第四話 人里へ
「そう言えば、弾幕ごっこって何なんだ?」
魔理沙に聞いてみた。
「弾幕ごっこってのは、その名の通り弾幕で戦う遊びなんだぜ」
「いや、そう言われても分からないんだが・・・・・・」
「まぁ、弾幕ごっこを詳しく言うなら、霊夢の定めた「スペルカードルール」に則った勝負の事なんだぜ」
「スペルカードルール?」
また、魔理沙の口からから聞いたことがない言葉が出てきた。つい、聞き返してしまう。
「私もあまり気にしたことがないし、細かいところまでは知らないから、それは定めた本人に聞いてくれ」
「あぁ、分かった・・・・・・」
「まぁ、弾幕の強化版がスペルカードって考えればいいんだぜ」
「ふ~ん」
(つまり、弾幕ってやつより強い技がスペルカードって事なんだな・・・・・・)
「で、その弾幕ってのは自分にも使えるのか?」
「ん・・・・・・そこまではわからないのだぜ・・・・・・」
「そうか・・・・・」
少し残念だ。
(その弾幕っていうのが出せるようになれば少しは今後、戦闘が楽になるんじゃないかと思ったんだが・・・・・・分からないと言っていることを聞くのはやめよう・・・・・・)
「じゃあ、魔理沙はどうやって弾幕やスペルカードを出しているんだ?」
質問を変えてみた。さすがにどのように出しているかぐらいは知っているだろう。
「私は基本的に魔力とかを変換して弾幕や、スペルカードにしているが・・・・・・弾幕を出す上で一番大切なことはイメージだと思うぜ」
「イメージ?」
返ってきた答えが意外なものだったため、意味が理解できなかった。
「そう、こんな弾幕を出したいってイメージの事だぜ」
(弾幕を出したいっていうイメージ・・・・・・?そもそも弾幕っていうものを見た事がないから、どんなものをイメージすれば良いのか分からないんだが・・・・・・)
「イメージって言われても、そもそも弾幕がどんなものかを見た事がないんだが・・・・・・」
「じゃあ、博霊神社に着いたら弾幕を見せてやるよ。まぁ一番早いのは勝負することなんだが」
「そうなのか?」
「実際に戦ってみたら弾幕の出し方や出し方のコツを掴めると思うぜ」
「そんなものなのか?」
「そんなもんだ」
(おいおい、そんなんでいいのかよ・・・・・・)
そんな感じで魔理沙と雑談しながら歩き続けていると、いつの間にやら周りは賑やかな場所になっていた。木造の建物がずらりと並んでおり、子供から老人まで、たくさんの人が道を歩いていた。
「ここは・・・・・・?」
「ここは人里。人を始めとするたくさんの種族が暮らしている場所だぜ」
言われてみればそうだ。あちらこちらに人ではない者達がいる。本能が危険だと信号を出していた。
「おい、大丈夫なのか⁉あんな妖怪の近くにいたら殺されるんじゃないか⁉」
しかし、魔理沙は自分みたいに動揺していなかった。
「何いってんだレイ?」
魔理沙はまるでそれが当たり前かのように問いかけてくる。
「魔理沙だって人間だろう⁉妖怪となんか暮らしていたら殺されるぞ‼」
「・・・・・・ああ、そういえばレイは知らないんだったな」
魔理沙は何かを思い出したような素振りを見せる。
「いいか、レイ。それは昔の人里だぜ。今は霊夢のおかげで、妖怪が人里の人達を危険にさらすことがなくなったから、人里の人達は安心して楽しく妖怪達と暮らしているのさ」
「そうなのか?」
「ああ」
「・・・・・・」
あの本に書かれていたことを思い出す。
(人と妖怪を始めとする数多くの種族が共存しているって本当の事なんだな・・・・・・)
妖怪や妖精などの普通は人と暮らすはずのない者達が今、目の前で共存している。それは自分にとってもありえない光景だった。それを受け入れるのには少し時間がかかるだろう。自分の常識をひっくり返されたのだから。
(今の博霊の巫女「霊夢」ってやつはすごいな・・・・・・)
心から感心してしまった。人が他の種族との共存が出来るなんて思ってもいなかった。
(こんなに幻想郷を平和に出来るなら自分はいらないんじゃ・・・・・・)
幻想郷を平和に出来る女に、強くもない自分は何が出来るのだろうか。
(・・・・・・足でまといになるだけだよな・・・・・・)
「レイ、ぼさっとしてたらおいていくぜ」
気づけば魔理沙は先の方にいた。
「すぐ行く」
そう返事をし、魔理沙の元まで走る。そんなに遠くまで行ってなかったからすぐに追いつけた。
そのまましばらく歩き続けると、前から少女達が歩いてきた。みんな胸ぐらいの背丈だ。みんな仲よさそうに会話をしている。
「あっ・・・・・・」
緑髪の妖精がこちらに気づいたらしい。緑の妖精は立ち止まると、魔理沙に挨拶をした。
「魔理沙さん、こんにちは」
それでほかの妖精達も自分と魔理沙がいることに気づいた。彼女たちは魔理沙に挨拶をする。しかし、青髪の妖精だけはこちらの方を見て
「お前、誰だ?」
と、聞いてきた。
(なんだこいつ・・・・・・)
印象の悪い奴だった。
(ん・・・・・・?)
