おはようございます、こんにちは、作者です。
投稿が非常に遅くなって済みません。
これからも多くの話を出せるよう頑張りますので、今後ともよろしくお願いします。
女の手伝いは思っていたよりも過酷だった。というか手伝いというより、女の相手をするのがとてつもなく苦痛だった。家事を済ませて、くつろごうとした瞬間や、眠る直前に
「ねぇ、暇なら、麻雀しましょう♪」
と声をかけてくる。この一週間で麻雀という言葉が嫌いになりそうだった。
(・・・・・・こんな苦痛に雲雀は耐えてたのか・・・・・・)
そう思いながら、今も麻雀をしている。
「そう言えば、あなた、お金を返せるあてはあって?」
「・・・・・・今の所はないな・・・・・・仕事、探さないとな・・・・・・」
「請求は急かさないわ。ちゃんと返してくれれば別にいいわよ。お金に困っているわけじゃないから」
「すまないな、ほんとに」
「そしてもう一つ、あのリコって子はどうするの?」
「リコか・・・・・・」
そういえば考えていなかった。リコは住む家どころか、生きていくための金を持っているかすら怪しい。
「・・・・・・」
思わず手が止まってしまう。そんな自分を見てか、女は言った。
「あなた・・・・・・店でもだしたらどうなの?」
「店?」
「そうよ。幻想郷にはないものがたくさんあるのだから、目新しいものでも始めればいいんじゃない?」
「そういわれれば・・・・・・」
家の一階は確かにバーのような場所だった。カウンターの後ろにはたくさんの種類の酒が並んでいたし、彼女が言っていることは間違っていない。
「できそうなのはバーぐらいだが、幻想郷でバーなんてものが受け入れられるかどうか解らんぞ」
「確かに、居酒屋の方がいいかもしれないわね。でも、それだからこそ、良いんじゃないかしら?幻想郷にはバーなんてものはないんだから、住民にとっては新しい刺激になるはずよ」
「・・・・・・」
言われてみればそうかもしれない。
「それに西洋の妖怪だっているんだから、受け入れられると思うわ」
「しかし、知名度のない自分が店を開いたところで・・・・・・」
「はぁ・・・・・・心配性ね。大丈夫よ。貴方が、自分ができる精一杯のことをすれば店に客は足をはこんでくれるわ」
「そういうもんなのか?」
「そういうものよ。雲雀が良い例だわ。雲雀の団子屋だって最初は知名度もない店だった。でも、彼女は彼女にできる精一杯のことをやったから、幻想郷にあるいくつもの団子屋とトップを争う店になったのよ」
「へぇ・・・・・・そうだったんだな」
それなら、自分もできるかもしれない。
「まぁ、無理にとは言わないわ。別に博麗の巫女のように、住民の依頼を請け負う何でも屋でもいいんじゃない?幻想郷では、ささいな異変が至るところであるのだから」
「何でも屋・・・・・・か・・・・・・」
「運が良ければ貴方の欲しい情報だって貰えるかもしれないんだから」
「欲しい情報・・・・・・」
確かに今、幻想郷を守ってほしいなんて言われているが、「何」から守ればいいのかがわかっていない状態である。
(今は情報を確実に集めたい・・・・・・)
「検討しとくよ。ついでにツモ。清一色 タンヤオ 倍直」
「なっ・・・・・・」
「今日はここら辺で寝させてもらう。さすがに、ふわぁ~眠たい」
「リコについても考えておきなさい」
「わかってる」
自分は女に背を向け、寝室へと向かった。
「こんな調子で大丈夫かしら・・・・・・」
雀卓の牌を片付ける女。そこに雲雀が現れた。
「お帰り、雲雀。で、どうだったの?」
「はい、いまだに中立を保っています」
「もう一人は?」
「・・・・・・申し訳ありません、情報が掴めませんでした」
「さすが、としか言いようがないわね」
「何と詫びればいいのか・・・・・・」
「いいのよ。あいつはしっぽを見せるような愚かな行動は取らないから、掴めなくて当然よ」
「しかし・・・・・・」
「今日はもういいわ、貴方も疲れているでしょう?貴方も早く寝て、疲れを癒しなさい。明日から、働き手が減っちゃうんだから」
「そうでしたね・・・・・・わかりました」
雲雀は立ち上がり、部屋を出た。
「必ず見つけだして出すわよ。貴方にも加わってもらわないといけないんだから」
寝床に戻る。といっても、治療を受けた部屋だ。中には明日で退院できる、自分とリコ、そしてまだ治療が必要な城ヶ崎家の三名がいる。
「今、戻った」
部屋の障子を開けながらそういうと、一つの影が、自分の元に近づいて来る。
「おかえりなさい」
その小さな影はリコ出会った。
「ただいま」
リコに返事をし、優しく頭を撫でる。リコは頭を撫でられると気持ち良さそうな顔をしていた。
「おかえり、兄者」
「ただいま、光輝。怪我の方はどうだ?」
「それなら心配ない。あの医者おかげで、軽い戦闘ぐらいが出来るほどには回復した」
「それはよかった」
「それは兄者の方ではないのか?兄者とリコは明日で退院だろう。めでたいことではないか」
「めでたいっていうか、自分の受けた傷が少なかったってのもあるがな」
「少なかった?」
智美が自分の発言に疑問をもったのか、話に入ってくる。
「あんたの傷はあたしたちよりもひどかったはずだ」
「そうなのか?」
「あぁ、確かに兄者の傷は俺の傷よりも酷いものだった」
「へぇ・・・・・・じゃあ自分の回復力は異常ってことだな」
「そんなんで済ませていいのか・・・・・・?」
呆れた顔でこちらを見てくる智美。
「いいさ、きっと。それより、あんたらの親父さん、大丈夫なのか」
「それなら、心配いらんよ、若人よ」
奥の方から、低く凛々しい声が聞こえて来る。
「怪我は何ともない」
「それならよかった」
「・・・・・・お前が、光、いや今は光輝であったか。光輝の兄か」
「まぁ、今はそうだ。やはりまずかったか?」
「本来なら、組を裏切ることは万死に値する。しかし、今回は違う。その者に聞くところによると儂の息子、光は死んだ。光輝とやらはもう儂の組の者ではない」
「親父・・・・・・」
「それに、今回の件を受けて、この組を解散しようと思っちょる」
「!!何言ってんだい。組がなくなっちまったら、同胞たちはどうすんのさ!?」
「ここは儂らの島ではない。戦って負けた以上ここで好きにはできんのだ」
「親父・・・・・・」
「そこでだ、その荒くれた光輝を従えた小僧よ。あんたを見込んで一つ頼みたいことがある」
「頼みたいこと?」
「儂の息子たちを貰ってくれんか?」
「・・・・・・はぁ・・・・・・?」
虎之助の言葉に頭の回転が一時停止する。
「ちょっと待て・・・・・・今なんて・・・・・・」
「何度も言わせるな小僧。息子たちを貰ってほしい」
「・・・・・・」
「いやいやいや、無理だ」
「何故だ?」
「あんたが言っていることにはいくつかの問題点がある」
「ほぅ、それは何だ?」
「一つ、そんな大人数を養える場所がない。二つ、そんな大人数を養う金が自分にはない。三つ、急に上にたっても、まとめ上げれる自信がない。四つ、そんなに大人数を養う金がない」
「兄者、お金のこと二回言っているぞ」
「悪かったな!!」
「ふむ・・・・・・それもそうだな。よし、わかった。小僧、貴様に時間を与える。その間に考えておくがいい」
「・・・・・・」
あまりにも急に事が進んだために言葉も出てこない。
「でも・・・・・・」
「兄者」
光輝は肩に手を置くと、首を横に振った。
(言っても無駄だ、兄者・・・・・・)
そういっているように聞こえた。
(確かにこの男、言ったことを曲げなさそうだが・・・・・・)
無理難題というものである。しかし、この男の前で断れば何されるかわかったもんじゃない。仮にも、相手はやくざの組長。下手すれば二度と地面の上を歩くことが叶わなくなるのだ。
(答えは、はい一択ってことかよ・・・・・・)
そうだとしても、迂闊に「はい」とは言えない。
「考えとくよ・・・・・・」
「うむ、よい返事を期待しておこう」
虎之助は笑みを浮かべていた。
(はぁ・・・・・・悩み事が・・・・・・うぅ・・・・・・)
腹が嫌な音を立てる。
(・・・・・・胃が痛い・・・・・・)
涙も出てきそうだった。
(寝て、嫌なことを忘れよう・・・・・・)
ベッドに潜り、静かに目を閉じる。その後、段々と意識は闇の中に溶けて行った。
「言っても聞かないのね。あなたたちには何の利益もないというのに」
小柄の女性がため息をつく。しかし、その顔には笑みが浮かんでいた。
「でも、安心したわ。あなたたちがいるだけでさっきまで心を蝕んでた恐怖が嘘みたいに消えたわ」
それを聞いた七人は思わず笑う。ホールの中には笑い声だけが響いていた。
「さて、雑談も終わりにして・・・・・・今回の狙いは私とあの子達。それは皆分かってるわね」
女性の言葉に人が頷く。
「生き延びるには館ごと何処か遠くへ転移させる必要がある」
その言葉を聞いたメイド服を着た赤髪の女性はひどく驚いたせいなのか、女性に聞き返した。
「この地をお離れになるのですか?さすがにそこまでしなくてもいいのでは・・・・・・」
それに丁寧に答える女性。
「いや、残念だけどそこまでしない駄目よ。仮にここで・・全員を倒したとしても、その意思を継ぐものたちが私たちに戦いを仕掛けてくる。それに、今、人間がどのようなことをしているかわかっている?」
「それは・・・・・・」
女は口ごもってしまう。空気は一気に気まずくなった。