彼女の背中に何かがある。
(羽・・・・・・?)
背中に何がついているのかは分からなかったが、多分、この子は人間じゃない、その証拠に、背中には羽らしきものが付いている。
「チルノちゃん、初対面の人に名前を聞くときは、まずは自分が名乗らなきゃ」
緑髪の妖精が青髪の妖精に軽く注意をする。
「そうなのか?」
この水色の髪の子は緑髪の子に聞き返す。
「そうだよ。それが常識ってやつだよ」
緑髪の子は呆れた声で言う。
(・・・・・・この水色の髪のこいつは馬鹿なのか・・・・・・)
言動や行動を見ていたら、そう見えてきた。
「じゃあ、アタイから。アタイはチルノ。幻想郷一天才で最強なんだぞ」
チルノに続いて他の少女達も自己紹介をし始めた。
「私は大妖精って言います。」
「僕はリグル」
「ミスティアって言います。屋台の店主をしています。それでこっちが・・・・・・」
「ルーミアなのだ~~~」
(えぇっと、水色の髪のこいつがチルノで、緑髪の少女が大妖精、茶色い服を着ている子がミスティアで、男の子っぽいのがリグル、そして金髪の子がルーミア、か・・・・・・よし、覚えたぞ)
「自分はレイ。よろしく、チルノ、大妖精、ミスティア、リグル、ルーミア」
「こちらこそ、よろしくお願いします、レイさん」
大妖精が全員を代表して一礼をする。
「そんなにかしこまらなくていいぞ、大妖精。自分は堅苦しくされるのが嫌いだからな」
「そうなんですか?」
「ああ」
「分かりました」
多分、大妖精もそうだ。チルノと同様に羽らしきものをもっている。
(この子も人じゃないのか・・・・・・)
他の子も見てみる。
(人は・・・・・・いないか・・・・・・・いや、この子は・・・・・・)
四人は人じゃないとすぐに分かった。しかし、一人だけわからなかった。金髪の子だ。見た感じは可愛らしい女の子。
(だが、考えてもみろ・・・・・・妖怪にだって人と似ている者だっているはずだ。この子が人間とは言い切れない・・・・・・)
気になって仕方なかった。
(よし、思い切って聞いてみるか)
「なぁ、皆・・・・・・こんなこと聞いて悪いんだが・・・・・・皆は、人じゃ・・・・・・ないよな?」
その質問に答えてくれたのはやはり、大妖精だった。
「はい、私とチルノちゃんは妖精で、みすちーとリグル、ルーミアの三人が妖怪です」
大妖精が丁寧に説明してくれる。
「そんなことより、お前強いのか?」
チルノが聞いてくる。
「いや、弱い。君たちと戦ってもやられちまうかもな。そっちこそ、本当に最強なのか?」
「もちろん。アタイが幻想郷で最強さ」
チルノは少し威張る。本当だろうか。他の妖精達を見ると全員苦笑いしている。どうやら嘘のようだ。
「レイ、チルノは最強じゃないぜ」
魔理沙の一言でそれは確信に変わる。
「そんなことない!アタイは最強なんだぞ!」
「はいはい、そんなこと耳にタコができるほど聞いたんだぜ」
魔理沙はチルノの言葉を適当に聞き流す。
「キィ――――――!!!!」
チルノは顔を真っ赤にして、地団駄踏んだ。
「魔理沙‼あんたに弾幕勝負を申し込む‼」
「別に構わないぜ。お前なんて、手加減しても倒せるんだ」
魔理沙とチルノの間に火花が散る。
(バチバチ状態じゃないか・・・・・・)
「待ってください‼」
大妖精が二人の間を割って入り、戦いが始まるのを止めた。
「チルノちゃん、そこまでにしとかないと遊べなくなるよ」
他の妖精達は困っていた。そのことを察したのか、
「魔理沙‼次、アタイがあんたに会った時には、アタイが最強だってこと思い知らせてやる‼」
と、言って妖精達と自分達がやってきた方向に消えて行ってしまった。
「いつでもその勝負受けてやるぜ‼」
チルノに聞こえるような大きな声で魔理沙は答えた。
(・・・・・・あの後ろ姿・・・・・・誰かに・・・・・・)
妖精達の後ろ姿を見てそう思った。その時、
「うっ・・・・・・」
(なんだ・・・・・・この・・・・・・痛み・・・・・・)
頭に物凄い痛みが走る。思わず頭を手で押さえてしまった。
(頭が・・・・・・・かちわれるように・・・・・・痛い・・・・・・)
これまでに経験したことのない痛みだ。
「大丈夫か、レイ⁉」
自分の行動の異変に気付いた魔理沙が声をかけてくれる。その後、痛みは一瞬でおさまった。
「・・・・・・あぁ・・・・・・」
(・・・・・・なんだったんだ・・・・・・)
「心配かけてすまない。もう大丈夫だ」
「それなら良かった・・・・・・寿命が少し縮んだぜ・・・・・・」
「すまなかった。そんなことより、自分達も早く博霊神社に行こう。案内は頼んだぞ」
「あぁ、言われなくても分かっているんだぜ」
自分達は人里を速足で抜けていった。