「しかし、館ごととなると時間がかかるんじゃないか?」
それを打破したのは、先程の赤髪のメイドとは異なる、青髪のメイドだった。
「えぇ、時間にして六時間程度必要とするわ」
「それなら今からでも・・・・・・」
「いえ、それは無理ね。流石に大量に魔力を使う詠唱を長時間行うのは普通では出来ない」
「それでは、万策尽きたのでは・・・・・・」
不安そうな顔を浮かべ、女性の方を見る赤髪のメイド。それを見た、女性は呆れた顔をする。
「何を言っているの、メイド長」
その言葉を聞いた赤髪のメイドは思わず聞き返してしまう。
「しかし、長時間の詠唱は出来ないと・・・・・・」
「普通ならね」
「?」
メイド長と呼ばれたメイドには理解が出来なかった。首をかしげて、女性が言ったことの意味を考えていた。
「そうか、今夜は・・・・・・!!」
それに気づいたのは金髪のメイドだった。それを聞いた二人のメイドは思わず驚きの声をあげていた。
「そう言うこと、嫌っていた日がが今となっては役立つとは思いもしなかったわ」
「では、今夜から?」
「えぇ、今宵、月が最も高い位置に来たときと作戦の開始とするわ、いいわね」
七人は再び頷いた。
「じゃあ、今から三時間ばっかしだけど、ゆっくり休息を取りなさい、では、解散とするわ」
小柄の女性がそう言うと八人はそれぞれ自分の部屋へと戻っていった。
目の前には見覚えのある天井が広がっている。
(・・・・・・夢・・・・・・)
しかし、前に見た人達とは違うようだった。顔には靄のようなものがかかっていたものの、出てきた女性の姿はまるっきり異なる。それに前みたいにうなされるようなひどい夢ではなかったし、決戦の前ではあったものの、全員が楽しそうだった。
(・・・・・・どこのだれかに似てたんだよな・・・・・・)
小柄な女性と言ったら思い当たる節は・・・・・・
(レミリア・・・・・・か?)
そう言えば、さっきメイド長とかなんとか言ってた気がする。
(だが・・・・・・羽なんてなかったしな・・・・・・)
でも、西洋の妖怪に間違いないだろう。
「・・・・・・まぁ、別にいいか・・・・・・」
「やっと、お目覚め?ほんと貴方は寝坊助さんなのね。もう、昼よ」
その声に反応して、横からあの女性が顔を出す。
「もう、あなたの治療は終わってるのだから、急いでベッドを開けなさい。次の患者の受け入れの準備をしなきゃいけないんだから」
彼女の片手には包帯が握られていた。
「それにあなたを待ってる人があるみたいよ」
「自分を・・・・・・?誰が・・・・・・?」
「それは自分の眼で確かめなさい」
彼女はそう言うと作業に戻った。
「・・・・・・」
どうやら、答えてくれそうではなさそうだ。
「行くか・・・・・・」
まだ少し気だるい体をベッドから起こし、部屋を出る。
「色々とありがとう、・・・・・・えっと、そう言えばあんた名前は?」
「言ってなかったかしら?」
「聞いてないな」
「・・・・・・そんなこと聞いてる前に早くし言ったらどう?数時間待っているようだけど」
「そうなのか!!」
数時間となるとかなり待たせている。待っている方も相当ご立腹のことだろう。
「ありがとう!!」
自分はそういい残して部屋を飛び出す。
「どういたしまして」
部屋をでていったときそんな声が聞こえた気がした。
(・・・・・・結局名前聞けなかったな・・・・・・)
なんだかんだで聞きそびれてしまった。しかし、彼女に対しての警戒心は依然としてない。
(やはり、自分は彼女と以前あったことがあるのか・・・・・・?)
首をかしげながら廊下を歩いていると、いつの間にか玄関についていた。そこには見覚えのある影が二つある。
「雲雀とリコ?」
「あっ・・・・・・」
「やっと来ましたね。何時間待ったと思っているのですか?」
「すまんな。夢を見てたもんで・・・・・・」
「私が仕事の時間を割いてまで作った時間は呑気に夢を見ていた輩の為に作ったわけではないんですが」
雲雀はご立腹の様だ。声質からして、分かる。
「・・・・・・すまん・・・・・・」
「・・・・・・いいですから早くしてください」
呆れた声でそういうと、勢い良く玄関の戸を開け放った。
パシッ!!
屋敷中に大きな音が響き渡る。
「うおっ・・・・・・」
驚いて、思わず声が漏れる。それはリコも同じだった。
「さぁ、行きますよ」
雲雀は自分達を置いて霧の満ちた森の中を進んでいく。そんな雲雀を見て、思わずリコの方を向いた。リコもこちらを向いており目が合う。
「ふ、ははははっ!!」
つい、可笑しくなって笑う二人。
「いくか」
「うんっ」
その合図で、二人は雲雀を追い掛けはじめた。




